第十六話 ありえない生産職
皆様のおかげでブックマークが100件突破いたしました。心よりの感謝をいたします。
今話で、マオのもう一つの『ありえない』が伝われば──最高です!
今回、章分けを致しました。
皆様に今後とも『ありえない生産職』をよろしくお願いしたします。
6月16日 誤字の修正をしました。
6月17日 誤字の修正をしました。
6月22日 誤字・脱字の修正をしました。
7月20日 誤字の修正をしました。
【プレイヤー ガンツから『決闘無制限・無時間』を申し込まれました。 受けますか? Y/N】
ボクは迷わずに【Y】を押しました。
「「「──ホンモノのバカがいる──」」」
ユウキたちが何か言ってますが、無視します。
「くたばれぇ!! クソガキが!! 『ラッシュブレイク』!!」
ガンツが先手必勝とばかりにボクに突っ込んできます。左半身を狙った攻撃を、左足を引くことで回避します。
ダゴォォォォンンン!!!!
「バカですか!? 相手の体勢も崩さずに、スキルが通用するはずがないでしょう!!」
ボクはガンツの右肘を下から、ブーツで蹴り上げます。
ベキィン!
【アームブレイク ガンツは回復するまで、右手で武器を持てません】
システムの無機質な声が、フィールドに響き渡ります。
「ガアアアアアアア────」
醜い叫び声を上げます。
「愚か者が!! 戦闘中に相手から意識を逸らすのではありません!!」
ガンツの左の横っ腹に右手の掌底を打ち込みます。ガンツの体は少し浮き上がり、倒れ込みます。
「う゛う゛う゛う゛う゛…………」
現実なら吐いているのでしょうが、ここは仮想世界……そのような機能が付いていないのを、感謝しないといけませんね。
ボクが近づいても、ガンツは動こうとしません。笑顔でガンツに近寄ります。
「ダメでしょう? 無防備に地面でうずくまっていては……」
「────m────」
ガンツが何かを言い掛けていましたが、蹴り飛ばしてしまった為、何を言おうとしたのかわかりません。──が、気にしなくてもいいですよね!
「何ですか? ──降参でしたら、認めませんからね(笑)」
そう言いながら、ボクはアイテムボックスから上級回復薬(仮)を取り出して、ガンツの口に突っ込みました。
効力がポーションの数倍に跳ね上がっていますが、不味さは十数倍の回復薬です。正直口に入れることなんてしたくないです。
「──;+|^#%$’”^+_>|;”」
ガンツが何か騒いでいますが、まだ調教中です。当然──最後の一滴まで飲み込ませます。
そのとき、周囲の声が耳に届きます。
「おい──『ラッシュブレイク』ってLV10で覚える……最速系のスキルの一種だよな──?」
「──ああ。モンスターですら、回避するのが難しいスキルのハズだ──」
「──ちょっと待てよ! アレ簡単に避けてるぜ!?」
「──そんな事は──不可能だろ?? フツー避けられるのかよ──」
「──ヤッパリ、コウナリマシタ……」
「──ツエェェェ!! 最高!! 最強ロリっ娘だ!!──」
「────御姉様─────ぽっ」
「──我慢ならん!! 踏まれたい!! あの御御足で! フミフミされたい──」
何なんですか!? 特に最後の方は!!?? 完全に変態人たちは──!
しかしボクは──この人たちに、トップの攻略組の一人と思われていたのを──最後まで気付けませんでした……。
びくん! びくん!
ガンツが痙攣しているのに──やっと? 気付きました。
「──このリアルワールドは、泡を吹くことも出来たのですね──」
ボクはリアルワールドについて、感心していました。ガンツが泡を吹いたことよりも、『上級回復薬(仮)がとてもマズいこと』にですが──。
「──さて、いつまで寝ているのですか?」
軽く往復ビンタを行っているのですが、ガンツのHPが目に見えて減ってきています。一往復で大体、二%くらいでしょうか?
それを目覚めるまで、五往復くらい叩いたので一割近く減っていますが気にせず行きましょう。
「させてと──『アームブレイク』に関しては、完治したはずです。早く剣を拾い構えてください。
さっさとしないと、此方から攻めますよ──」
言うが早いか、ボクはガンツに向かって走り、間合いの内側に滑り込みます。ガンツに背を向け鎧に身体を密着させます。足元から螺旋状に力を練り上げます。
所謂──中国拳法の一種に似せた『寸徑』擬きです。
バガアアァァァン!!
ガンツの鎧に罅が入ると共に、ガンツ自身は十m以上吹き飛びました。そこに無機質なシステムの声が聞こえます。
【アーマーブレイク ガンツの鎧がロストしました。鎧は戦闘終了まで復活しません】
アームブレイクにアーマーブレイク……新しい単語が出てきました。
「─────そぉ──嘘だ──────」
観客からなのか、ガンツの呟きなのかは分かりませんが、よほど信じられない光景らしいです。
まあボクも驚いてますが……彼の実力にではなく、ボクとVRヘッドギアの信号伝達の差についてですが──。
それから教育という名の蹂躙が始まりました。始まった当初はギャラリーが五月蠅かったのですが、段々静かになり、誰も喋らなくなりました。原因は間違いなくボクです。
五月蠅くした方たちに視線で「ご一緒しますか?」と語るだけで静かになりました。
ガンツに対する調k──ゲフン、教育を淡々とこなして行きます。
「──さて、あまり時間をかけても、迷惑です。この辺で許してあげましょう──」
そう言うとガンツから来ていた『降参申請』を受け入れました。
彼──ガンツが名実ともに、トッププレイヤーになったのは、ボクの預かり知らぬ事です。彼は後に新人プレイヤーたちにこう言ったそうです。
『ドラゴンと戦うのは、マオ様と戦うことに比べたら天国である! 決して怒らせてはならんぞ!?』
そんな事を力説されるとは、この時のボクには知りようもありませんでした。
「──ミイ、終わりましたよ。それでは──遅くなりましたが、買い物に参りましょうか?」
ボクはミイを連れてギルドを出ました。
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マオたちが出て行って、十分が過ぎた頃……ギルド内は混乱に包まれました。
「──予想以上……いや、予想外だな──」
「そうね──マオがVRに慣れるのも、早すぎだしね……」
「確かにね~。あれで生産職特化なんだから、コッチは自信なくしそうね──」
「「「「「──なにぃぃぃぃ!!!!!!!!」」」」」
ギルド内で残っていた面々が叫ぶ!
「それは本当かい? ユウキさん──」
「そうだぜ……信じられないけど、<戦闘系スキル>は何一つ修得していないはずだ──」
ユウキに話しかけた巨漢の男は、言葉を失った! まだ彼が前衛系だったなら、これほどのショックはなかっただろう──。
「──ありえない──生産職……じゃねえ」
その心からの言葉はギルド内の全員の気持ちを代弁していた──。
十六話でのステータス
マオ SP3
<木工>LV10 ↑4
<調合>LV12 ↑5
<鍛冶>LV3 ↑1
<細工>LV2 ↑1
<魔法才能>LV11 ↑3
<錬金術>LV3 ↑2 <NEW!
<裁縫>LV5 ↑4 <NEW!
<合成>LV4 ↑3 <NEW!
<罠士>LV7 ↑6 <NEW!
<道具士>LV6 ↑5 <NEW!
ミイ
<弓>LV8
<鷹の目>LV8
<隠密>LV3
<鑑定>LV8
<調教>LV1
<精霊魔法>LV5
<魔法才能>LV6
<付与>LV4
<MP回復力上昇>LV3
<発見>LV5




