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砂漠の生き物

 砂漠と言われて一般的に想像されるのはサハラ砂漠やゴビ砂漠などの砂丘が連なる砂漠だろう。実際にGoogle検索で「砂漠」と画像検索をしてみても出てくるのはそればかりだ。しかし現実には様々な種類の砂漠と呼ばれる土地がある。一般に想像される細かい砂で構成された砂漠以外にも岩盤そのものが露出している砂漠や、砂利に覆われた砂漠などがある。〇〇砂漠という土地をだした時に砂以外の砂利や岩石などで覆われている土地をだすと玄人感が増す。読者にも新たな読書体験を与えることができる。そんな体験を与える必要性があるか、わざわざそんな想像しにくい砂漠を登場させる必要があるかということは置いておいて。


 今回は比較的使いやすい細かい砂で覆われた砂漠、通称砂砂漠すなさばくの生き物について解説していきたいと思う。


 現実の砂漠にはほとんど生き物はいない。砂漠の生き物と紹介されているラクダやある種のトカゲなども乾燥した草原、サバンナのような場所を住処としている。鳥取砂丘のような場所には住んでいるというのは幻想だ。


 現実の砂漠に何故生き物がいないのか。それは植物が生えていないからである。なぜ植物が生えていないのか。それは水がないからである。地球上に存在するほとんどの生き物は生存に水が必要である。よって砂漠に生物の多様性を生みたいと思うのならばどうやって生き物に水を供給するかということから考えると生態系を作りやすいだろう。もちろん植物をわっさわっさと増やす方法もあるが、植物がわっさわっさと生えている砂漠はもはや砂漠ではないだろう。

 現実の砂漠でも生物が豊富な場所がある。それはオアシスである。広大な砂漠の中にあるオアシスのような場所にはカエルやハエなどの小動物が集まり、更に大きなオアシスともなるとその周りに人が集まり街ができることもある。ヤシの木が生えていて清浄な水をたたえているオアシスは現実世界には存在しないが、一般的な読者に取ってはそれが真実である。そのオアシスという語感を保ちながらどのように絵になるオアシスを作り出すかというのが空想生態系ビルダーの腕の見せ所だろう。オアシスの作り方としては外から水を持ってくるのが確実で発想を飛ばしやすいだろう。

 何もなしにオアシスが存在するわけではない。何らかの手段で砂漠の外から水を持ってこられオアシスが誕生する。現実世界でも1年に1度の雨に頼り切っている生き物はたくさんいる。この雨を少し改変してみた例としては、二つの巨大な草原を行き来する草食獣の群れ、だがその草原を行き来する道中には広大な砂漠がある。数万を超える群れは犠牲をだしながらも草地を求めて砂漠を超える。その群れに頼り切った生態系がそこには存在する。臓物を食べた後、分厚い毛皮を持った草食獣の皮をかぶり、またその草食獣の群れがくるまで砂漠の厳しい気候を乗り越えるため夏眠する肉食獣や、草食獣の死体を巣穴に貯める巨大な腐食性昆虫、卵で厳しい時期を乗り越え群れがくるときに羽化するハゲワシなど。草食獣の群れではなく更にファンタジー感を増す形を取るなら、水をたたえた巨大なドラゴンが渡りをするときにだけ砂漠が潤い草花が咲き乱れ、生物が活動をするというのも良いだろう。これは雨季の擬動物化となる。

 また潮風も雨の代替品として使うことができる。昼間は硬い葉で覆われた殻の中で共生している藻類に光合成をさせ、現実世界の現実世界の海中に存在するウミシダのような触手を硬い穴から出し潮風から水分を補給する生き物に、その殻を砕いて中の本体を食べる特殊な歯を持つ肉食動物など。

 逆に現実に近いものとなると地下水も砂漠に水を導入する手段となる。地下水まで根を伸ばす巨大な木の周りでのみ存在する生態系。南米に生息する葉っぱを切ってキノコを育てるアリのように、地下水を運び植物を育ててその根を食べるモグラや、近親交配を避けるためにはるか彼方の大木の元へ死ぬ気で移動するサルなどもストーリー性が生まれて良いだろう。大木の樹冠や幹、根など様々な場所に暮らしている生き物を描くことで砂漠ながら一つの森林のような多様性を描くことができる。


 最後は水が必要ではない生物を作るというものだ。もちろん知的生命体を含む全ての生物が生存に水を必要としない世界とすることにより非常に独特な世界を描くことができるが地球上の生態系とは全く違うものとなるため生態系を構築するのは非常に難しいものとなるだろう。それにわざわざ砂漠の生態系を描くために他の地域の全ての生態系の設定を変更するというのも面倒だろう。水を必要とせず、むしろ水が劇毒となるような生物を描くことで砂漠特有の生物感を演出できる。じめんタイプはみずタイプに弱い。

 この水を必要としない生物を描くことで問題になるのが、どの程度までファンタジー感を自分自身が許容できるかということだ。ファンタジー感マシマシ世界の生態系ならば砂漠に砂を食む牛がいて、それを襲う狼などがいても許容される。無機物を取り込んで何故有機物が生まれるのかという小難しい問題も描く必要がない。そういう不思議な生き物なのだといってしまえばそこまでだろう。だが例えば砂を大量に食べることで砂の中に微妙に含まれている鉱物を自らの体とする鉱物馬が地球を模した生態系の中にいたとする。馬は他の一般的な生物とは全く異質な存在であり、世界の中では浮いた存在となってしまっているだろう。これはその世界のファンタジー要素が薄ければ薄いほど顕著になってしまい、その世界の生態系が詳しく決められていれば決められているほど違和感を生み出してしまうだろう。鉱物馬を襲う鉱物狼、鉱物狼の死骸を砂に還元する鉱物ハエなどをだしてしまってもいいが、その生態系のスパイスとなるような1発ネタ生物はともかくそのような生物を量産するのは耐え難いというのが空想生態系ビルダーだろう。もちろんその力量があるのならば創り出しても良い。それをするのも貴方の自由だ。


追記

野生のロバやウマは浅い場所にある地下水を2mも掘って井戸を作るらしいですね。そしてその井戸を様々な生き物が利用するんだと。まだまだ現実には勝てませんね。

大分前に書いたけど何となくしっくり来なかったものを色々改稿して何とか体裁だけ整えました。お読みいただきありがとうございます。


ウマ娘面白いね。馬がいない世界って奇蹄類もいないのかな?それとも馬だけがスッポリといなくなっているのかな?

人間が勢力を拡大でき、今の国家を作り上げた要因の一つが馬だと思うのだけれども、それが全てウマ娘になっている世界では現実とは全く違う世界が広がっているのではないか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 水をたたえたドラゴンの渡りに鉱物生物と、発想が面白いです。
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