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「そう。闇を打ち消すのは光だ。古書に書いてあった。太陽の光や炎の光なんか比べ物にならないほどのもっと強烈な光を、大量に浴びせること。それがあいつをやっつける唯一の手立てなんだ。最初にそれを知ったとき、そんな光なんてどこから持ってくればいいのかまるで思いつかなくて。それで巫女を使って封印することにしたんだ。でも雅美ちゃんが、それなら良い方法があると言ってくれて」
「そう。あの貯蔵庫は昔から知っていたの。うちの実家から、そんなに離れていないから」
「そうだったのか」
「もう吸鬼はもう死んだ。これで一件落着というわけだね」
「そうよ」
「そうだな」
上条は笑った。
雅美も笑った。
桜井は笑わなかった。
次の日、朝早くから三人で木本の下宿を訪ねた。
戸には鍵が掛かっており、何度呼んでも返答はなかった。
そこで大家に話を聞きに行くと、大家が言った。
「ちょっと前、びっくりするくらい悪い顔色でうろうろしているのを見たけど、その後は姿を見なくなったのよ」
その話を聞いて、三人とも何も言えなかった。
学食で最初に口を開いたのは桜井だった。
「間にあわなかったか」
「そうだな」




