シリアスぶってみたりして
ぬるっと再開。
来月2巻出ます!
宣伝も大切ですが、そればかりも寂しいので、更新再開します。
少しでも長く更新し続けたいので、週一くらいのペースで、よろしくお願いします!
干からびた大地が延々と続く、道無き道を進む。
背負っている弟の体が日に日に軽くなっている気がするのは気のせいだと思いたい。
カラカラの大地を踏む度に、グズッと足が沈む様に崩れる。
乾いて干からびた大地は、子供とはいえ二人分の重さも支えられず砂と化す。
最後にまともな飯を食ったのは随分と昔。
まだ両親もいて祖父母もいて、他にも兄弟がいた時代。
毎日腹一杯食べて、暖かい寝床で寝て、弾ける様に皆が笑ってた。
あれは俺の夢だったんじゃないかと時々思う。
その時代を弟は幼すぎて覚えていないようだし。
何があったわけでもなく、ある日俺達家族はバラバラにされて奴隷として売られた。
父さんも母さんも爺ちゃんも婆ちゃんも、兄ちゃんも姉ちゃん達も、バラバラにされて、俺と弟だけは同じ所に売られた。
何が起きたのかも分からず、狭い部屋に沢山の子供が押し込められて、カビたパンとゴミの浮いた水を争うように食べて生き残ってきた。
弱い子供からどんどん倒れていき、病気の子供も放置され静かに死んでいくのも何人も見た。
夜になると酔っ払った大人が子供を連れ出して朝になるとボロボロの子供をまた牢に放り込んで。
俺と弟も何度か連れ出されて憂さ晴らしのように一晩中殴られたり蹴られたり物をぶつけられたり。そのせいで弟は右足が動かなくなったり。
にやけた大人に買われていく子供を見送り、牢屋の隅で弟を抱えて縮こまる日々。
ある日一人の子供が倒れ、身体中に赤いブツブツが出来たのを見て、大人が流行り病だと叫んだ。
そして同じ檻に入れられていた子供全員が砂漠に捨てられた。
何とか助かりたくて弟を背負って馬車を追いかけたけど、全然間に合わなくて途中で転んで意識を失った。
起きてみたら自分の居場所を見失っていた。
砂漠のど真ん中で弟と二人。
一緒に檻に入っていた子供達の姿も見えない。
あれから何日くらい歩き続けているだろう?
途中にあった泥水を啜っただけで、他には何も口にしていない。
意識も朦朧としてきた。
「にぃちゃ、おれ、おいていって、いいよ」
掠れてガサガサの声が背中から聞こえた。
生きている弟の声が聞こえただけで不思議と力が入る。
「兄ちゃんが、助けてやるからな!絶対に助けてやる!」
弟に負けないくらいガサガサで掠れた声で、弟にだけでなく自分にも言い聞かせる。
俺達はこんな所で死なない!負けない!俺達は何も悪い事なんかしてないんだから、きっと助かる!
そう自分に言い聞かせてまた一歩踏み出す。
歩いてさえいれば何時かは人のいる場所に辿り着く。
それまでは絶対に弟を離したりしない!
太陽が砂を焼いて上からも下からもジリジリと焼けるようだ。
もう既に汗さえ出てこない。
前に踏み出してる筈の足が、地面を踏む感覚が無い。
まだ、もう一歩、後少し、そう自分に言い聞かせてもなかなか踏み出す足が動かない。
弟の息遣いも聞こえない。
ああ、どうしよう、助けたいのに助けられないなんて、俺は兄ちゃんなのに!
やっとの事で一歩踏み出した足が、崩れた砂に埋もれてバランスを崩す。
疲れた、もう一歩も動けない。
少しだけ休もう。
体の向きを変えて弟を抱え込む。
大丈夫、まだ息をしている。
大丈夫、まだ生きてる。
少しだけ、少しだけ休んだら、また立ち上がって歩くから、少しだけ、休ませて……………。
フワフワとした意識の中、口に入ってくる甘い汁を飲み込む。
身体中に染み込むように、何度も口に入ってくる汁を、もっともっとと口を開けて求める。
目も開かないし、体も動かないけど不思議と不安はなかった。
ただただ口に運ばれてくる甘い汁を飲み込むだけ。
身体中が満たされるように沢山飲んだらウトウトして、起きたらまた甘い汁が運ばれてくるままに飲み込んで。
そんなことを何回繰り返したろう?
身体中を苛んでいた飢えがなくなって、本当に意識が浮上してきたのが分かる。
弟の声まで聞こえる。
「兄ちゃん、兄ちゃん起きて!兄ちゃん!兄ちゃん、死なないでよ!俺を置いていかないで!兄ちゃん!」
「こらこら、兄ちゃんは大丈夫って言ってるだろう?疲れてるんだから、ゆっくり寝かせてやれよ」
「でも兄ちゃん全然起きないじゃん!」
「だけどちゃんとスープは飲んでただろう?食べられてちゃんと息をしてるんだから、その内目を覚ますさ!お前の兄ちゃんは凄い頑張ったんだから、ゆっくり休ませてやれ!な?」
そんな会話が聞こえた。
弟だけでなく、大人の男の声。
それを意識した途端、ガバッと起き上がって弟を抱えた。
「兄ちゃん!」
「うおっ!いきなり起きた!お~いケータ、兄ちゃんが起きたぞ~」
「はいよ~」
弟を抱えて起き上がったのは良いが、身体中が軋むように痛くて声も出せないでいたら、大人の声がまた誰かを呼ぶように声を掛けたので、さらに警戒する。
それにしても何で目が開かないんだ?!砂漠の熱に焼かれて潰れたのか?!目が見えなくちゃ弟を守れないじゃないか!
「おはよ~、ありぇ?目~開かない?お~、目ヤニガビガビね~?」
どこか子供のような声の後に、腰の辺りがギシッとなって、目の辺りに温かい布が押し付けられた!
「は~い、お顔ふきましゅよ~」
ゆっくりと温かい布で顔を拭われる。
特に目の周りをマッサージするように優しく拭われて、布が離れるとやっと目が開けた。
目の前には弟よりなお小さい子供が、布を片手にこちらを覗き込んでいて、
「おはよ~兄ちゃん、よ~寝てたな?」
ふにゃっとした顔で笑いながら話しかけてきた。
「え?あう、」
「兄ちゃん、この人達が俺達を助けてくれたんだよ!美味しいご飯もいっぱい食べさせてくれて、風呂にも入ったんだ!」
抱えてた弟が嬉しそうに報告してきた。
「俺は、俺達は町に着いたのか?」
「ん~ん、町はまだよ~、あとふつきゃくりゃい?」
「二日くらいな!」
弟でも子供でもない声にビクッと体がすくむ。
声のした方を見ると、細目の男がこちらを見ながら俺達が拾われた経緯を説明してくれる。
「お前達二人は、街道から随分と離れた位置で倒れてたんだ。ソラとラニアンが散歩のついでに拾ってきたんだよ」
ソラとラニアンとはまた別の大人だろうか?
「ワフッ」
「ナ~ゴ」
寝かされていたベッドの下から動物の鳴き声が聞こえてきて、そちらを見ると巨大な白い犬と牙の短いサーベルタイガーのようなものが居た。
驚いて後ずさると、
「こっちがラニアンで~、こっちがソラよ~」
「ワフッ」
「ナ~ゴ」
子供が紹介すると応えるように鳴く動物達。
この二匹が俺達を見付けてくれたようだ。
「さて!兄ちゃんも起きたようだし、兄ちゃんも風呂に入ろ~ぜ?」
細目の男が笑いながら言うのだが、どうしても大人相手だと体に力が入ってしまう。
それに気付いた弟が、
「兄ちゃん、大丈夫だよ!この人達は大丈夫!」
「ん~じゃあ、おと~と君もいっしょに風呂入ったりゃ~?」
「うん、分かった!兄ちゃん一緒に入ろう!」
弟が膝から下りて、手を引いてくる。
まだ体がギシギシ痛いが立てないことはなさそうなので、ゆっくりと立ち上がる。
弟に手を引かれて風呂場に着くと、見たこともないくらい綺麗な脱衣場で、こんな綺麗な所に入って良いのかと迷ってしまう。
弟は気にもせずにさっさと服を脱いで入って行ってしまったが。
慌てて服を脱ぎ後を追うと、やはりとても綺麗な風呂場。
弟はさっと湯を浴びると、石鹸を使ってモコモコと大量の泡を作って俺に向けてきた。
「俺は朝に入ったから、兄ちゃん洗ってやるな!」
ニカッと笑う弟の顔を見るのは何時振りだろう?
弟を真似て湯を浴びると、黒く汚れたお湯が流れた。
何度も浴びても黒く汚れたお湯が流れて、待ちきれなくなった弟が泡を俺に被せてきた。
「アハハ~、全然泡立たない!泡も真っ黒!」
楽しそうに汚い俺の頭を洗う弟。
何度も何度も泡立てては黒いお湯を流す。
自分でも体を洗うのだが、こびりついた汚れがなかなか落ちない。
体がヒリヒリする程擦ってやっと元の肌色を取り戻した。
ゆっくりと浴槽に体を浸けると、少ししみたが体の節々が伸びていくような、体の機能を取り戻したような感覚がした。
「兄ちゃん気持ち良いね!」
「ああ、気持ち良いな」
「ご飯もね、すっっっごく美味しいんだよ!」
風呂から上がると脱いだ服の代わりに綺麗な服が置いてあって戸惑う。
こんな綺麗な服を着ても良いのかと躊躇っていると、扉が開いて、子供が顔を出し、
「おおお~、きれ~なったね~!あたりゃしい服置いたから、きがえてね~」
そう言われたので、恐々と袖を通した服は、驚く程着心地が良くて、ひどく懐かしい気がした。
弟に引っ張られるままに付いていくと、部屋中に良い匂いが立ち込めている。
大人の男が二人料理をしていて、あと二人は大きなテーブルの席に座ってる。その足元にはさっき見た動物達と他にも二匹、あと何故かキッチン台に立っている子供が一人。
リトルレッドベアが近寄ってきて、
「ヤヤ!」
弟の手を取って席に連れていく。
つられるように弟と手を繋ぐ俺も席に座るように誘導されて、
「おし、揃ったな!」
細目の男が確認のように声を掛けると、料理していた金髪の男と金茶髪の男が料理を運んできた。
次々に運ばれる料理は、見たこともない料理ばかりだけど、暴力的な匂いに正直な腹の虫がグググ~~と盛大に鳴って腹を押さえて赤面する。
「アハハ~、いっぱい食えよ!」
「たしゅく、作ってねーだりょ」
細目の男が笑いながら取り皿に大量に料理を盛って弟と俺の前に置いてくれる。
「おし!いたらきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
男達だけでなく弟まで同じように手を合わせて叫ぶように言ってからガツガツと料理を食べ始めた。
「いただきます」
恐る恐る真似をして手を合わせてから食べ始める。
皿に盛られた料理は、肉の塊に見えるのに、とろっとスプーンで崩れる程柔らかく、味が染みて、でも優しい味だった。
次に食べたのは白い粒々が沢山入った料理。
それ自体はホカホカと熱く、ほんのりと甘い感じだが、肉を食べた後の口には凄く美味しく感じて、肉と白い粒々を何度も何度も交互に食べる手が止まらなくなった。
そして粒々の隣に置かれたスープは、見た目が茶色で嗅いだことの無い匂いがしていて、でも弟が嬉しそうに飲んでいるからと、飲んでみた。
ジワ~~~ッと体に温かさが広がって、ジワ~~~ッと涙が込み上げてきた。
堪えようとしてもボロボロと止まらなくなって、次から次へとこぼれ落ちていく。
「おしおし、よ~がんばった!えりゃかったぞ~!も~あんしんだかりゃな!」
椅子の上に立った隣の子供に頭を撫でられ、弟に手を握られるともう、余計に涙が溢れて、完全に料理が冷めるまで泣き止む事が出来なかった。
やっとの事で涙が止まり、また食べ始めた料理は、冷めても驚く程美味しかった。
お腹が満たされた途端、抗えない眠気に襲われ、俺は意識を手放した。
いつもいつも誤字報告や感想をいただきありがとうございます!
個別にお返事は出来ませんが、皆様からいただく反響が、書き続ける原動力でもあります。
少しでも楽しんで頂けるように、今後も頑張ります!




