271話
人の流れ。車の流れ。右から左。左から右。車道。そして横断歩道。ここでジェイドの思考が繋がる。
「ともかく、そのビートルズだよ。想像通りの。オノヨーコと結婚したり、銃で撃たれたりしたジョン・レノンの」
「サッカーで有名なリヴァプールの。マッシュルームカットとか。あの」
ロックバンドは数あれど、三つ名前を挙げてみろと言われたら、まず自分でも挙げるとは思う、とオードにもその概念が伝わる。もちろん全盛期に生きていたわけではないけれども、それでも名前は知っているし、何曲かは口ずさめる。よく考えたらすごいこと。
あいにくの曇り空を見上げながら、ジェイドは目を細めた。
「そうそう。どんなアーティストかと思っていたんだけど、これは責任重大だ。下手なものを作れば世界中から非難されるかもね」
個人的にひっそりと作っていればバレないだろうけど、かのギャスパー・タルマが関わってくるとそうも言っていられない。イギリスでも売るのかな? それもわからないけれど、全世界にファンを持つ。自分もそうなりたい。
今のところ、まだ夢現、といったところ。それがどれだけの影響があって。どれだけの反響が生まれて。どれだけの覚悟が必要なのか。わからないまま飛びついてみた。スポーツの世界でも、高額な移籍金で有名クラブに入団する際はこんな感じなのだろうか。楽しみと怖さ。
「ハイリスクハイリターンねぇ。で、なんの曲? 『レット・イット・ビー』とか?」
まずオードが口ずさむとしたらそれ。あるがまま。ショコラもカルトナージュも、どんな形になっても許されそう。だってジョン・レノンが言ってんだから。ファンも口を挟めないでしょ、きっと。
最初はジェイドも同じ答えにたどり着いた。無意識に脳内で再生された。というか、多くの者がそうだろう。もしくは『イマジン』。あれはビートルズというか、ジョン・レノンの曲だけど。




