表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
メイソン&ハムリン『CC』
196/322

196話

 クリスマスが近づいてくるこの時期は、ショーウインドウに赤緑白の配色のものが増えてくる。その店も例に漏れず、製菓がその三色をベースとしたカルトナージュ、つまり装飾された箱に詰められたものがディスプレイされ、キュートかつエレガントに客を引く。


 店内中央にはU字型にショーケースが並び、そこにはマリトッツォやズッコットなど様々なスイーツ。内側にいる店員に注文をすると取り出してくれ、料金はその場で支払うイタリア方式。なのでカフェよりかはバールと言ったほうが近い。


 イタリアでは、イスのないカウンター席かテーブル席かによって飲食店では料金が違うところが多い。回転を重視したこの店は、壁の柱と柱に木製のカウンター席を取り付けてあり、テーブルはテラス席のみ。店内は全て立って飲食を行う。それをここパリでも。


「メイソン&ハムリンてのはね、厄介なのよ」


 その壁沿いのカウンター。言い終わりにバーチ・ディ・ダーマ、要約すると『貴婦人のキス』を意味する、ショコラをクッキー生地でサンドした北イタリアの郷土焼き菓子を強く頬張るサロメ。ひと噛みごとにストレスが甘さに緩和されていく。


 ショーケース前で注文を待っているかのような人々も、手にエスプレッソとソーサーを持ち、たっぷりの砂糖を入れたそれを二、三口程度で飲む。そして出かける。適度に混んでおり、スイーツをテイクアウトしていく人も多い夕方の時間帯。


 イタリアの北や南といった地域が変わると、カップや嗜好も変わってくるほどに奥の深いエスプレッソ。ラテアートはすでに崩れてしまったが、気にせずチビチビと飲みながら友人のファニー・ダリューもキスのおこぼれをもらう。


「ふーん。あんまり興味ないけど、一応聞いてあげる。どんな?」


 ふわふわとしつつ、適当にいなす。どうせ聞いてもわからないだろうし、それよりも甘いものを食べにきたのだから。もう一枚。


 自身が注文し、お金を払った焼き菓子が減っていくのを横目で見つつも、気にせずサロメはそれについて会話を広げていく。


「二〇世紀初頭に廃止されたんだけど、その当時のピアノはチューニングピンがない。スクリューを回して張力を調整して調律してたってわけ」


 通称スクリューストリンガー。世界中の調律師のほとんどが、一度も目にすることなく生涯を終えるであろう特殊な調律法。通常のチューニングハンマーではなく、スクリューレンチで回して張力を調整できるため、わりかし簡単にいじることができるのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ