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第九十一話 ホネ喰いの前に、晒す屍(ホネ)はない ~レイン編・後編 ~

 最新話・レイン編です。


 今話でレイン編も終わり、次回からはマオ視点に戻ります。


 3月23日 誤字の修正をしました。

 魔坊の武器が生み出す効果(超空腹(ハラペコ))に背中を押されながらも、目の前のホネどもを喰らい続けた。


 空を飛ぶホネを口で捕らえる。



「────濃厚でアッサリじゃとぉぉぅ!?」



 今までに喰らってきた雑魚ホネが数段、いや数十倍近く美味くなった事により食欲は暴走した!!


 急かされる様に、次のホネに手を伸ばす。



「────こっちは、濃厚な深みじゃぁぁぁ!!」



 いくつかのホネを食らう事で分かったが、この場所は『祭り会場』としかいえん。


 ホネが変わる毎に、様々な味のが襲ってくる祭りじゃ!!



 ──ワシにとっては、元からその通りなのは秘密だのぅ。



 次々と舌を襲うバラエトゥー()の豊富さに、空腹感が治まる気配などない!(元から暴走気味)


 アッサリ、コッテリ、濃厚に……ワシの舌を楽しませる『ユー園地ぃ』の回る羊のようじゃ!!(羊じゃなく、『馬』じゃないでしょうか?:byマオ)


 空腹が満たされぬのは仕方がないとしても、この『多幸感』を誰とも共有出来ぬ事実が残念極まりない! コ坊に仕込むか?



 ■ □ ■ □ 被害者は震え上がった □ ■ □ ■



 不穏な事を目論むレインの気配を敏感に察知した当のコカは、


「はうわぁぁぁぁっスぅ!!??」


 全身に鳥肌を立て、真冬の寒空で震える人のと変わらない姿をしていた。


「ど、どうしたのよコカ!?」


「とっても嫌な余寒(予感)が襲ってきたっス!!」


「間違いなく、お爺ちゃんが原因ね」


 顎に指を添え、名推理を披露した探偵の様なキメ顔を披露するキルステと、悪寒に襲われて騒ぐコカがいた。(余寒は誤字じゃないです)



 当然、その事を知らないレインは叫んでいた。



「美味いものを他人と、語り合いたいぞぉ~~!!」



 色々と、本音が漏れ出している様だが……


 あまりの旨さに、意識が飛びかけているのかもしれない。


 当然、遠くからその姿を見ていたキルステに『お爺ちゃん、眼から光を出すなんて人間を辞めているわよ?』と言われて、どういう意味じゃろう? と首を傾げていたのは蛇足だ。


 さらに、『当時のレインの姿』がもたらした影響についての話も出た。


 レイン本人は疑問に思ったであろう事は、『悪鬼羅刹道』に他人を巻き込む【悪鬼】と言われた事かもしれない。


 ただ本人は、美味いホネの感動を他人と分けあいたいだけだったのかもしれないが、『美味いものを他人と、語り合いたいぞぉ~~!!』という叫び声が曲がって伝わった可能性が非常に高いのは分かるだろう。




 □ ■ □ ■ レインは餓えていた □ ■ □ ■



 グッキュルルゥ~


「────強い。そして、美味そうなホネの匂いじゃ……」


 崖の上に鎮座するボーンドラゴン(ホネトカゲ)を見上げ、出てきた感想がその一言じゃった。


 兎に角デカく、ず太いホネ。


 それは、ぶっとくて、大きくて、芸術性とはかけ離れた禍々しさを放ち、周囲を満たしておる。


 他のプレイヤー(他のヤツ)にとっては恐怖を与えるモノだが、ワシにからすれば"香しい匂い"を周囲に解き放ち、空腹感を煽ってくるだけでしかないがのぅ!!



『────────』



 周囲には誰も(ホネ以外には)おらんのだが、何となく注意を引かれた気がしたのは──気のせいじゃろうか?


 その答えは、周りを見回して分かった。


 それはあまりにも細っこい、ボロ布を纏ったホネじゃ。


 頭上で輝く、冠っぽいモノが泣きそうな姿じゃのぅ。



『────貴様が、あの群れを率いる長か?』



 前触れもなく聞こえてきた声は、しゃがれてガラガラで、枯れた感じのする声じゃった。


「────なんじゃあ??」


 耳に聞こえた──というより、直接頭の中に直接響いた様に感じたのぅ。


 電話とは違う感じがするのぅ。


 耳をトントンするが、耳詰まりはしておらんな。


『──惚けるか。まあいい』


「(何を言っとるんじゃ? コイツは??)」


 冠を着けておる事から、ホネたちの"王"かもしれん。


 見間違いとかと思い確認していたワシを見て、勝手に納得するボロ布ガイコツ(冠付き)じゃが、会話は長くは続かんだ。


 コヤツ(ホネ王(レイン命名))に膨大な魔力が集まり始めたからじゃ。


 ワシが戦ってきたホネたちからは感じなかった、圧倒的な『圧力』を伴った魔力。


『我が復活の序曲、将である貴様の()を糧とし、派手に飾ってくれようぞ!!』


 偉そうな事を言うホネ王に対して、ワシは『将? なんの事なのじゃ??』と混乱させられてしまった。


 コ坊とキルステのおらぬワシは『そぅろ(ソロ)』と呼ばれる立場だったはず……


 まさか!! ワシは気付かぬうちに『将』へと昇格したというのか!?


 これはあれか? なんじゃ……そう! "レアイベントゥ"というヤツなんじゃな!!


 これに乗り遅れてはいかん!!


「──有象無象にくれてやる首なぞないぞぃ!」


 そう言葉を返すワシの口角は、口裂け女の様に凶悪かつ狂悪につり上がっているか見知れん。


 昔、妻から『私としては頼もしいですが、些か他の方は恐怖を感じるかも知れませんのでお控えくださいね?』と言われた表情じゃからのぅ。


 その妻が『頼もしい』と言った狂った笑顔(笑顔)でヤツに言葉を返すと、ビクッとホネトカゲと共に肩を震わせてた。



 ───何故じゃ?



 疑問は残るものの、空腹感は待ってはくれぬ。


 さっきから五月蝿いくらいに『ぎゅ~ぎゅるる~』と大合唱をしている"腹の虫"。


 空腹を抑える本能は、限界を通り越して求めておる!


「貴様がワシを糧とするというなら、ワシも貴様を糧としよう」


『それが戦場の習いだ──いけ! スケルトンどもよ!!』


 ワシたちの戦いの火蓋は、切って落とされた。


 ただ1つ──ワシが感じたのは、コヤツの魔力は『魔坊より少なくないか?』と言うことじゃ。



 ■□■□■□キルステは観ていた■□■□■□



 魔王様から貰った望遠鏡で、私はお爺ちゃんの戦いを観ていた。倍率がおかしいのは言うまでもないわね。


 普段からズレた部分のあるお爺ちゃんだけど、このゲームを始めてから輪をかけてハジけた気がするわ。


 魔王様も理不尽な存在だと感じていたけど、ウチのお爺ちゃんも十分に理不尽な存在だと、現在進行形で理解させられいるから……



「百対一で優勢どころか、圧勝しているんだけど……」


「変な言い方ッスけど、お嬢は目の前に『噂のスイーツ』があったとして、我慢できるッスか?」


「変な喩えはやめてよ。納得しちゃうじゃない」



 ──甘いモノと可愛いモノはマイ・ジャスティスよ!!



 隣で話しかけてくるのは恋人のコカ。


 普段からお爺ちゃんに巻き込まれているだけあって、生存能力だけは軍人クラスで持っていそうな愛しい男。


 魔王様と出会ってからの数ヵ月は"絶叫"しか聞いていない気がするけど、毎日を楽しんでいるのは知っているわ。


「それにしてもお嬢、師匠──暴走していないッスか?」


「暴走している──いえ、狂走しているわね」


 おばあちゃんから話で聞いた事がある、おばあちゃんが愛した漢の顔。


 それは周囲を恐怖で圧殺する【狂帝の狂喜】といわれるモノらしいわ。(おばあちゃん命名)


 その笑み1つで、紛争地帯の敵軍を退かせたと聞いたときには『作り話でしょ?』と返したけど、真実だったとはね……



 ──恐れ入ったわ、おばあちゃんのノロケ話じゃなかったのね。



 完全に安全地帯となった場所からの『高みの見物客』と成り果てているのは、私を含めた周囲で戦っていたプレイヤー全員。


 あの中に混ざるのは死ぬ様なモノよね。


 それよりも心配なのは──


「お爺ちゃんの2つ名が──変わりそうね……」


「──否定、出来ないッス」


 私たち2人は共通した感想を抱いていた。


 だって、ノーライフキングの腕を口で咥えて、遠心力を効かせたピコハンの一撃をボーンドラゴンにくらわせている様子を見せられて、それ以外の感想は浮かばないわ……




 ■ □ ■ □ レインを襲うのは…… ■ □ ■ □



 ホネ王の放った魔法でダメージを受けると身構えたが、覚悟していた衝撃はなかった。


 何が起こったのか考える前に、ワシは地に膝を着いた。


「おふろぅ!?」


 ぴこはんを持った時に感じた空腹に近いが、あの時より遥かに激しい虚脱感に襲われたのじゃ。


 そのワシに聞こえたのは【あなうんす(天の声)】。


 〈ピコピコハンマーはある一定条件(・ ・ ・ ・)を満たしましたので、【魔王様にも秘密♥️(マオ・シークレット)】が発動いたしました。

 〈超特殊スキルマオ・カタストロフィー〉【食欲の大暴走(もっと、喰わせろ!!)】を強制発動いたします〉


 ソレが何かを確認するまでもなく、ワシは見上げていたホネ王に飛び掛かっていた。


「ギザマを……喰わゼろ────!!」


 意識はハッキリしておるが、抑えきれない衝動に突き動かされて思いっきりぴこはんを振り下ろした。


 ホネ王が焦った様に「ちょっと! 人格変わってない!?」と騒いでいた気がするが、聞き間違えと言う事にしておこう。


 振り下ろされた一撃をホネの様な杖(細っこいモノ)で防いだホネ王じゃが、そんな軟弱な棒でワシの攻撃を防ぎきれる訳でもなく、真ん中から真っ二つに折れた。


 ついでに、転がる様に遠くまで飛んで行ったわぃ。


『何が、どうなって……』


 何やら呟いておるようじゃが、今のワシには『目の前のホネを食らう事以外』はどうでも良くなっておる。


「ホネ……喰う…………」


 喋るのも怠くなってくる身体(バデイ)


 それを好機とみたホネ王の命令により、ワシに向かってくるホネども。


 その行動は一概に、悪手とは言えないじゃろう。



 ──"今の"ワシが相手じゃなければ……だがのぅ。



「HO~~Neeeeeeeeeeee!!!!」


 腹の底からの雄叫びと共に放つ、それは向かってきた数十のホネを一瞬で滅ぼし食い物(ホネ)と化した。


 宙を舞うホネがキラリと輝いたと思えば、雄叫びにより大きく開いた口に吸い込まれていった。


 ゴクン。


 それを呑み込むと共に身体(バデイ)を満たす充足感。


 充足感はあるのじゃが、より強く『空腹感』を感じるのは何故じゃろう?


 もっと寄越せ! もっと喰わせろ!! 目の前のホネを喰らい尽くせ!!!


 そう胃袋が(はや)し立ててくる。


 その声なき訴えに急かされて、ワシはぴこはんを振るう。


「もっど、もっどよこぜぇぇぇぇぇぇ!!」


 本能だけで動いている様だが、意外なにも冷静な部分もある。


 テレビに映っている自分を観ている様に感じでいる、今のワシの状況の事じゃが……




 気付けば、いつの間にかホネ王の腕に噛み付き、振り回しているワシがいた。


 何がどうなって、こうなったんじゃ??


 訳がわからない中、1つ分かったことは『ホネ王、意外と美味しい!?』と言うことじゃった。


 喰いでがなさそうな外見の癖に、ホネどもより数倍は旨い!!


「ぶんがらがっちぃぃぃぃ!!」


 バギャン!!


『噛み付きで人のホネを喰いちぎるな~~』


 いつもより強くなった『噛む力』が、ホネ王の腕を噛み砕いた。


 回転しておったからヤツめ、吹っ飛んで行ったわい。


 そうなるってくると近くにいるのはボーンドラゴン(ホネトカゲ)のみ。


 全速力で飛び掛かり、振り下ろしたぴこはんで翼をへし折るとそのまま喰らう。


 口一杯に広がったのは──



 ──甘美な瞬間じゃった。



 あまりの旨さに頬は垂れ下がりそうじゃ。


 そして、当然のように空腹感が強くなる。


 両方の翼をへし折ったら、次は両足を喰らい機動力を落とす。


 多少、暴れられたが、尻尾の先から少しづつ喰っていく。



 尻尾は濃厚じゃが、スッとなくなるアッサリ系。



 腰骨はギュッと濃縮された深い味わいじゃが、くどさはない。



 背骨は1つ毎に若干変化し、アッサリとマッタリが混同している感じで、多いときには数回の変化があった。



 胸はサクサクっとした食感で塩っ気がある『ぽてちぃ』に似ておる。



 ──そして、頭は『旨い!!』としか言えん。




 語彙のなさに嘆きたくなるわぃ……


『貴様──!! よくも我が相ぼ……』


 何か叫んでいたホネ王の頭を砕く。


 この時になって暴走していた本能が落ち着いてきたのじゃが、腹はまったく満たされておらず、近くに転がっていたホネ王の足から噛み付いた。


『*]@^#×→&^≧*]〉■^<□*×#◯^]#<→《*>!!』


 ビクンビクンっと跳ねるホネ王をピコピコと叩きながら、いつもより味わいながら食べていく。




「げぇぇぇぇぇっ、ふぅぅぅぅ……」


 ホネ王のすべてを喰い終わったワシは、久方ぶりの満腹感に包み込まれていた。


 何? 食後のゲップは下品じゃと??


 少しは大目にみてほしいのぅ。


 あの空腹感は、実際に味わってみんと分からん辛さがあるんじゃ。


 食後のお茶を飲みながら、のんびりと先ほどの事を考える。


 おつまみには、ホネを添えて。



 意識が乖離する直前に聞こえた"〈ピコピコハンマーはある一定条件(・ ・ ・ ・)を満たしましたので、【魔王様にも秘密♥️(マオ・シークレット)】が発動いたしました。

 超特殊スキルマオ・カタストロフィー食欲の大暴走(もっと、喰わせろ!!)】を強制発動いたします〉"という声。



 あれが善悪関係ない(・ ・ ・ ・ ・)存在(・ ・)であることは、過去の経験から知っておる。


 色々とヤバい代物であることは経験させられたが、おそらく魔坊に聞いても『何も分からん』じゃろう。



 天の声も言っていた様に【魔王様にも秘密♥️(マオ・シークレット)】である以上、その存在を理解できるのはワシしかおらんかも知れんのぅ……


「まったく──魔坊とつるむと、愉快痛快なイベントゥがモリモリじゃのぅ~」



 ──仕事を息子に譲り、暇をもて余した老人には丁度よいか。



 しかし──〈超特殊スキルマオ・カタストロフィー〉の様なスキルの存在を運営()は知っておるのか────知らぬ、とみた方がいいかもしれんな……



 考え事をしていたワシの耳に、聞きなれた声が届いた。


「お爺ちゃ~~ん!」


 駆け寄ってくるは、最愛の孫娘。


 その顔には【呆れ】が出ておる気がする。


 不可抗力じゃて、魔坊も知らぬ『何か』であったのじゃ。


 その後ろを駆けてくるコ坊を見て、さっき経験した感覚を生かした道具を、魔坊と共暴作業(一緒)に作ってみるか? と考えておるとコ坊め、器用に飛び跳ねて青い顔になりおったわぃ。



 さて、モノ作りの為に、街に帰るとするかのぅ。

 どこに向かうの?? レインさん!?


 圧倒的な"非常識スキル"を携えたレインの明日は、マオにも見通せないでしょう(笑)


 誤字・脱字がありましたら、ご報告をお願い致します。

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