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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
172/319

172話

 しかし、なんだかその口ぶりにオードは苛立ちを覚える。


《いらん。ないならないにこしたことはない》


「強がるね。次からは用意しておくよ」


 ここぞとばかりに煽りを強めるジェイド。期待に応えるのがエンターテイナー。観客だけじゃなく、共演者も巻き込んで未知の世界へ。


《い・ら・な・い。とりあえずあんたの『虹』、まさかショコラを光らせてる、とかじゃないでしょうね》


 なんかどこかで見たことある、とオードは脳を活性化。光るものを体内に取り入れるというのは少し抵抗はあるが、害はないらしい。科学者らしき人が動画で作っていた。


 ショコラについて意見をもらえたことで、ジェイドも上機嫌になる。


「おっ! いいね! いい線いってる。やはりこの映画はラストの雨のシーンが特徴的だからね。どうしたってそうなる」


 土砂降りの雨の中、街を駆け回るホリー。ずぶ濡れになりながら、最上の盛り上がりを見せる山場。ここは外せない。


 しかし、オードとしては適当に言ったつもりだったものが、的を射てしまったようで、逆に気まずい。


《……まじ? あたしでも考えつきそうなものでいいの? たしかどっか……そう、スイスだかオーストリアだかにそんなのがあったような——》


「素晴らしいッ! 褒めてつかわす、オード。よくぞ調べてきたッ! さすが我が相方ッ! が、ダメッ!」


 進行を奪い取ったジェイドだが、一転して否定。


 持ち上げられつつあったオードも呆気に取られる。


《……あ?》


 というか、ひっそり『相方』って言われた気もしたけど、そこは間違ってる、と訂正しておきたい。


 顔の見えない電波越しに、ジェイドは綻ぶ。


「私は別に『虹』をテーマにしていないよ。それもありかと思ったんだがね、こっちのほうがいいと感じたのでやめた」


《なに? どんなの?》


 こっち、と言われても見えないので、不満が募るオードは詳細を要求する。というか、さっさと答えを言えと。なんであたしとの問答で正解を形作っているのか。


 素直に教えるのもつまらないので、ジェイドはヒントを用意した。


「曲はどこで流れていたか覚えてる? 全部で三回ほど流れていたと思うんだけど」


 映画を思い出すと、朧げにオードの脳に映像が流れ込んでくる。約二時間の作品が五〇倍速くらいで過ぎ去っていった。


《場所……あー……たしか、冒頭と、ギター持ってる時と、エンディング? の三回かな。で、それが?》


 だいたいこんなだった気がする。もう一回くらいあったっけ?


「私が注目したのは冒頭の二分三〇秒間と、エンディングのラスト一分。ここにこの映画の全てが詰まっている、と見た」


 少しずつ自身のショコラへと近づけていくジェイド。『ムーン・リバー』はそれぞれ違いがある。その差。それこそが込めた想い。

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