まだ増える登場人物
最後に講堂に到着して、後ろの方の席に座る。
教師二人は教師用の席へ。
ここは従者も主の一つ後ろに座るようになっていて、特に席を分けてはいないので、シェルも助もアールスハインの隣に座る。
とても広い講堂。
一つ一つの席が無駄に豪華、ラグジュアリーが売りの映画館に知らずに入ってしまった時の、場違い感を思い出した。
ふと見ると、前方の席で立ち上がり、キョロキョロと何かを探しているのは、二股女。
嫌な予感しかしない。
案の定、こちらを見た二股女は、パァと表情を明るくして、大きく手を振りながら、こっちに向かって来ようとして、カラーンと鳴った鐘の音と共に、講堂内の全員が立ち上がった事で阻止された。
前方のステージに、学園長が現れると、一斉に貴族の礼を取る。
女子生徒はカーテシー?カテーシー?とか言う変形スクワットみたいで、とても足腰にきそう!男子学生は、片手を胸に当てて、片足を下げ、軽く会釈。
キャベンディッシュとアールスハインは王族なので、胸に手を当てるだけで、頭は下げない。
俺は?アールスハインに抱っこされたままなので、軽く胸に手を当てるだけで良いそうです。楽チン!
そんな中で、一人ボケーと立ち尽くす二股女、お城の教育でマナーだって最低限習っただろうに、全く活かされていない。
前世のマナーとしても、頭くらい下げるだろ!と言いたい。
何が二股女を、あんなにも傲慢にしているのかが理解出来ない。
クソバカダ女神は、ちゃんと説明して無いのだろうか?
乙女ゲームに限らず、物語のヒロインなら、もっと謙虚で礼儀正しく、努力家である方が、皆に好かれるヒロインとして、相応しいと思うのは俺だけか?
俺ならあんな、男癖が悪く、傲慢で自意識過剰な女がヒロインの話など、全く読む気も失せるが、最近の若者はってヤツだろうか?流行りか?クソバカダ女神の趣味が悪いのか?
何が正解かは分からないが、考え込んでいるうちに、いつの間にか皆座って、学園長の話も終わる所だった。
ディーグリーがうつらうつらしているので、それなりに長い話だったのだろう。
なぜか複数の人にチラチラ見られているのが不思議で、アールスハインを見ると、学園長の話の中に、俺と二股女の話もあったとか、全然聞いて無かったな!って、頭をグリグリ撫でられた。
学園長の話が終わり、壇上から学園長が降りるのと入れ替わりに、一人のイケメンが登壇して、
「今年度生徒会長に選ばれた、エチェット・ハウアーだ、俺に迷惑をかけたヤツは、消し炭にされる事を覚悟しとくように!」
「「「「キャーッ!ハウアー様ー!」」」」」
ってうるさっ!耳がキーンとなる令嬢達の叫び声!なんなのさ、生徒会長ってアイドルなの?歌って踊るの?
耳を押さえてクラクラしていると、隣のユーグラムが心配そうに覗き込んで、何かを言っているが、未だ続く令嬢達の叫びに、何を言っているのか全く分からない、が、それで集会は終わりらしく、俺を抱っこしたアールスハインが、素早く席を立ち、足早に講堂を後にした。
当然のように隣には、シェルと助、ユーグラムがついてくる。
居眠りしていたディーグリーが、慌てて後から追ってくる。
アールスハインの肩越しに、何気無く講堂を振り向けば、人波を押し退けてこっちに向かおうとする二股女。
女子の波に押されて、中々来られないようだ。
アールスハインの素早い行動は、この為だったのねと納得した。
教室に戻って参りました。
なっがい足の早歩きって結構なスピードが出るのね!
決まっていると思ってた席順は、別に決まってた訳じゃ無いらしく、アールスハインが席につくと、隣の席にユーグラムが、前の席にディーグリーが荷物を持って移動してきた。
シェルがこそっと教えてくれたんだけど、アールスハインみたいな王族や、高位の貴族が先に席を決めないと、他の生徒が席を決められなくて困ってしまうので、アールスハインは、初日は早目にきて、さっさと席についてしまうらしい。
しかも、王族や高位貴族の近くに座るのは、畏れ多いって、最後まで決まらずに、空いていることが多いので、ユーグラムは別として、ディーグリーがアールスハインの前に座るのは、歓迎されるんだって。
実に面倒くさいね!
次に教室に入ってきたのは女の子。
それはもう見事としか言いようの無いドリルを搭載した、ザ・お嬢様。
濃い紫の髪にパッチリした黒のつり目、紺色の上半身はタイトで下半身はヒラッヒラに広がった足首までのワンピースに、白を基調に紺色の縁取りの丈の短いジャケットと言う、ポッチャリさんの敵!みたいな女子の制服を完璧に着こなしたザ・お嬢様。
歩く度にワッサワッサと揺れる豪勢なボリュームのあるドリル。
どこから見ても完璧なザ・お嬢様。
実際にこの目にすると、あまりの迫力に声も出ない。
ポッカーンと口を開けて、見入っていると、ザ・お嬢様はツカツカと近寄って来て、一ミリも揺らぐ事の無い完璧なカーテシーをして、
「ごきげんようアールスハイン殿下、父から聞きました。長年の呪いの解呪の成功、心よりお喜び申し上げます。」
「ああ、ごきげんようイライザ嬢、ありがとう、今後は魔法の修練に励むよ」
「何かわたくしでお役に立てる事があれば、気軽にお声掛け下さい、微力ながら精一杯努めさせて頂きますわ。」
「ありがとう、その時はお願いするよ」
「はい、それでは…………あの、アールスハイン殿下、先程学園長先生のお話に出てきた突然変異の妖精様とは、そちらのお子さんですか?」
一旦はアールスハインから離れようとしたが、あまりにもガン見する俺が気になったのか、アールスハインに確認してきた、なので、
「けーたでつ、よーしぇーじょくでつ」
アールスハインよりも先に自己紹介してみた。
「ご丁寧にありがとうございます、私は、宰相を勤めさせて頂いておりますリングラード・スライミヤの第二子、イライザ・スライミヤと申します。ケータ様、よろしくお願いいたしますね 」
「よーしきゅおねがーしましゅ、かっこいーかみでしゅにぇ(よろしくお願いします、格好いい髪型ですね)」
「まぁ、お褒め頂いてありがとうございます。ケータ様もとてもお可愛らしいですわね」
ニコニコと見つめ合う俺とイライザ嬢。
この子は、見た目はちょっと意地悪そうに見えるけど、中身はとても良い子のように思える。
宰相おじさんが、抱っこに慣れてた理由も判明した。
「それではアールスハイン殿下、失礼致します」
「ああ」
もう一回完璧なカーテシーをして、離れて行くイライザ嬢。
「アールスハイン王子って、スライミヤ嬢とお知り合いなんですね?」
ディーグリーの質問に、
「ああ、幼い頃は宰相に付いてよく城へ来ていたから、遊び相手になったりしてたな」
「幼馴染みと言うヤツですか?あ!もしかして、アールスハイン王子かキャベンディッシュ王子の婚約者候補だったりして?」
「こら、ディーグリー貴方深入りし過ぎですよ!」
「いや、構わないさ、まぁそんな話も無かった訳じゃ無いが、俺は別の事で忙しく、キャベンディッシュ兄上は母上が反対派の貴族出身だったからな」
「あークシュリア王妃様ですもんねー」
「まぁそう言う事だ」
「あれ?でもさっきスライミヤ嬢が、アールスハイン王子の呪いが解けたって言ってませんでした?」
「そう、言ってましたね、本当に呪いに掛かっていたのですか?」
「ああ、だが呪いは無事解けた。2週間程前にな」
「それはおめでとうございます!」
「おめでとうございます!凄いですね、長年の呪いを解くなんて、どうやったんですか?」
「二人ともありがとう、だが、悪いが解呪の方法は、今はまだ機密扱いなんだ。特殊な魔道具を使用した形跡があって、その魔道具の解析が済まないと、解呪の方法も公表出来ない事になっている」
アールスハインが苦笑しながら、俺の頭を撫でて来る。
何だか秘密がいっぱいね!
ま、説明しろって言われても、生えてたウニョウニョ引っこ抜いただけだけどね!
そこで一旦話が終わり、教室を見てみると、全員の席が決まり、それぞれの席について落ち着いた所だった。
「それでは我々はこれで」
そう言って、助とシェルが席を離れた。
「どっきゃいくにょ?」
と聞くと、
「シェルは従者科、俺は騎士科だからな」
と教えられた。
主の準備が調うまでは側に居て、その後各々の科に行くんだって。
助は護衛として側に居たんだって。
ん?だがおかしい、キャベンディッシュには本物の騎士が複数付いてたような?と聞けば、アールスハインは自身が強いので、複数は必要無いし、学園には本物の騎士は置けないので、キャベンディッシュには、騎士科の別の取り巻きがいるんだって、そんなに強くはないらしいけど!って事で、バイバーイと手を振る。
ガラリ
教師二人が入って来る。
「お、このクラスはもう席が決まったのか、面倒くさく無くて良いな!」
「他のクラスはまだまだ揉めそうでしたからね」
「毎年面倒くさいヤツが一人二人いるからな、Sクラスは、割りと早目に決まるとは言え、面倒くさい事に変わりはない。学園側で勝手に決めちまえば、楽でいいのによ!」
「それで上手く行かなかったから、毎年揉めてるんでしょう」
「はぁ、まぁそうなんだが。ま、いいや、このクラスはもう決まったんだし!じゃ、この後の予定を話すぞ。まずは、
この前期は、ほぼ剣術大会、魔法大会のためにあると言っていい。そのための訓練として実戦演習が授業の大半を占める。学期末に筆記試験もあるが、それまではひたすら実戦演習に充てられる。
そのため男子は3人一組、女子は5人一組で班分けを行い、その班ごとに、毎回演習場所を変えて訓練に取り組む事になる。わかったら早速班を決めろー、自分の実力と適性を考えて、バランスを取れよー、今決めた班が前期最後まで通して同じ班だからなー、途中で班を変わりたいって言ったヤツは、容赦なく成績下げるからなー」
インテリヤクザな担任教師のやる気は感じられないが、容赦無い言葉に、皆積極的に動けない。
「あー、アールスハイン王子、一緒に組んでくれません?」
「ディーグリー、俺で良いのか?俺は、魔法を使えるようになってまだ日が浅い、実戦では使えないぞ?」
「いやいやいや!アールスハイン王子は、魔法は使えなくても、剣術じゃこの学園で5本の指に入る実力者ですから!その剣術に期待してますんで!一緒に組んでくれませんか?今ならそこそこ使えるユーグラムも付いてきますよ!」
「何ですか、そのおまけみたいな言い方は、なぜ私が貴方のおまけなのです、貴方が私のおまけでしょう、実力的に言って!」
「えー?でもユーグラムって、外の演習では今一頼りにならないってゆうかー、虫系の魔物全般ダメじゃん!」
「そ、それは、そうかも知れませんが」
「まあ、まあ、二人ともそれ位で、二人が俺で良いなら組ませてもらうよ、よろしく!」
「そうこなくちゃ!よろしくお願いしまーす!」
「こちらこそ宜しくお願いいたします」
速攻で3人組になった。
インテリヤクザな担任に報告に行くと。
インテリヤクザな担任は、ニヤリと悪い顔で笑って、登録用紙に記入しろって用紙を渡してきた。




