297話
なにやら仕事っぽい。仕事してるっぽい。そんなワクワク感がハイディを包み込む。
「それでかまいません。できるだけ厳しく」
もし見つからなかったらそれはそれでいい。急ぎでなくていい。本当に良いものを見つけたいから。しかし同時に、収穫なしだと手伝ってもらっているお二人に申し訳ない。でもやっぱり妥協せず。両者共に意見が重なった時のみ。
もちろん、知識がないわけではない。経営していることもあり、幼い頃からピアノに触れる機会はあったし、今でもそう。だが、自分がいわゆる『そうではない』と早い段階で気づけたのは僥倖、なのかもしれない。経営に集中できるから。
てくてくとゆったりとした足取りで店まで向かう一行。音楽街。楽器はお金がかかる。チラッと子供に視線。
「しっかし、ピアノなんて高いものを自分の子供に選ばせるとはね。本当に大丈夫なのかねー」
そういえば、どっかの金持ち貴族様は、息子に貴重なピアノを独学でいじらせてたっけ。そんなことを思い出した。金持ちはピアノに対してどう捉えているのだろう。
そしてカルメンもそれに同意する。
「それは思った。知ったことじゃないけど」
自分の懐が痛むわけでもないし、こっちとしてはピアノを弾く場所が増えるのは歓迎だけど。学園があるためスタジオなどは借りたことはない。
歩きながら、現状を取り巻く環境についてハイディは説明。
「ピアノ販売は斜陽産業ですからね。でも弾き手が減るわけではない、むしろ高齢になるにつれて趣味として始める人も増えてきていますから。スタジオを続けていくためには、私も責任を持っていきたいんです」
様々な物価が高騰していく昨今。もちろんピアノも木材や人件費などが上がっていく一方ではあるが、そうなると無料で楽しめる動画などに人々は流れていく。その中ではピアニストの演奏も増えていく。




