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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
164/319

164話

 紙コップのアレンジメントを両手で持ってみる。軽い。でも、色々な素敵さが詰まっている。小さく笑い、オードは足元の白く伸びた塊を視野に入れた。


「……この子、メスなんですよ。飼うつもりはないんですけど、名前だけ決めておこうかと思って」


 なににしようか。ずっと考えていた。ビルを見上げながら。橋を渡りながら。シャンゼリゼ通りを見回しながら。やっと決まった。


 うんうん、とリオネルは腕を組む。


「へぇ。じゃあ当然名前は——」


「マリリン、ですね」


 それしかない。異論は認めないと、屈んでオードは曝け出されたお腹を撫でた。


 ……ここまでの流れを一度、リオネルは整理。テーマ。使った花。作ったアレンジメント。


「……オードリー、じゃないの?」


 どう考えてもそっちになるはず。むしろ、マリリンについて描写とか、そんなにあったっけ?


 それについて、オードの口から説明が入る。


「あたしの名前と少し被ってますから。なんか恥ずかしいじゃないですか、自分を呼んでいるみたいで」


 以上、猫の名前がマリリンな理由。自分と似ているから。それだけ。


 え、花関係なくない? とツッコもうとしたリオネルだが、寸前で喉元で止めた。彼女の中で留まっていたものが取れたようなので、なんかもうどうでもよくなる。


「……ま、いっか。悩みは解決したみたいだね」


 それが達成できたのなら、言うことはない。目的は完遂したのだから。


 マリリン、と名付けた猫を両手でワシャワシャとくすぐるオード。そのまま会話を続ける。


「いえ、最初から悩んでなんかいなかったのかもしれません。ただ、色んな人に聞いてみたかっただけで」


 八区まで猫を引き連れて歩いてきて。すごい人に会って。素敵なアレンジメントを作ってもらって。でも、実は映画を観てピンときたもの。それが上書きされることはなかった。だが、自信をもらえた。それだけで来てよかった。


 リオネルとしては、結果的にいい方向へ向かったのであれば、それでいい。参考になった、ならないは二の次だ。


「ならなによりだ。直感より大事なものはない。じゃ、おじさんの出番はここまでだね。あとは頑張って」


 二人ぶんのカップとソーサーを持ち、シンクへ。いい豆だった。帰りに少し持って帰ろう。


 至れり尽くせりな状況に、オードは振る舞いを正す。


「はい、ありがとうございました。エスプレッソも。料金は——」


「いいよいいよ。正式な依頼じゃないし。それもあげる。ここには貸しもいっぱいある」


 少しくらい勝手に花を使ったって問題はない、とリオネルは気にしていない。そもそも全部俺のだし。留守を任せたヤツらが悪い。

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