ミルリング国王都までの旅
【6/10】ツギクル様から書籍化します。
誤字脱字、書籍化おめでとうのお言葉ありがとうございます!
国境の街を次の日には出発して、山岳地帯の多い道を商隊で進む。
ラバー商会の商隊は慣れたもので、あれこれと積極的に意見を出し、それを聞いてやっぱり慣れてるアンガスさんチームが細かく予定を組んでいく。
俺達はその予定を聞いてふんふん頷いているだけ。
とても参考になる。
アンガスさんチームは、ベテランの冒険者だけあって、国境の街で兵士達に聞き込みなどもしていて、どの辺に盗賊が出るとか、どの辺にどんな魔物が出るとかの噂を聞き込んで、同行してる冒険者達に警戒を促している。
俺達の行き当たりばったりな旅とは大違いでちょっと反省した。
やめる気はないけど!
山岳地帯を縫うように道があり、馬車の幅ギリギリの道も多く、進みはとても遅い。
そして揺れる。
ハククッションに座っていても全身が弾む程揺れる。
窓から外を見れば崖か谷。
絶叫マシンよりもスリルがある。
落ちる心配のないボードや魔道具に乗りたい!切実に!
でも無理なので、安全の為に密かに見えないバリアを敷いて、多少馬車がはみ出ても落ちないようにはしてる。
こんな危険な場所にも魔物は生息しているので、上から突っ込んで来る系の魔物対策に、ヌルヌルバリアを張って谷底に落ちるようにしてる。
これで多少は安心。
この辺りで怖いのは、突っ込んで来る鹿のような魔物と、突っ込んで来る啄木鳥のような魔物だけだからね。
そして峠に差し掛かる場所で注意するべきは盗賊。
アンガスさんチームが噂で聞いたと言う場所にドンピシャで出た。
あまりにドンピシャな事に逆に驚いた!
汚くて臭そうなモジャモジャの頭領が怒鳴りながら命令してる。
予想通りなので、当然警戒して待ち構えていたこちらに向かってくる盗賊達の人数は、見えるだけで二十三人。
見えない位置にもたぶん居るだろう。
俺達の持ち場はラバー商会の馬車の周り。
商会員の人達は、戦える人以外は馬車の中で待機。
先頭の方からは怒鳴り声や叫び声、剣を撃ち合う音や魔法の着弾する音等が聞こえてくる。
俺は馬車を囲む様にバリアを張って、馬車の上から周りを見てる。
隣には何時でも魔法を撃てる様に待機してるユーグラム。
アールスハイン達は周りを歩きながらの警戒。
パツンとバリアに何かが当たる感触がして、カランと落ちる音。
そちらを見れば矢が落ちている。
俺が見た方向に、既に魔法を放っているユーグラム。
風の魔法は音もなく見えもしないのでよっぽど魔法に長けた者か常にバリアを張っている者でも無ければ避けるのは難しい。
ただ今回は相手が隠れて矢を放っているので、大体の予想で撃った魔法は、相手をかすっただけで、直撃はしなかった。
それでもバランスを崩し隠れていた木の枝からは落ちたけど。
すかさずディーグリーが駆け寄り捕縛。
こちらに引き摺って来ようとしたその後ろに、幾人もの隠れていた盗賊が迫る。
慌ててディーグリーにバリアを張り、ディーグリー本人もすぐに戦闘態勢を取り直す。
そこからは駆けつけたアールスハインと助も加わり、次々に倒していく。
ラバー商会の商会員は馬車の近くで警戒。
馬車の上からはユーグラムが魔法で援護射撃。
商隊の中で一番荷物が多く、たぶん扱う商品の値段も高いのはラバー商会の商品だろう。
それを知ってて狙われたのか、先頭を襲っている盗賊よりも、今周りを囲んでる盗賊の方が人数が多い。
盗賊達は数を頼りに馬車に殺到しようとするが、バリアに阻まれて近付けない。
ラバー商会の商会員達は、バリア内からチクチクと手足を攻撃してる。
アールスハイン、助、ディーグリーは肉体強化で縦横無尽に走り回り、それはそれは楽しそうに攻撃してる。
誰一人致命傷は負ってない様子が流石。
我がペット達も活躍してる。
ハクは巨大化して、触手を伸ばし、何人かを纏めて縛り上下左右に振って気絶させてるし、ソラは巨大化して一吠えしただけで盗賊の何人かが腰を抜かしてる。
ラニアンは盗賊の後ろ襟を噛んで宙吊りにして落とすを繰り返してる。
プラムはバリア内から石を投げて中々の命中率。
三十人程の盗賊が無力化される頃には、先頭での戦闘も終了したのか、アンガスさんが報告に来て、こっちの人数に顔をしかめている。
「ああ、こっちが本命か。さて、どうすっかな?」
「どうする、とは?」
「二十人くらいの盗賊なら縄を掛けて次の町まで歩かせるんだが、五十を越えると、その辺の町じゃもて余すだろう?かといってデカイ街まで歩かせるのもな?塒の場所も吐かせねーといけねぇしよ!」
「ならば魔法で埋めますか?首さえ出ていれば死にはしないでしょう?その上で次の町の兵に連絡して貰えば、兵団なり騎士団なりを派遣して貰えるのでは?」
「クク、それ良いな!水さえ置いときゃ死なねーだろうし、首から下が埋まってりゃー掘り出してまで助けるのは時間が掛かる。その内兵士が見張りに立つだろうしな!」
そう言う事になった。
一ヶ所に集められた盗賊は、横一列に並ばされ道のすぐ脇に、首から上しか出てない状態で埋められた。
盗賊の頭領の首にはご丁寧に看板がぶら下げられてる。
(この者盗賊に付き、多少の遺恨は晴らしても許されるのでは?)
って書いてある。
軽く小突いたり、蹴ったり、石を投げても良いんじゃない?って事らしい。
えげつない。
目の前を通り掛かる馬車の車輪だって怖い位置なのに、その上石を投げられたりするんだそう。
えげつない。
兵士が早く来てくれると良いね!
怪我人の手当てを終えたら出発。
薄暗くなる頃には次の町に到着し、兵士に通報もして宿に泊まる。
翌日も次の日もまた谷を越え、山を越え、魔物と戦って崖の道。
旅って過酷なのね?
山とか谷とか崖を越える度に、デカイトンネルを掘りたい衝動に駆られる。
やらないけど、やらないけど!ここに真っ直ぐトンネルが作れたらな~と思ってしまう。
特に美味しくない宿の食事を食べてる時。
あんなに恐怖して過酷な旅を超えてるのに、ご飯が不味いって、とても不幸な事だと思うの。
部屋で密かに自分達だけ美味しい物を食べるのも気が引けるし!
もっと世界に美味しい物を!
とつい考えちゃうよね~。
ご当地グルメ旅とか憧れるよね~。
ちょっとやさぐれながらの旅もあと一日。
やっぱり朝から山越えて。
今までで一番高い山を越えると、山々に囲まれたミルリング国の王都が見えた。
小山の上に築かれた王都は、頂上に城が聳えそこから下る毎に屋敷の規模も小さく雑多になっていく。
王都を囲む城壁の外は段々畑になっていて果樹だろう木々が並ぶ。
その外側には広くはないが畑が広がり、さらにその外側には牛や豚、羊や鹿が各々に仕切られた場所で草を食んでいる。
長閑で穏やかで平和な光景だ。
ゆっくりと山を下りながら、王都へと近付く光景は映画の場面のよう。
不思議な感覚に陥りながら景色を楽しむ。
うっすらと雪の積もった山々は寒々しいが、ミルリング国の家々の屋根は暖色系の屋根が多いので、雪景色の中にあってとても鮮やかで暖かみを感じる。
山を下りきり王都へと続く一本道を進む。
羊飼いの少年がこちらに手を振り、牛飼いの少女が大声で挨拶をしてくる。
ミルリング国は国土の八割が山なので人口はそれ程多くはない。
町は点在しているし、王都は山に囲まれている。
立地の関係から歴史は古いが他国から直接王都を攻められた事の無い国なのだとか。
王都の歴史だけならリュグナトフ国よりも古いとか。
そんなミルリング国の国民性は、一言で言うならのんびり。
自然の恵みは多く、季節的な災害の被害は少なめ。
豊かでは無いが飢えることはなく、働いた分がそのまま収入に繋がる様な国。
宝石類の博打のような商売は、主に他国相手に行うもので、自国の損失は最小限に抑えられている。
王族の性質も至って穏やか。
子沢山の家系でイライザ嬢の姉は去年二人目と三人目にあたる双子を産んだとか。
王都への入国待ちの間にトウガンさんからそんな話を聞いた。
ラバー商会の今回の商品の多くは、小麦やじゃがいも等の穀物や日持ちのする野菜等。
冒険者から買い取りした大容量のマジックバッグをディーグリーに持たせる用意周到さ。
持ち帰りたい商品は宝石やミルリング国特産の品々。
長い時間待たされた後に、やっと門をくぐり街へと入れた。
石造りの白い建物、暖色系の屋根、それらが並ぶと冬の寒さが薄れるような錯覚を受ける。
人々は穏やかに街を行き交い、賑やかな声もそこここで。
トウガンさん達とまず向かうのは、ラバー商会の支店。
貴族街に近い一等地に建てられた建物は大きく、その繁盛ぶりが窺える。
店の裏口から入り、ディーグリーに預けた荷物を取り出し、倉庫に納めて冒険者ギルドからの書類にサインを貰って、やっと依頼終了。
「お疲れ様でした。お世話になりました!これ程実り有る旅は初めてで、大変勉強になりました!お任せ頂いた商品は、速やかに製品化して販売ルートにのせたいと思います!本当にありがとうございました!」
「お疲れ~!またね~!」
「お疲れ様でした。良いご商売を」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。また機会があれば!」
「おつかれさまでちた~」
各々挨拶をして別れる。
旅を共にした商会員の人達が大きく手を振って見送ってくれる。
それに手を振り返して、冒険者ギルドへ。
どこの国のどこの街の冒険者ギルドでも、冒険者ギルドと言うのは独特な空気があって、入った途端に睨まれるのも恒例。
気にせず受付に向かい書類を提出。
勿論俺もリーダーなので同じ書類を提出。
背が届かないのでカウンターにじかに座ってるけど。
最初微笑ましそうに見てきた受付のお姉さんが、書類を見て顔を引き攣らせている。
それでも仕事は迅速にこなし、多少引き攣ってはいるがにこやかに、
「ご依頼の達成を確認致しました。お疲れ様でした。こちらが報酬になります、ご確認下さい!」
とお金の入った袋をカウンターに二つ置く。
アールスハインチームと俺チームに。
普通に受け取って中を確かめる俺に、微妙な視線を向けてくるお姉さん。
慣れてるので今更気にしない。
数えるのが面倒なのでディーグリーに見せる。
ディーグリーもザラッとお金をかき混ぜるだけで頷くので、それで確認終了。
冒険者タグを外して渡すと、魔道具に通して依頼終了と支払い終了が登録される仕組み。
何気にハイテク。
時々出てくるハイテクは、太古からある技術を応用したものだとか。
その辺の事は国やギルドのトップシークレットだから聞いちゃいけないとか。
終了手続きが終わったら、もう一つの依頼を片付ける為にお城へ。
突撃訪問の許される場所や相手では無いので、まずアポイントを取る。
お城の門番に用件と滞在場所の宿の名前、紹介者であるリュグナトフ国の宰相さんの手紙を見せる。
確認が終わったら手紙を返され、相手の了承が取れれば後日宿に連絡が来る流れ。
他所の国の王族に会うのって、凄く時間が掛かるし面倒なのね?
リュグナトフでもアマテでも気軽にホイホイ会えたもんで、こんなに面倒な事とは知らなかったよ!
この後はトウガンさんお薦めの宿で待機します。
誤字報告で、頭の悪い間違いを指摘されるまで気付かなかった事に落ち込みます!
でも懲りずに書き続けてますので、突っ込みお願いします!




