帰国。でもまた出発、はまだだった
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怒涛の誤字報告と怒涛の感想をありがとうございます!
誤字報告4ページって!自分の目を疑ったけど現実だった!
すんません、反省してます。
でもまたよろしくお願いします。
スパーク辺境伯領地から王都まで約二ヶ月。
伯爵令嬢を護衛しての旅なので、国を出た時よりもだいぶゆっくりの旅だったが、無事王都に到着した。
ミルリング国の王都を出た時よりも、確実に、キミッヒ伯爵令嬢とその周辺の人達の体が、見て分かるくらい大きくなってる!端的に言えば横に!
メイドさん達が休憩中も馬車から降りず、必死になって洋服のお直しをしてる!
懐かしのアンネローゼ現象ですな!
特にキミッヒ伯爵令嬢の幅が!
顔だって、出発前はちょっと窶れ気味だったのに、今はプックプクになってる!失恋後の自棄食いも合わさっているのか、宿での食事も物凄い食欲だったからね!それなのに、宿の近所にある菓子店でさらに菓子を爆買いしてて、馬車移動中もメイドさん達と楽しんでた模様。
メイドさん達もプックプクになってるし、移動中は座ってるだけなので運動も出来ない。
そりゃ広がるよね、横に!確実に!
未だにユーグラムを遠目からうっとり眺めるのは変わらないけど、その手には常に菓子が摘ままれてるし、あのちょっと狂気を孕んだようなグルグルした目はしてないので、こちらには全く害は無いんだけど。
キミッヒ伯爵家の皆さんとは学園前のここでお別れ。
書類にサインを貰って別れようとしたら、キミッヒ伯爵令嬢が態々馬車から降りてきて、
「ユーグラム様、わたくし達には身分の差と言う壁があり、国境と言う壁もあります、簡単に越えることは難しいでしょう。ですが!わたくしは何時までもあなた様を想っておりますわ!ですから、もし、もしもチャンスがきましたら、わたくしを迎えに来て下さいましね!わたくし、あなた様を何時まででもお待ち致しておりますわ!」
ヒシッとユーグラムの手を握って訴えるキミッヒ伯爵令嬢。
目がウルウルしてる。
「その様なチャンスはいりませんし、お待ち頂く必要もありません!」
ユーグラムはバッサリと切って捨てて、ガッチリと握られてた手を引っこ抜いて離れた。
素早くキミッヒ伯爵令嬢を回収するメイドさん達。
「それでは!お疲れ様でございました~!」
ディーグリーの晴れやかな声でさっさとその場をあとにする俺達。
後ろから泣き声が聞こえてきたけど振り向きません。
幾つか角を曲がって完全に姿が見えない距離まで離れると、ユーグラムが手を拭きながらはぁぁぁぁ~と大きなため息を吐いた。
とてもお疲れのご様子。
「あははっ、ちょっとギルドに行く前にカフェで休憩する?」
「ええ、お願いします。ちょっと歩くのも億劫なので休ませて下さい」
「うん、お疲れ~」
そして近くのカフェに入りお茶やお菓子を注文して、ぐったりとテーブルに突っ伏すユーグラムを皆して労う。
「ちょっと今回のは強烈だったね~?ミルリングを出る時は、諦める!とか言ってた気がするけど、全く諦められてないし~?」
「女冒険者の中にも強引に迫ってくる奴は居たが、方向性が違ったしな~?あそこまで勘違いと言うか、妄想が激しいのは居なかったよな?何か粘着質だったし?」
「勝手に王子認定されたり~、自分達が結ばれるのに問題は無いって言ってきたり~」
「何でああも自分は好かれて当然と思ってんのかね?」
「平民って分かっても、権力使えば問題ないわ!とか言ってくるし~」
「それ、自分が好かれてる前提じゃね?って思ったわ!」
「まず、ユーグラムの気持ちが貴女には有りませんよ!って何度言っても聞かないしね~?」
「最後の方、段々不気味に思えてきたな?」
「うん、ちょっと怖い感じしたよね~、特に最後の、何時まででもお待ち致しておりますわ!って言葉!」
「俺、鳥肌立ったわ!」
「平民って理解してからは、ちょっと距離開けてたから、諦めたのかと思ったのに、最後にあんなこと言うし~!」
「ああ、もう!思い出させないで下さい!もうあの令嬢の事は思い出したくもないです!」
我がペット達を、まとめて抱っこしてモニモニモニモニしてたユーグラムが、珍しく大声で抗議してた。
「ごめんごめ~ん、俺達もあの令嬢には当てられてちょっと気分が塞がってたからさ~、ここで解消しちゃいたい気持ちだったんだよ~」
「そうそう、最後の最後に不意打ち食らった感じ?」
「まあ、私もその気持ちは分かりますが、あの何ともネットリとした視線が無くなった事で、やっと解放された実感が湧いてきましたしね」
「あれだけ思い込みが激しいと、学園でも何かやらかすかもね~?」
「もう、今後一切関わる気は無いので、どうとでもなされば良いのでは?」
「そんなこと言っても、ユーグラムを追い掛けて教会に通ったりしね~かな?」
「うわ~、ありそう!教皇倪下の顔を見ればユーグラムと血が繋がってるのは丸分かりだからね~」
「先にあんな令嬢が居るってことを、ご両親に話しといた方が良いんじゃねーか?」
「そうそう!勝手に妄想を炸裂させて、ユーグラムの母上に婚約者です!とか言って突撃しそうな感じしない?」
「うわ、キモッ!でもありそう!」
「……………冒険者ギルドを出たらすぐに実家に帰って報告しますよ」
「ああ、それが良いだろうな」
「まあ、最悪、また国を出ちゃえば良いしね~?」
「学園で少し揉まれれば、勘違いも改善されるんじゃね?」
「そう願いたいですね!」
ユーグラムがあまりにお疲れなので、頭を撫でてやったら、抱っこされて腹を吸われました。
俺はペットではありません!
冒険者ギルドに行って、残り1体のアイスドラゴンを解体してもらって、解体費だけ払って一旦解散。
各々に実家に帰る。
助は俺達と一緒にお城へ帰るけどね。
お城の王族専用の門に行くと、アールスハインと助が止められてしまった。
そして俺とペット達を見て、アールスハインと助を見て、慌てて通してくれた。
「プププ、止められてりゅー」
アールスハインは苦笑して、自分の顔をツルリと一撫でしてから、
「そんなに馴染んでるか?」
「冒険者にしちゃ小綺麗にしてるけど、だいぶ馴染んでると思いますよ?」
「たしゅくは、みわけつかねーくりゃい、なじんでる」
「そりゃどーも!」
頭をワシャワシャされました。
お城では家族だけでなく使用人の人達にも皆にお帰りを言われて、旅の話を聞かれ、美味しいご飯をたらふく食べてゆっくりしました。
宰相さんが廊下をスキップしてた場面に遭遇してしまい、お互い気まずい思いもしたりしたけど!
気まずいながらも丁寧にお礼を言われたけど!
五日目。
ユーグラムから手紙が来た。
例のキミッヒ伯爵令嬢がやらかした模様。
ユーグラムのお母さんではなく、教皇倪下本人にユーグラムの婚約者だと名乗り、教会に通い詰めてるらしい。
ユーグラム本人から事情は聞いていたそうで、教皇倪下がキミッヒ伯爵令嬢の言葉を信じる事は無かったけど、少しだけ治癒魔法が使えたらしいキミッヒ伯爵令嬢は、ボランティアとして教会の怪我人の治療をするのだと日参してるそうな。
そこで一緒になった神官さんや見習いさん達に、ユーグラムの婚約者だと自称して触れ回っているそうな。
ボランティアなのでもう来るな!とも言えず、ユーグラムは実家の教会ではなく、ディーグリーの家に避難してるようで、もし可能であれば国を出たいとのこと。
次の日、街のカフェで落ち合い、次は何処の国へ行くかの話し合い。
「ササナスラの古代魔道具が出るダンジョンは行ってみてーな!」
「私の最終目標は、元ヒルアルミア聖国のあった場所を見てみたいですね」
「俺は特に目的は無いが、色々な国を実際にこの目で見てみたいな」
「俺も~、色々な国の色々な物を見て回りたいね!珍しい物を買い付けてこの国で販売もしてみたいし~!」
「ケータもべちゅに~、いろいろなところ見たいらけ~」
「そうすっと、ササナスラじゃすぐ帰ってこれるから、海でも渡るか?」
「そうだな、海を渡って北大陸に行くとなれば、彼の令嬢も諦めもつくだろう?」
「とてもありがたいのですが、そんな簡単に決めてしまって良いのですか?」
「良いだろ?いずれは行くつもりでいたし」
「北大陸はこちらとは全然別の文化や風習があるんだろう?興味深いな」
「ならさ~、取り敢えずうちの爺ちゃんと婆ちゃんの居る元帝国の端、ブリュエンヌって国に行ってみない?」
「ブリュエンヌ?本で読んだ事はあるが、花と音楽の国、だったか?」
「そう。婆ちゃんが音楽好きでね、若い頃に行商で行ったブリュエンヌが忘れられなくて、今は隠居して移り住んでるよ~。まずは北大陸の文化や風習を知るためにも、爺ちゃん達を訪ねない?」
「良いな!全く文化や風習を知らないで行って、問題でも起こしたら目も当てられない」
「事前に知らせなくて良いのですか?」
「良いの良いの、爺ちゃんは隠居って言っても、半分趣味で商売は続けてるし、お客さんとか大好きな人達だからさ!」
「なら決まりだな!」
「あ!ちょっちょまった!」
「どうしたケータ?」
「ばしゃちゅくる!まー道具で!」
「魔道具で馬車?何のために?」
「いどー、けちゅいたいのいや!あとおそい!」
「あー、馬車での移動は時間がかかるもんな~?だからってボードで飛んでたら色々言われそうだしよ?」
「無駄に目立つのも面倒事しかないだろうしね~?だからこその魔道具の馬車か~。あのテントみたいにするの?」
「うん!キャンピングカーちゅくる!」
「ブフッ!良いね~!」
「キャンピングカー?」
「移動できるテントって感じか?」
「うん」
「は~、また知られると騒ぎになりそうだけど、魅力的だね~?」
「完成までどれくらいかかる?」
「ん~?みっか?」
「え?はやっ!三日で出来ちゃうの?」
「ほろばしゃ、かいじょーするだけらからね」
「ああそうか、貴族用の馬車じゃなく、冒険者がよく借りる幌馬車を改造するのか!ケータもちゃんと考えてんのな?」
「バカにちてる?」
「感心してる」
「なりゃ、ゆるす」
「ククク、じゃあ幌馬車は俺が用意するよ~!」
「費用は全員の割り勘だぞ」
「ケータ、まー道具の値段ちらない」
「それはテイルスミヤ長官に相談するから良い」
「向こうでは馬での移動は少ないらしいから、補助器具は向こうで買った方が良いね~」
「じゃあ、三日後に出発って事で良いな?」
「ええ」
「りょ~かい!」
「ああ!」
「おっけ~!」
そう言うことで、大陸を渡ることに決定しました。
まだ出発じゃないけど!




