59/65
59
「呼び寄せて、どうするんだ?」
「もちろんやっつけるのよ。いつもは祖父や父がやってたけど、今回は私たちだけでやらないといけないわ」
「どうやって?」
「悪いけど質問は後よ。もう呼び寄せるから」
「……ああ」
いつもよりも強い口調の雅美に圧され、上条はそれ以上何も言わなかった。
雅美は目をつぶり、顔を下に向けた。
上条は、呼び寄せると言うから何か特別な動きをしたり、呪文でも唱えるのかと想像していたが、そうではないようだ。
そのままの姿勢で動くことなく、口も開かなかった。
「待とうよ」
桜井が小さく言った。
「ああ、そうするしかないようだな」
二人は待った。
時間はそれほどかからなかった。
雅美が目を開け、言った。
「感じるわ。来るわよ」
桜井が棚の下から何かを取り出した。
棒の先に布を巻きつけたもの。
上条にはそれは、二本の松明に見えた。
桜井がそれに火をつけた。




