ミルリング国 王城 短目
【6/10書籍発売】
誤字報告、感想、おめでとうコメントありがとうございます!
三日後。
お城からの使いが来て面会の許可が下りたとのこと。
その人に案内されて城内を歩く。
リュグナトフ国のお城は、豪華ではあったけど質実剛健と言う感じなのに対して、ミルリング国のお城は兎に角煌びやか。
明るい色の壁に華やかな模様が描かれ、柱の一本一本に装飾がされている。
目がチカチカします!
場違い感が半端ない!
暫く待たされた後に、従者の人と護衛騎士とを引き連れて部屋に入ってきたのは、王太子妃のイライザ嬢の姉。
名前は覚えてないけど。
顔はイライザ嬢と似てるので何となく分かる。
「お父様からの贈り物ですって?!、!、?!」
軽やかな声と共に尋ねられて、下げていた頭をあげると、アールスハインの顔を見て固まる王太子妃様。
そりゃそうだ。父親からの贈り物を届けにきた冒険者が、自分の出身国の王子だったんだから。
「こちらがリュグナトフ国の宰相様の紹介状です。ご確認下さい」
ディーグリーが従者の人に手紙を渡すと、それを王太子妃様に渡す。
直接手渡しはしないのが常識。
固まってた王太子妃様は、父親の字を見てちょっと落ち着いたのか、
「え、遠路遥々ご苦労様、それでお父様の贈り物とは?」
まだ多少の動揺は見られるが何とか立て直した様子。
「こちらになります」
ディーグリーが綺麗にラッピングされたプレゼントを机に並べる。
それを従者の人が丁寧に開けて中を確認。
「これらは?ぬいぐるみ以外は見たことも無い物ばかりだけど」
「こちらはお子様用の、文字を遊びながら覚えられる絵札と、計算を簡単に出来る道具、それと通信用の魔道具になります」
ディーグリーが使い方も含め説明していくと、侍従やメイドも興味津々で覗き込んでくる。
「まあ!リュグナトフ国にはこの様な素晴らしい品々が有るのね?わたくし全然知らなかったわ!」
王太子妃様が感激したように言うのに、
「発売されてまだ間もない物ですからご存知無いのも仕方無いと思われます」
「これはもう何セットか買えるかしら?是非他の方々にプレゼントしたいわ」
「申し訳ありません。このカルタとそろばんはリュグナトフ国国内でも生産が追い付いていない物で、なかなか手に入らないもので、今回は販売用のご用意は出来ませんでした」
「あら、それは残念だわ」
「ご要望に添えず申し訳ありません」
「良いのよ。それだけ良い品をプレゼントされたのだもの。それで、こちらの通信用魔道具と言うのは?」
魔道具の説明はアールスハインから。
「こちらは王太子妃様専用の魔道具で、魔力を流しながら使用すると、登録された相手に瞬時に連絡の取れる魔道具です」
「遠く離れた方と連絡が取れると言うことですか?」
「はい。この魔道具に登録されているのは、リュグナトフ国の宰相様のみですので、宰相様とであればいつでも連絡が取れる事になります」
「まあ!そんな優れた魔道具を、わたくし個人が所有することは許されるのかしら?」
「宰相様が個人で購入され、王太子妃様のみが使えるよう登録されたと言うことで、リュグナトフ国でも許可が下りたと聞いています」
「お父様ったら相当無理をされたのではないかしら?」
「なかなか会えないお孫様のお顔を映して差し上げれば、その苦労も報われるかと」
「あら、うふふ!そう言うことなのね?もうお父様ったら!すぐ近くにも可愛い孫は出来たでしょうに!」
宰相さんのジジ馬鹿ぶりを聞いて笑う王太子妃様。
宰相さんの本音を知って嬉しそうでもあり、呆れてもいる感じ。
お付きのメイドさんや侍従さん達も苦笑気味。
これで政治的な意味は無いですよ~とアピールにもなっただろう。
王太子妃様から国の内情を知られる!とか妙な疑いを掛けられて、王太子妃様が肩身の狭い思いをされたら可哀想だからね!
「試しに一度使ってみて頂けますか?不具合があれば簡単な修理も出来ますので」
「まあ、それはそうね、では!」
王太子妃様が、掌二つ分程の大きめなコンパクト型魔道具を開き魔力を流す。
鏡の様だった画面にモヤモヤと姿が現れ、ハッキリと映る事で通信開始。
「お父様!まあ!本当に繋がったわ!ええ!これは本当にお父様の今のお姿なのかしら?」
〔落ち着きなさい、無事届いたようで安心したよ〕
「お父様!ああ、素晴らしい魔道具をありがとうございます!これで何時でもお顔を拝見して会話が出来るなんて!とても嬉しいですわ!」
〔ああ、私もだよ。それで孫達は元気かね?〕
「うふふ、お父様、今は届いたばかりで試しに使ってみただけですの。子供達とはまた後程。不具合も無さそうなので一旦切りますわね。次は子供達と一緒の時に連絡致しますわ!」
〔ああ、楽しみにしている。届けてくれた冒険者達にも礼を言っておいてくれ〕
「ええ勿論ですわ!素晴らしい魔道具をありがとうございました!」
〔ああ、ではまた〕
「はい!また後程!」
それで通話は切れ、コンパクト型魔道具を閉じて胸に抱く王太子妃様。
「本当に繋がりましたわね!この様な素晴らしい魔道具を届けて頂いてありがとうございます!」
「いえ、我々は依頼を受けただけですので」
「何かお礼をしたいわ!」
「それには及びません。依頼料は十分に頂いておりますので」
「でも本当に嬉しいの!是非個人的にお礼をさせて!」
「ありがとうございます」
「謝礼と言うのは失礼かしら?別の物が良いかしら?鉱山には興味がおありになる?鉱山の見学や買い付けくらいならわたくしでも多少の便宜は図れるわ」
「ええと、それならばアシュリ鉱山のダンジョンへの挑戦権など頂けないでしょうか?我々は冒険者ですので、ダンジョンには是非とも挑戦したいと思っております」
「ああ、アシュリ鉱山のダンジョン、あそこはこの国の貴族の紹介状が必要ですものね!良いわ!紹介状を書きましょう!貴方達に限って盗掘などの心配は無いものね!」
「ありがとうございます」
「後程宿へ届けさせるわね!本当に今日はありがとう!」
話はそれで終了。
王太子妃様が部屋を出て行った後に、また従者の人に先導されて城を出る。
王太子妃様が居なくなったので、従者の人も多少緊張が解れたのか、
「それにしても先程の魔道具は素晴らしい物でしたね!あのように瞬時に離れた場所の方とお話が出来るなんて!リュグナトフ国は豊かな国とは聞いていましたが、技術の発展も凄まじいですね!」
「いやいや、あれは特別だからね!まだまだ国の上層部でも一部の人しか使えないから!今回のは宰相様が孫の顔見たさに暴走気味だっただけだから!」
「それが許されるのは、国が安定している事と、宰相様への信頼が厚いからですね!やはり素晴らしい事です!」
「そうだね~、俺達も居心地が良いしね~」
答えるディーグリーだけでなく、皆の顔が誇らしげ。
それが妙に微笑ましい。
お城を出るとまた街をブラブラしながら宿へ帰る。
山に囲まれた王都は雪は少ないが風は強く気温は低い。
白い壁に暖色系の街並みは見た目は暖かそうだが油断すると風邪をひきそうなくらい寒い。
早々に宿に戻りのんびりと過ごす。
その日の夕方には手紙が届き、王太子妃様からは先程の無礼を詫びる言葉が書かれていた。
それとダンジョンへの入場許可証も同封されていた。
ご丁寧にダンジョンへ行く日が決まったら、案内の騎士を一人派遣してくれるそうで、日取りが決まったら知らせて下さいとか。
その場で返事を書くのでお使いの人に待ってて貰うよう頼んで、返事を書く。
何の意図があって入ってたのかずっと謎だった可愛らしい便箋をマジックバッグから取り出し書く。
文面はアールスハインとユーグラムが考え、一番字が綺麗な俺が書いたよ!
お使いの人に届けてもらう。
出発は明後日の朝。
その夜、アールスハインの通信魔道具に宰相さんから連絡があって、孫の顔が見られた!との報告。
普段は厳めしい顔の眉間の皺と口髭がトレードマークなのに、大変ヤニ下がった顔をしておられた。
イライザ嬢や宰相の奥さんとも会話出来たようで、皆さんにとても喜ばれた様子。
凄くお礼を言われた。
うん、ジジ馬鹿全開だね!




