年越しパーティー
誤字報告、感想、励ましの言葉をありがとうございます!
皆様も健康第一でお過ごし下さい!
噂の内容は、傲慢姫と腹黒姫と無謀姫に大国の姫の話。
傲慢姫と腹黒姫は、その名の通り臣籍降嫁しても傲慢で腹黒。
だが元姫と言う肩書きがある故に、夫でさえ中々諌める事が出来ないでいたそうな。
無謀姫は剣を振り回す事しか頭になく、傲慢姫と腹黒姫に思うままに操られ、庶民の間では人気だが、貴族令嬢達には遠巻きにされている。
そこへ颯爽と現れた大国の姫が、一歩も引かないどころか堂々と渡り合っている。
しかもこの国に来て早々に、国に有益な産業を起こそうとしている。
大国の姫の評判が鰻上り。
いずれスサナ王子が王になった暁には、大国を後見に付けた大国の姫に依って、この国は更なる豊かさを手に入れるだろうとの、明るい未来への希望に溢れている。
その為には傲慢姫と腹黒姫をどうするか?
そんな物騒な話がそこここで聞こえる。
そんな噂のど真ん中な人物が、パーティーのど真ん中で何やら不穏な空気。
今回の塩事業の利権に関われなかった元姫達は、大国の姫に恨みを募らせているとか。
会場全体の目が釘付け。
さっきまで鳴ってた音楽も止まっている。
「オホホホ、大国の姫と言っても所詮小娘。この国のパーティードレスの一つも手に入れられないとは!貴女魅力が足りないのじゃなくて?そこの愚弟に貢がせる事も出来ないなんて!」
「ウフフ、お姉様。小娘相手に言い過ぎですわ!まだまだ小娘ですもの、魅力が足りないのは仕方なくてよ!まだまだ野山を駆け回りたいお年頃でしょうし!」
「オホホホ!それでは庶民の子供と同じではないの!でもそうね、パーティードレスの一つも持っていないなんて、庶民の子供と変わらないわね!」
「その通りですわ!ちょっとお付きの者が珍しい知識があったからと言って、この小娘が評価されるなんておかしな事が起こるから、調子に乗ってしまったのかしら?」
「姉上達!ここはパーティーの場ですよ!私の婚約者に対してあまりに無礼ではないですか!」
「オホホホ、あら嫌だ!愚弟ったら既に小娘の尻に敷かれているようよ!これでは先が思いやられるわね!」
「本当ね、お姉様!ドレスの一つも贈れない甲斐性なしの上に、小娘一人しつけられないなんて可哀想!」
「フフフ。可哀想なのはお二人の頭ではないですか?臣籍降下した家臣の分際で、王太子殿下で在らせられるスサナ様を愚弟愚弟と仰るなど、正気の沙汰とは思えませんわ!ご自分の立場を理解できないのですか?それに、ドレスは我がリュグナトフ国の最新流行の物ですの!婚約者の立場で、あまりスサナ様に負担を掛ける訳にはいきませんもの!」
ビキッ、と空気が凍る音を聞いた気がした。
そしてワナワナと震え出す二人の元姫達。
「な、な、な!小娘の分際でわたくしを侮辱するつもり?!わたくしはアマテ国の一の姫よ!」
「も、と、姫ですわよね?臣籍降下の意味はご存知ですか?既に王籍は抜けておられるのだから、姫と名乗るのはいかがなものかと?」
「わたくしは姫よ!夫は公爵だわ!わたくしに逆らってこの国で生きていけると思わないことね!」
「……………スサナ様、この国の姫への教育はどうなっておりますの?わたくし今、公の場で、他国の公爵夫人に命を狙われましてよ?」
「すまない。この国の女性達は、長い間守られる事に慣れすぎて、時々こう言う手のつけられない傲慢な者が出てきてしまうのだ。両陛下は呑気に、結婚でもすれば改善されるだろうと傍観するばかりでな」
「それは最悪の手ですわね?ここまで育ってしまった者を改善させることは無理でしょうね?」
「頭の痛いことだ」
「その点、ミクニ姫はまだ見込みは有りそうですが」
「ああ、それなら良いが」
「フフフ。リュグナトフ国の淑女教育は、中々に過激ですから、改善されるでしょうね!」
元姫そっちのけで会話する二人に、元姫達はワナワナしてる。
ちょっと離れた所から二人の男性が走り寄ろうとしているが、人に阻まれて中々近寄れない。
「随分と仲がよろしいのね?外国かぶれの愚弟と、大国の権威を笠に着る小娘とは、とてもお似合いだけれど、ちょっと調子に乗りすぎではないかしら?ここはアマテ国よ?他国の姫が好き勝手出来る場ではないのよ?」
「フフフ。元姫の公爵夫人と伯爵夫人は好き勝手なさっているのに、次期王妃候補のわたくしには、何の権利も無いと仰るの?それこそ現実の見えていない方の発言ですわね?」
「まあ!恐い!もう既に王妃気取りでいらっしゃるの?!それはあまりに畏れ多い事だわ!世間知らずもここまでくると滑稽ね!」
「世間を知らないのは、貴女でしょう?わたくしは次期王妃候補と申しましたのよ?王太子殿下と正式に婚約をはたしたわたくしの、公の立場ですのよ?ご存知ありませんの?」
心底驚いた!とばかりの声と表情で言うアンネローゼに、周りの貴族達から肯定の頷きがあり、伯爵夫人には嘲るような視線が送られる。
そこで漸く人波から抜け出した男性二人が元姫達の元へ到着し、息つく間も無く頭を下げた。
「「申し訳ありません!スサナ殿下、アンネローゼ姫様!」」
名乗りもせずに突然謝られたアンネローゼは、口許を扇子で隠し何も言わない。
「あ、申し遅れました!私はカグラ公爵家当主、セイシロウ・カグラと申します!妻が大変失礼をいたしました」
「私はアズマ伯爵家当主、ロクエモンと申します!我妻も大変失礼を申しまして、申し訳ありません!」
平謝りする男性二人は、元姫達の夫のよう。
アンネローゼは何も言わずにスサナ王子をチラッと見ただけで、スサナ王子が、
「お二方共頭を上げてくれ。愚かな姉のせいでお二方には苦労を掛ける」
スサナ王子まで軽くではあるが頭を下げた。
それに黙ってない元姫達は、射殺すような目で夫を見た後に、スサナ王子とアンネローゼの事も睨み付け、何かを言おうと息を吸い込んだ。
「おうおう、何の騒ぎじゃ?この新年の祝いの席で、注目の的になっておるぞ?」
ゆったりとした口調でゆったりと歩いてきた王様と王妃様達。
出鼻を挫かれた元姫達は、すかさず王様に取りすがり、
「「お父様!この小娘が!!」」
口々にアンネローゼの悪口を捲し立てる。
それを聞いて、どんどん顔色の悪くなる王様と王妃様達。
それでも止まらない悪口。
事実無根の罵詈雑言も混じってきた。
王妃様達倒れそう。
思い付く限りの罵詈雑言を喚いた二人は、肩で息をしながらアンネローゼに勝ち誇った顔を向けている。
王様の顔色がとても白い。
スサナ王子も、元姫達の旦那さんも変な汗をかいている。
会場はシーーーンと静まり返り、誰一人声も発しない。
そんな中、
「フフフ。公爵夫人と伯爵夫人は随分と想像力が逞しいのですね?ありもしない事実をさも本当の事のように語られて、わたくし感心いたしましたわ!どうせならその想像力と言うか、妄想力を活かして、作家にでもなられればよろしいのに?貴族夫人よりもお似合いですわよ!フフフ」
とても楽しい思い付きを披露するように笑うアンネローゼ。
こっっっわ!!
目からビーム出てんじゃない?!
誰も反論出来ずに固まってるよ!
隣のスサナ王子の目が激しく迷子になってるよ!
遠回し?に平民に落ちろよ、貴族夫人の資格ねーよ!って言ってるアンネローゼ。
王様まで汗がダラダラ流れてる。
それでも王様。
この場を仕切るこの国で一番偉い人。
「は、ははは!確かに妄想と言われても仕方無い言葉だな!余興にしてもやり過ぎだぞ!場を盛り上げようとしたのかも知れぬが、言葉が過ぎる!お前達はもう下がりなさい!アンネローゼ姫、すまなかった。二人は少々呑みすぎたようだ」
「フフフ。楽しい余興でしたわ!ただ、次はもう少し皆様と共に盛り上がれる話題にして欲しいですわね」
「ああ、その通りだな!」
王様が目で訴えたのか、無言のまま深く頭を下げた夫に連れられて、元姫二人は力尽くで会場から連れ出された。
ご丁寧に反論しようとする口を塞がれて。
パンパンと王様が手を叩いた事で、音楽が鳴り出し、スサナ王子がアンネローゼをダンスに誘い、アンネローゼがにこやかに受けた事で、パーティーの雰囲気が戻った。
王様も何食わぬ顔で王妃様の一人と踊ってるし。
その後は和やかなパーティーになった。
パーティーも終了し、部屋に戻る道すがら、アンネローゼ付きの騎士が待っていて呼び出された。
連れていかれたのは応接室。
そこにはスサナ王子も居て、部屋に入るなりアンネローゼに抱っこされて撫でられた。
ほっぺたを揉まれチュッチュチュッチュされる。
相当ストレスが溜まってたのね!
されるがままになっていると、アールスハインがスサナ王子に謝られてる。
俺達は見てただけなので、別に謝られる必要は無いんだけどね。
「今回の事で、父上達も姉達の本性に気付き、厳しい処罰をせざるをえないでしょう。今まで放置し過ぎた結果です。そうなれば、アンネローゼ姫への対応はだいぶ好転するでしょう」
「あら、わたくしはこのままでも負ける気はありませんよ?」
「アンネローゼ」
アールスハインの呆れた視線にもにこやかに笑顔で返すアンネローゼ。
逞しい限り。
「あ!そうそう!ケータちゃん!可愛らしいアクセサリーを沢山ありがとう!ご令嬢達に凄く人気よ!」
「きにいったー?」
「ええ、とても!可愛らしいのに豪華だし、華やかだし!見たことないデザインだし!大事に使わせてもらうわね!」
「うん」
「ドレスの事はすまなかった」
スサナ王子は今度は、アンネローゼに謝っている。
「あら、気にしていませんわ。それにこう言っては失礼かもしれませんが、この国のドレスは、年配のご婦人方には厳しいデザインかと思うので、わたくしのドレスが少しでも参考になればと思います」
「確かに。リュグナトフ国のパーティーでは、様々な形のドレスがあったように思う。ここだけの話、母上もアンネローゼのドレスに注目していたようだし」
「まあ、光栄ですわ!是非その辺のお話もしたいですわね!」
アンネローゼは部屋に入った時よりもリラックスした顔で笑ってる。
まあ、負ける事は無いとは思うが程々にな!とアールスハインに釘を刺されて本日は終了。




