リンドウ②
リンドウ視点です。
騎士になるためには2種類の入団試験に合格しないといけない。
1つは筆記試験……。
基礎的な学力はもちろん……法律に関する知識も求められる。
法の下に動く組織だからね……。
そしてもう1つは実技……。
何組かに分かれて試合を行い……1位を含めた順位の高いものだけが合格という至ってシンプルな内容だ……。
平等性を欠かさないため……使用できるのは木剣のみとなっている……。
『おい見ろよ……女がいるぜ』
『なんで女が……まさか入団試験を受ける気か?』
『ハハハ!! 女が合格できる訳ねぇってのに……馬鹿すぎるだろ?』
『女は大人しく花嫁修業でもしとけば良いんだよ』
『身の程をわきまえろっての!』
「……」
屈強な男ばかりの試験会場では……女の私は悪い意味で目立つ。
誰もが女と言う理由だけで私を見下し……嘲笑う。
覚悟していたことだけど……堪えるものがある。
胸の奥がジンジンと痛む……緊張とは違う嫌な汗が額から一筋流れ落ちる。
全員が全員という訳じゃないけれど……自分は巻き込まれまいと、みな無関心を決め込んでいる。
当然だろうと思う反面……薄情な連中だと軽蔑する自分もいる。
「リンドウ……大丈夫ですよ」
「コスモス……」
だけどそんな中……。周囲からの差別的な視線や陰口など気にせず、私の隣にいたコスモスは優しい言葉を掛けてくれた。
「大丈夫……この日のために、鍛錬や勉強を頑張ってきたんです。
これまでの頑張りを……精一杯出し尽くしましょう」
不思議だ……。
どこでも聴くありふれた言葉なのに……コスモスの口から聞くだけで……胸の痛みがスゥーと消えていく。
彼の朗らかな笑顔を見ると……自分を奮い立たせる勇気が湧いてくる。
「そうね……ありがとう、コスモス」
そうだ……。
周りから何を思われようと……何を言われようと……関係ない!
私は私の夢を叶えるために……1つ1つ段差を上がるだけ……。
その隣には……いつだってコスモスという最高のライバルがいる。
今はただ……目の前の試験に集中することだけ……。
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「手ごたえはどう?」
2時間半もの試験を無事に終えた私達は会場を後にした……。
筆記試験はどうにか回答を全て埋めることができたし……実技試験も私は全勝した。
対峙する相手は全員……私を女だと見くびって余裕の笑みを浮かべていたけど……実際に手合わせすると、あっけないほど弱かった。
油断していただけだと、負けた際に吠えていたけど……それを差し引いても弱い。
期待外れも良いところだ……。
最終的に……私とコスモス2人で勝ち残り……2人で試合をした。
結果だけ言うと私が勝利したけど……はっきり言って紙一重だ。
剣術が苦手なコスモスは剣を扱いきれないきらいがある……。
故に木剣は彼にとって武器ではなく……足かせにしかならない。
元々弓使いを希望していたし……接近戦も素手の方が動きやすいと本人が言っていた訳だし……。
だけど彼には……他を圧倒するセンスがある。
基本的な力や反射神経なんかは超人と言っても過言じゃない
何度か彼と素手で練習試合をしたことはあったけど……その際は1度も彼に勝てなかった。
力が強いとか体格差とか……そんな単純な引き算では計り知れない何かが彼にはある。
正直……木剣というハンデがなければ、ほぼ確実に私が負けていた。
「やれることは全てやりきりました……としか言えませんね」
「私も同じ……聞いておいてなんだけどね……」
「試験なんてものは大概そんなものですよ。
終わってしまえば、あとは祈るだけです……」
「そうね……」
試験を終えたばかりだというのに……合格というプレッシャーがどっしりと重く私の背中にのしかかる……。
胸の鼓動が速くなる……ちょっと気持ち悪いくらい……。
誰かに合格を期待されている訳じゃないけれど……これには私とコスモスの夢が掛かっている。
こんなところで躓くようじゃ……勇者なんて夢のまた夢……。
変わらぬ笑顔を隣で咲かせているコスモスもきっと……同じ思いを抱いているんでしょうね……。
「それにしても……今日は本当に参りましたよ。
やはりリンドウは強いですね……」
「今日はたまたま運が良かっただけよ……。
いつか本当の意味で……あなたを打ち負かしてみせるわ」
「私も……いつの日か、今日のリベンジを果たして見せます」
パン!
私達は、お互いにできた新たな目標を必ず叶えよう……そんな思いと気合を込めたハイタッチを交わした。
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その日の夜……。
「リンドウ。 今日の入団試験……一体どういうつもりだ?」
この日は珍しく父が帰宅し、久しぶりに2人で夕食を共にしていた。
親子同士の食事と言えば聞こえは良いけれど……何かと理由を付けて説教じみた嫌味を永遠と聞かされる私からすれば……不愉快極まりない時間だ
今回も例に漏れず……。
「どういうつもり……とは?」
「此度の試験……勇者ツキミの息子との距離を深めるためにと承諾したが……貴様はあまりにも目立ちすぎた」
「……」
コスモスには話していないけど……。
私は父に入団試験を受ける許しを得るため、父にこう吹き込んだ。
『コスモスは力強い女性が好みらしいから……騎士団に入って彼に強さをアピールしたいの!』
もちろん……これは真っ赤な嘘。
だが……コスモスと心を許し合っている私からの情報は信憑性が強く見える。
肩書が立派なコスモスを私の夫にと目を付けていた父は……私の言葉を鵜呑みにし、渋々私が入団試験を受けることに賛同してくれた。
コスモスをダシにして申し訳なく思う気持ちはあるけれど……こうでも言わないと、父は必ず試験の妨害を企てるはず……なんといっても、騎士団の実質トップにいるんだから……。
「女の貴様が実技試験でトップに上りつめたせいで……騎士団の面目は丸つぶれだ!」
これは一部の人間しか知らないことだけど……あの実技試験は入団希望者の実玉を計るためだけのものではなく、騎士団へ多額のお金を寄付してくれている上流貴族達をもてなす催し物でもあった。
どこで見ていたかは知らないけど……そういった連中からすれば……女の私が屈強な入団希望者達をなぎ倒す様は、さぞかし滑稽だったでしょうね……。
こっちは真剣に試合に臨んでいるのに……全く不愉快極まりないわ。
「私は全力で試験に臨んだだけよ……」
「黙れっ! 私の顔に泥を塗りおって……この恥知らずの親不孝者が!!」
「……」
それから父は好き放題に私を罵ってきたけど……私は何も言い返さずに黙って聞き流した。
本当は大声で言い返したかったけど……これ以上下手に刺激すれば、合格を取り消される恐れがある。
勇者になる夢を……コスモスとの約束を……こんなくだらないことで台無しにしたくはなかった……。
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試験終了から数日後……いよいよ明日は合格発表の日……。
「じゃあ明日……8時に図書館の前で待ち合わせね」
「はい。 合格発表は9時に公開……でしたね」
「そうよ……」
2人で合格発表を見に行こうと前々から約束していた私達は……いつもの訓練を終えた後、明日の待ち合わせ場所と時間を確認し合った。
「遅刻しないでよ?」
「もちろんです……。
リンドウこそ……遅れないように早起きを心がけてください。
女性は身だしなみを整えるのに時間を要すると聞き及んでいますので……」
「その辺の時間調整ができないほど、子供じゃないつもりよ?」
「フフ……それは失礼いたしました。
それでは明日……」
「えぇ……必ず2人で合格しましょうね」
「はい……」
お互いの合格を信じ……私達は明日に備えて早めに帰宅した。
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翌朝……。
私は予定よりも遅れて家を出た。
朝はしっかり起きれたし、身だしなみも整えることができた……までは良かったんだけど、財布がなかなか見つからなくて焦った。
財布にはなくさないように受験票も入れていたから……見つかりませんでした、では済まない。
家中を探し回り……ようやく洗面台の上の財布を見つけた頃には、すでに予定時間を30分もオーバーしていた。
とはいえ、急げばまだ十分に間に合う距離だ……。
「急がなきゃ!」
日頃の訓練で鍛えたこの足なら……間に合う!
私は図書館へと急いだ。
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「リンドウ!」
道中にある公園に差し掛かった時……いきなり後ろから名前を呼ばれ、反射的に私は振り返った。
「カタクリ?」
そこに立っていたのは、3ヶ月ほど前に知り合った……カタクリ。
孤児院で暮らしている孤児で……たまに勉強を教えたり、町に遊びに行ったりしてる私の友人。
彼は周囲からひどい嫌がらせを受けているらしく、極度の人間不信……。
いつも暗い顔をしているけど、悪い子じゃないと思う……。
私以外の人間とは絶対に関わりたくないと言っているので……コスモスには話こそすれど、会わせたことはない。
「どうしたの?」
「……」
私を見つめるカタクリの目が……なんだか真っすぐに見えた。
私以外に何も見えない……そんな強い意志が感じられる。
少し額から汗が流れ、わずかだけど呼吸も乱れているみたい……。
両手を後ろにして……何か持っているの?
「悪いんだけど……私、急いでいるの。
大した用がないなら後に……」
「これっ!」
間髪入れず、カタクリは後ろ手に持っていた……小さな花束を私に差し出してきた。
束にしている包みこそ、うっすらと汚れてはいるものの……色とりどりの花達がきれいな芽をこちらに向けている。
「えっ?」
「リンドウ……僕と結婚を前提に付き合ってくれないか!?」
「えっ?」
「初めて会った時から君が好きだった! これからもずっと……僕と一緒にいてほしい。
まだ知り合って間もない関係だけど……僕は本気だ!」
それは交際の申し込みを兼ねたプロポーズ……。
カタクリが私に差し出してくる花束がブルブルと震えている……。
自分の想いを受け止めてほしいと言う願望が……震えとなって表現されているように見える。
何よりも……彼の目は真剣そのもの……。
どうやらこれは……紛れもなく、彼の本音みたいね。
「僕には君しか見えない……君以外との人生なんて歩めない……」
「カタクリ……」
彼の気持ちは素直に嬉しく思う……。
カタクリは陰湿な風に見えるけど、根は良い人だと思う……。
でも……私は彼の気持ちに応えることはできない。
「リンドウ、頼む! 僕の気持ちを受け止めてくれ!
僕は君を必ず幸せにすると約束する!
だから……僕と結婚を前提に付き合ってくれ!」
「……」
※※※
「ごめんなさい……気持ちは嬉しいんだけど……あなたの気持ちには応えられない」
少し時間を置き、私は勇気を振り絞って彼の想いに謝罪を述べた。
想いを打ち明ける側が振り絞った勇気は計り知れないのはわかっているけど……断る側にもそれなりに勇気がいるんだ。
「どっどうして!? 僕が嫌なのか?」
「ううん……そんなことはないよ?
カタクリの人となりはわかっているつもり……。
だけど……ごめんなさい」
「じゃあ……ほかに好きな奴がいるのか?」
「それは……」
「リンドウがよく話す……あのコスモスって奴か!?」
コスモスが好き……か。
確かに私は彼を好いている。
友人としても……同じ夢を描く同士としても……1人のライバルとしても……。
「コスモスのことはもちろん好きよ?
私の親友でライバルだもの……。
でも異性がどうこうってなると……正直よくわからないわ」
この時は思わず口を瞑ってしまったけど……きっと私は……異性としても、彼の事のをどこかで想っている。
直接本人に伝えたことはないけどね……。
「それに私……今は勇者になる夢を叶えるために頑張りたいの。
恋愛事に興味はあるけれど……今は自分の夢を優先したい」
我ながら卑劣な回答だと思う……。
自分の夢を言い訳にして、コスモスへの想いをひた隠しにしてしまった……。
自分の想いを素直に打ち明けてくれたカタクリに……きっと今の私は目も当てられないでしょうね……。
「……」
私の応えを聞いたカタクリは……ガクッと肩を落とし、無言のまま差し出してきた花束を下ろした。
誰だって自分の想いを受け入れてくれなければショックを受けるに決まっている。
断った私が言うのもなんだけど……。
「ごめんなさい……カタクリ」
これ以上私が何か言っても、カタクリの心の傷を深めるだけだ……。
それに……合格発表のこともある。
私は立ったまま動かないカタクリに背を向け……公園を後にした。
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図書館の前に付いた頃には……すでに待ち合わせ時間を20分もオーバーしていた。
すでにコスモスの姿はそこにはなく……先に合格発表を見に行っただと悟った私はすぐさま会場へと走った。
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会場の外に設置されていた巨大なプレートに記されていた試験番号達……。
プレートを目にした瞬間……私はコスモスを探すよりも合格の確認を優先した。
「……あった!!」
プレートの受験番号を目で追うこと1分……私の番号がしっかりと記されていた。
その下には、コスモスの番号も記されている。
彼も……入団試験に合格したんだ!
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「合格おめでとうございます……。
こちらは紋章です……お受け取りください」
「あっありがとうございます!
合格を確認した私は急いで受付へと走り……騎士の証である紋章を受験票と引き換えに受け取った。
手に取った紋章はコイン位の大きさしかないが……ずっしりと責任感という重みを感じる。
そしてその重みは……自分が騎士となったことを示す証でもある。
だけど……喜んでばかりはいられない……。
私はあくまでスタート地点に立っただけ……勇者への道はまだまだ先だ……。
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「コスモス……」
喜びに浸りながら会場の外へ出た私の目に……コスモスの背中が写った。
私の声に反応して振り返った彼の手には……私と同じ紋章が握られていた。
「リンドウ……あなたも合格したんですね」
「えっえぇ……まあね。 あなたも合格したみたいで、良かったわ」
コスモスに釣られてお互いの合格を喜び合ったものの……やっぱり待ち合わせに遅れたことはきちんと謝らないといけない。
「今日はごめんなさい……待ち合わせに遅れたりして……」
「いえ……」
まずは謝罪を述べ、次にその理由について述べる……。
それが時間を守れなかった者の義務だ……。
そう……理解していたはずなのに……。
「実はね? 友達の女の子から急に相談したいことがあるって電話があって……2人でしばらくカフェで話をしていたの」
私は私の口から出た言葉に耳を疑った。
どうして……私はコスモスに嘘をついているの?
なぜ……本当の事が口から出てこないの?
口は動く……言葉もしっかり出てくる……それなのに……本当のことが出てこない。
「リンドウ……実は、ここへ来る途中……あなたが告白されている現場を見たんです」
ドクンッ!!
コスモスのこの言葉に……私の心臓は大きく跳ね上がった。
「友人とはいえ、プライベートなことなので……声は掛けませんでしたが……」
「ちっ違うの!」
私は全身から血の気が引いた……。
「コスモス聞いて! 彼は最近知り合った友達で……確かに告白はされたけど、交際はお断りしたわ!」
「そう……なんですか……」
「本当だから! 彼とは親しい友人ではあるけれど……男女の関係とかじゃないの!
証拠とかは……ないけれど、どうか信じて!」
どうして……?
さっきは全然出てこなかった真実が……どうして今になって出てくるの?
どうしてこんなに私は必死になっているの?
わからない……わからない……。
私は一体……どうしてしまったの?
「コスモス?」
ひとしきり言い訳じみた私の話を聞いたコスモスは……今まで見たこともないほどの悲し気な目を私に向けていた。
「リンドウ……なにか誤解されているようですが……」
やめて……そんな目で私を見ないで……。
私はあなたの笑顔が好きなの……。
そんな顔……見たくないよ……。
「私達の仲で……嘘なんかついてほしくなかった……」
「!!!」
私はようやく気が付いた……。
私は……コスモスにカタクリとの関係を誤解されたくなかったんだと……。
私とカタクリにはやましいことなんて何もないけれど……告白と聞けば……多かれ少なかれ、それなりに親しい間柄と思われる。
カタクリは親しい友人ではあるけれど……コスモスにそれ以上の関係と思われるのが……嫌だった。
だから私は……無意識に嘘をついてしまったんだ……。
だけど……今更気が付いてももう遅い。
1度出てしまった言葉はもう……取り消すことができない。
「すみません……せっかく合格したのに……今の言葉は忘れてください」
言葉が優しいけど……悲し気な声音が含まれた彼の優しさは……私の心に罪悪感と言う名の痛みを伴わせた。
先ほどまで全身を包み込んでいた余韻はスゥーと消え失せ……後悔の念だけが私の背中に押しかかる。
目の前にいるはずのコスモスの姿が……不思議と遠のいていくように感じる。
心臓の鼓動が速くなっていく……呼吸も浅くなっている……。
今まで人に嘘を付いたことがないと言えば嘘になる……。
だけど……この時ついた嘘だけは……罪の記憶として胸に刻み込まれていた。
誰よりも純粋で……誰よりも真っすぐなコスモスとの信頼関係……。
私はくだらない保身のために……その絆に泥を塗ってしまった……。
「ううん……悪いは私だから」
この時……私は言うべきだった
”ごめんなさい”……と。
嘘をついてしまったのならまず謝る……。
人間として当たり前の行動だ……。
なのに……私は1度も口にすることができなかった。
スラスラと醜い言い訳ばかりは出てきたのに……そのたった一言が……どうしても言えなかった。
タイミングを上手く掴めなかった……なんて言い訳はしない。
私は……逃げてしまったんだ……。
コスモスに嘘をついてしまったという……現実から……。
謝る勇気が……出なかったんだ。
だから……コスモスの優しさに付け込んで……彼の許しに甘えてしまったんだ……。
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その夜……コスモスの家で合格祝いのパーティーが開かれた。
コスモスのお母さんや友人たちが……私とコスモスの合格を心から祝福してくれた。
それはとても嬉しかったけど……私の心が晴れることはなかった。
私はコスモスと顔を合わせることに抵抗感を覚えてしまい……まともに会話することすらできなかった。
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その日以降……私はコスモスと会うことができず、毎日のように続けていた彼との訓練も行っていない。
嘘を付いてコスモスとの絆に影を差し込んでしまった私が……謝罪する勇気すら湧かない私が……一体どんな顔して彼と会えば良いの?
「私の馬鹿……どうして何も言うことができないの?」
私は外には一切出ず、自室に引きこもり……自分自身を責め続けた。
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「ひどい顔……」
コスモスに会うことも謝罪することも叶わないまま時が流れ……とうとう入団式の日が来た。
これから夢に向かって頑張らないといけないというのに……外に出る気力があまり湧いてこない。
久しぶりに見る鏡越しの自分の顔は……ひどく惨めだった。
生気のない顔……クシャクシャの髪……曇った瞳……まるでお化けだ。
「……」
入団式に出れば、いやでもコスモスと顔を会わせることになる……。
そう思うと……入団式に行くのが恐ろしく思えてしまう。
こんな惨めな自分を見せたくない……彼にどう接したら良いかわからない……。
「いや……行かないと……」
だけど……私は行かないといけない。
ずっと夢見ていた勇者……。
騎士団に入るために努力してきた自分を……裏切りたくない。
私を同じ夢を持つライバルだと言ってくれたコスモスの期待を……これ以上失望させたくない。
自分に鞭を打ち……醜い自分を隠すために身だしなみも徹底した私は……入団式へと臨んだのだった。
次話はカタクリ視点です。
この物語の元凶と言うべき存在です。




