試験五日目 六日目休み
明けましておめでとうございます!
昨年は世界的にも大変な年でしたが、皆様、今年もよろしくお願いします!
まず何よりも、健康に過ごせますように!
おはようございます。
今日の天気は曇りです。
試験最終日です。
Sクラス以外の生徒の顔が、心なしか明るく見えます。中には疲れ切って魂が抜けたような生徒もいるけど!
食堂の中央の目立つ席には、この頃邪険に扱われていたキャベンディッシュが元ダ女神を隣に座らせ朝食を食べてます。
その顔がとてもご満悦そう。
元ダ女神の正面の席には元会長も座ってる。
それを横目に端の席に座り、朝食を食べ教室へ。
皆が試験を受けてる間に、昨日買った魔道具の解呪。
以前買い漁った魔道具とそんなに変わりは無く、四個の内一個が収納。残り三個が攻撃。
収納の魔道具は、学生鞄のような形なのに生の食材しか入れられない。容量は教室二部屋分くらい。
攻撃の魔道具は、一回だけ広範囲に火の雨を降らせる物、五、六回使える土の壁で閉じ込めて相手を窒息させる物、魔力が切れなければ何回でも水の槍を飛ばせる物。
どれも騎士団行き決定な魔道具ばかり。
昨日元ダ女神が言ってた、精神操作系の魔道具は無し。
どんな物が出てくるのかは知らないが、対策をしとくべきだろうか?
防御系の魔道具は作った事がないが、円の中に丸を書けば良いんでしょ?丸だから、書く順番さえ間違えなければ、文字数は多くても大丈夫。
マジックバッグをゴソゴソしながら探す。
何時相手が仕掛けて来るか分からないので、常に身に付けられる物じゃないとね!
でもあんまり小さいと魔法陣を書くのが面倒臭い。
なので冒険者の身分証明なドッグタグに、もう一枚プレートを足すことにした。
アールスハイン達も、公式な行事以外の時は常に首から下げてるからね。
この先多くの枚数が必要になる可能性が有るので、先ずは判子を作ります。
防御系の魔道具の場合、丸の中に上下右左の順番に文字を書くのは変わらないけど、丸の中に等間隔で文字を書かないと、バランスが悪くなるそうです。
円の中に丸を書く。
丸の中にバランス良く、精神攻撃無効、更に内側に四角を書き、犯人照射も付けてみた。
これで、この魔道具を持ってる人に精神攻撃をした場合、犯人は照らし出される予定。
これをドラゴンの魔石に転写して、魔法で彫っていく。
繊細な作業なので午前中のほとんどの時間を使ってしまった。
ボードを作った時に出た端材を、薄く切って形を整え、魔石を置いて焼付け。
ピカッとして完成!
それを何枚か作り午前中が終了。
着替えて街へ。
ディーグリーのお薦めの食堂でご飯を食べながら、魔道具の説明をして皆に配ると、凄い感謝されました!
判子は後でテイルスミヤ長官に渡す予定。
シェルが教えてくれたんだけど、最近お城では焼付け係とか言うバイトが流行ってるそうですよ!
そして俺のマジックバッグには、いつの間にかドラゴンの魔石の欠片が増えてましたよ!
シェルったら、俺のマジックバッグが、取り出すのは俺しか出来ないけど、入れる方は誰でも出来る事に気付いてから、色々詰めすぎだと思う!知らんもんがいつの間にか増えてる!
訓練も兼ねてボードで移動していると、気付いた街の人がザワザワしたけど、屋根の上を飛んでるので邪魔にはなりません。
途中衛兵さんに止められたけど、学園の生徒だと言うとアッサリ解放されて驚いた。
大丈夫なのか聞いてみたら、学園の生徒はたまに街中でやらかすので、危険行為じゃなければ見逃されるらしい。
街の人も慣れてるから平気だって。
それで良いのだろうか?
古魔道具屋さんに到着。
念のため店内を観察してから、元ダ女神が居ないことを確認して店内に入る。
顔見知りな魔道具屋さんの店主と軽く雑談をして、呪われた魔道具の事を聞く。
「あんたらが買ってくれて以来、うちには新しいのは入ってないねー、なんだい、この頃は呪われた魔道具が学園の流行りなのかい?この前も可愛らしいお嬢ちゃんが買いに来たけど?」
「流行ってはいないかな~?俺のは完全に趣味だし、その子は何に使うか言ってた?」
「なんでも聖女になるための修行で、解呪の能力を高めるためとか言ってたぞ?」
「?聖女って、異なる世界から御光臨されるんだよね~?」
「そー聞いてたからよ、なんか変な嬢ちゃんだと思って売らなかったよ!金も持ってなさそうだったし!」
ニヤリとする店主に、ニヤリと返したディーグリーが、
「それ正解!そもそも教会は聖女の修行なんてしてないし!」
「何でお前さんが知ってんだ?」
「俺の学園の友人には、教会の偉いさんの息子が居るからね!」
「ほー、ならあの嬢ちゃんは嘘を付いてたって事かい?他の古魔道具屋にも行ってるみてーで、噂になってたんだが、こりゃ情報回しといた方が良いかね?」
「ん~、ちゃんとお金出すなら売っても良いだろうけど、昨日行った古魔道具屋さんの話では、かなり値切るらしいよ?」
「そりゃ~売れねーなー」
店主とディーグリーがニヤリ。
そのお店では結局呪われた魔道具は買えなかったけど、元ダ女神の情報が手に入ったので次の店に。
三軒ほど古魔道具屋さんを梯子して、呪われた魔道具は二個しか買えなかった。
今日は近場の魔道具屋さんだけで終了。
二個の魔道具の内一個は、一時間程姿を消せる魔道具、もう一個は三時間程涼風を吹かせる魔道具だった。
明日は馬車移動しないと、かなり距離の有る店を十二軒回るので、早めに晩御飯を食べて早めに寝た。
休日の今日は、朝早くから街に出て古魔道具屋さん巡り。
ボードに乗ってスイスイ進む街は、この国一番の大きな街だけあって、多くの人が暮らしている。
馬車からの視点とは異なるその風景に、皆も興味深く観察しながらボードを飛ばす。
学園は王都の外れに有るが、比較的治安の良い場所にあるため、進むに連れて景色が雑多になり、活気は有るが治安も悪くなっていく。
衛兵さんが巡回する隣の通りで引ったくりが発生していたり、路地で喧嘩をしている柄の悪い集団が居たり、たまに獲物を物色中のスリ等も見かける。
昨日街を飛んでいたのを見られたからか、衛兵さんに手を振られる事も何度か。
隣の通りを指差すだけで、何か伝わったらしくすぐに駆けつけてくれる。
普段なら大分遠回りする馬車道を、飛んでいるので直線距離で進めたので、目的地にはあっという間に着いた。
この辺の古魔道具屋さんは両極端で、人が良すぎて儲けられない店か、色々誤魔化そうとして失敗して信用を失った店かのどちらかしか無い。
油断のならない店も多いので、ほとんどの場合、話をするのはディーグリーのみ。
他の面々は、付き合いで来ましたって顔で他の魔道具を見たり、時には店にも入らず近くで串焼き肉とかを囓っていたりする。
これから行く店は、油断のならない方の店。
汚れたガラス戸を開け入っていくのは、ディーグリーと俺とシェル。
シェルが同行するのは、ディーグリーをよりお金持ちのボンボンに見せるため。
俺はディーグリーの年の離れた弟設定。
鑑定出来るの俺だけだし!魔道具に見せかけた危険物は買いません!
店主は小太りのハゲ親父。一見良い人そうだけど、良く見るとディーグリーを見る目が油断無く値踏みしている。
地味だけどお高い生地の服着てるからね!
店主は以前に呪われた魔道具を買った客を覚えていたようで、途端に愛想が良くなる。
「おお、いらっしゃいませ!以前にも来て頂いた事のあるお客様ですね?」
「あ~、うん。ねえ、その後新しい呪われた魔道具って入った?有るなら欲しいんだけど?」
「ええ、ええ、有りますとも!お客様がまた来ると仰ったので、他の奴には売らずに取って有りますとも!」
他の客には売れなかったのを大袈裟に言っている様子に呆れる。
「へ~、見せて見せて!面白かったら買うから!」
「坊っちゃん、あまりつまらない物にお金をかけるものではありませんよ!」
「え~い~じゃん、今のところ唯一の趣味なんだから~!前みたいに危ないものは買わないから~」
店主が奥から箱を持ち出して来たのを興味深く覗くディーグリー。
その箱には雑多に何個かの魔道具らしき物が入っていて、中にはウニョウニョの生えた物もあった。
こそっとディーグリーに合図を送り、無邪気な幼児を装って、呪われた魔道具にチョンチョンと触る。
「おおーっと坊っちゃんダメでちゅよー、これは坊っちゃんにはまだ早いでちゅよー」
赤ちゃん言葉が癪に障るが、すかさずディーグリーが俺をシェルにパスして、呪われた魔道具の入った箱を覗き込む。
「ん~結構あるね~、これなんかどんな作用が有るの?」
「ああこれはですね………………」
一通りの説明を聞いた後は、俺の触った魔道具だけを三個選びお会計。
呪いの無い魔道具も売り付けようとしてきたが、ディーグリーがムッとした顔をすればすぐに収まったし、想定内の請求額だったので、提示額で払ったら揉み手しながら送り出してくれた。
こう言う小物は特に気を使うこともないのでサクサク進む。
小物な店主と善良な店主の店を巡り、午前中で十軒の店で呪われた魔道具を買った。
移動が早いので予定よりも大分早く回れて、残り二軒を残して昼食を食べるために食堂へ。
残り二軒は、かなり油断のならない店なので、ディーグリーの気力回復のためにも休憩を入れる。
下町と呼ばれる庶民向けの住宅街にある食堂だが、ディーグリーの商会の系列店なので安心して昼食を食べられる。
肉はまだ硬いので、芋がメインのシチューを食べた。皆はガッツリメニューだけど、やっぱり肉が硬くて、食べられるけど不満そうな顔は隠せなかった。
食堂からボードに乗って古魔道具屋さんへ。
いかにも怪しげな佇まいの店に入る。
メンバーはディーグリー、アールスハイン、シェルに助。
アールスハインと助が護衛ぶって睨みを利かせ、シェルが侍従。
ユーグラムと俺は店の外で待機。
呪いの有無くらいはアールスハインと助の、破邪の眼で見分けられるようになったからね。
ユーグラムと二人で路地の端っこに居ると、治安の悪さも手伝って、柄の悪い大柄の男達がジロジロと見てくる。
良く見ると他の路地からも怪しげな男達が、徐々に近付いて来ているのが分かる。
面倒臭い事になる前に姿を隠しておくべきだった。なので、
「アーー!」
と大きな声で上を指差して、男達の視線を上に向けた途端に認識阻害のバリアを張って、店の前に移動。
急に居なくなった俺達に驚いて、何人かの男達が俺達の居た場所に駆け寄って来たが、その場所にはもう誰も居ないので、周りの男達も集まってきて、下っぱらしい数人の男が殴られたり蹴られたりしてた。
その後暫く待って店から出てきた三人は、酷く疲れた顔をしていたが、もう一軒。
今度も怪しげな佇まいの店に、認識阻害のバリアを張ったまま、俺とユーグラムも一緒に店に入った。
やり取りは全てディーグリーに任せ、俺とユーグラムは気配を消して無言で店の隅に居ただけ。
店主は深くフードを被った年齢不詳、性別不詳なとにかく怪しい人物だった。
何とか無事にやり取りをして、店を出て安全圏の個室のあるカフェに着いた途端、皆の顔から緊張が解けて、深く深くため息を付いた。
「あ~、今回で当たりが出てくれないと、次回はあの二軒は行きたくない~!」
「目も見えないのに、やたらプレッシャー掛けて来てたしなー、店の外には用心棒らしいのが何人も居るし、出来れば俺も遠慮したいね」
「只者では無い気配だったな」
次々と購入した魔道具をテーブルに乗せながら、三人が愚痴を言う。
怪しい事しか分からない人物の相手は、相当疲れたようだ。
今日回った十二軒の店で買った、呪われた魔道具は全部で18個。
内、六個が収納系、三個が攻撃系、八個が防御系、残りはガラクタ。
収納系は、どれも限定が付いた物で、防御系は、物理防御のみ。ガラクタは本当にガラクタ。ただただ延々回ってる玉って何に使うのさ!で、残りの攻撃系に当たりを発見。
「おー、ビンゴー!せいちんそうしゃのまーどーぎゅはっけん!(おー、ビンゴ!精神操作の魔道具発見!)」
「おお!やっぱりそっち系か~!」
「精神操作、自分の意思の通りに相手を操作する能力か」
「んー、れも、このまーどーぎゅ、かんじぇんにかいじゅしゅると、せいちんそうしゃののーりょくなくなりゅねー(んー、でも、この魔道具、完全解呪すると、精神操作の能力無くなるね)」
「んん?どう言うこと?精神操作の魔道具なんでしょ?」
「はんぱーにのりょいとくと、せいちんそうしゃのまーどーぎゅらけど、かんじぇんにのりょいとくと、あいてをこんりゃんしゃせるまーどーぎゅになりゅねー(半端に呪い解くと、精神操作の魔道具だけど、完全に呪い解くと、相手を混乱させる魔道具になるねー)」
「半端に解呪すると精神操作の魔道具で、完全に解呪すると相手に混乱を与える魔道具…………あの子あんなに自信満々だったのに、結局完全に解呪出来ないままの魔道具を使う気満々って事?」
「彼女にとってはそちらの方が都合が良いのでしょうね」
「う~わ~、その後の展開が想像できて、嫌な予感しかしないね~」
「ええ、そうさせない為にも、ここでこの魔道具を手に入れられたのは大きいですね!」
「あ~、苦労した甲斐があった~!」
「ああ、助かった。これ以上奴の好きにさせるわけにはいかないからな!」
無事に心配事が解決したので、安心して学園に戻った。
誤字報告、感想をありがとうございます!
明日からは不定期更新になります。
よろしくお願いします!




