39話
再度のジェイドの要求を、惑わずにオードはシャットアウトする。なんとなく、こいつは信用できない。いや、この図々しさを信用するほうが無理。人のいい両親に取りいっても、疑り深い自分は首を縦には振らない。
「いいじゃないの、これも練習だと思って」
そうリュドミラは嗜めるが、オードの意思は強硬だ。
「よくない。正式な手続きを取ったならともかく、この子の遊びに付き合うほど安くない」
一気にヴァンショーをかきこんで、オードはリビングに付随している台所のシンクにカップを持っていく。そのまま自室へ行こう。そして寝る。シャワーは明日の朝にでも浴びればいい。こいつは別に泊まってもいいけど、部屋には入ってこさせない。
「遊び、ねぇ」
俯きながら言葉を口にしたジェイドは、リビングから出ていこうとするオードを引き止める。そして耳打ち。
「ますます気に入った。その妥協しない姿勢、ぜひ手伝ってもらいたい」
言われ、落胆のため息をついたオードは抗う。
「あんた、話聞いてた? パートナーとして、こんな信頼関係でどんなもんが出来るってのよ」
仕事は信頼関係が第一だ。相手の求めることをしっかりと把握し、自分にできる役割を全うする。それでこそいいものが出来上がる。そういう意味では、今の関係性は最悪だろう。一方の押し付けでまかり通ることはない。
しかし、ジェイドは確信があるのか、全く意に介していないようで、顔を近づけてオードと目を合わせる。本来なら使いたくはない手だったが、もうこの際どうでもいい。情報漏洩とか知らん。たぶんバラさないだろう、この両親なら。
「私がどんな人間でも、キミは作るとなれば手は抜けない人間だ。となると、正式に手続きを踏めばいい」
そして、ステファンの方を向き、笑顔で仕事の依頼をする。頑ななオードに少し苛立ちを覚えながらも、自分から無理矢理頼んだわけで。そこは仕方ない。こっちが折れよう。
「ということで、注文をお願いしたい。イメージはお伝えするので、その通りに」
呆気に取られたステファンだったが、意識を取り戻し、それに応じる。
「あ、あぁ。じゃあ私が——」
と、代わりに受けようとするが、ジェイドはオードの肩を叩く。
「いや、オードがいい。むしろ、彼女であるからいい」
「?」
なんのこと? という顔をしたステファンが、「そ、そう?」と了承した。よくわからないが、話はまとまったようでよかったよかった。ねぇ、ママ? とリュドミラの方を向くと、お互いアイコンタクトで会話する。似たもの夫婦。
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