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288話
面白そう、ではある。しかしアニーはそれを断固として拒む。
《それはユリアーネさんにお任せです。ボクはやっぱり紅茶っスねぇ。コーヒーも悪くないんスけど……紅茶がある限り、それは揺るがないです》
遺伝子レベルで刻まれた紅茶の香味。絵本を読み聞かせしてもらうよりも、香りに包まれるほうが眠りにつけた。ならもう、それは一生ものでしょう。
ふぅ、と息を吐きつつ、ジェイドは改めて彼女の意志の強さを知った。
「そうだね、変なことを言ったね。すまない。なにかいいアイディアが思いついたら頼むよ。それじゃ」
《はいっス。色んな人に聞いてみるっスー》
というアニーの声を最後に電話を切る。静寂が室内を支配する。
「……心強いというかなんというか。不思議と『頑張ろう』って気持ちにさせてくれる。同時に、怖さもあるね」
真っ直ぐすぎて。眩し過ぎて。直視できない。電話なのに。電波なのに。すごいな。正直に、そんな感想が漏れる。
同年代に、こんなにも参考に、そして憧れる存在がいる。自分は幸せ者だ。自慢できる。
「……よしっ!」
ま、とりあえず。ショコラでも食べて。映画でも観ながら一旦落ち着かない?




