286話
しかしそれもジェイドは織り込み済み。助けを求めた理由。
「だからいいんだ。固定観念というかステレオタイプというか。そういうのはないほうがいいと思っていてね。とにかく他人の力を借りて色々なアイディアを取り入れたいんだよ。というか、今って大丈夫だった?」
思い立って電話をしてしまったわけだが。時差はほとんどないとはいえ、向こうも働いている身。今更ながら。
しかしアニーにも問題はない。むしろ、数日ぶりに話せて嬉しい。
《全然大丈夫っス。ユリアーネさんもいますし、前回みたいに紅茶とコーヒーからも探ってみようかと。こっちも刺激になりますし、楽しそうっスねぇ》
新メニューの開発も兼ねて、こういった意見の交換はありがたい。色々と案だけは出るのだが、決め手にかけるものも多い。お互いに共通するところとメリットがあり、なにより楽しい。
ふふっ、と自然にジェイドの笑みが溢れる。そして「そういえば」と話題の切り替え。
「クルト氏との件はどうなったんだい? こっちとしても楽しみだよ。ドイツの天才ショコラティエの新作。期待するなというほうが難しい」
たしかに新メニューや近況なども気になるが、彼女達のカフェ〈ヴァルト〉についても気になる。なにせあの憧れのショコラティエのひとりとコラボすることになったのだから。
クルト・シェーネマン。ドイツのベルリンにて自身のショコラトリーを持つ、今注目の若手ショコラティエ。食に関することとなると、審査がかなり厳しくなるフランスの国家職人章、通称M.O.Fを獲得しているほどの人物。斬新なものからシンプルなものまで、ありとあらゆるショコラで魅了する。
その人物と〈ヴァルト〉が手を組み、期間限定で販売するとのこと。アニーやユリアーネの友人としても嬉しいこと。気になる。そして食べてみたい。いつなのだろう。そわそわ。




