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――まだ俺は仲間はずれかよ!
「で、上条には大事な役目がある」
「なんだよ」
桜井から仰せつかった大事な役目とは、前に封魔の印を買ったお寺に行ってできるだけお札を買って来い、という内容だった。
そして地図を渡された。
お札を買ったら、ここに来てくれと言うことだ。
そこは大学からそんなには離れていない場所だったが、細い脇道を進んだ先にあるため、上条がまだ行ったことがないところだ。
――それにしても。
今は昼だが、お寺まで行きその後地図の場所まで行くと、どんなにがんばっても夜になってしまう。
その間、桜井は雅美と二人っきりなのだ。
上条の全身は、嫉妬の炎に包まれていた。
――あのやろう。
上条はとりあえず、この件が落ち着いたら桜井をぶん殴ると決めて、車を走らせた。
結論から言うと、お寺にはお札はもうなかった。
ここではなくて本所で作っているだの、いざと言うときのことを考えて一度に三十枚納品するが、場合によっては全部さばくのに数年かかる、だの。
それなのに仕入れたばかりのお札を三十枚全部買っていった人が、また買いに来るとは思わなかった、だの。
お坊さんの呆れとちょっとした怒りが混じった愚痴としか思えない講釈を、予想したよりも長く聞く羽目になっただけだった。
――ほんと、無駄足もいいところだ。
上条は車に乗り込んだ。
もちろん地図に書かれた場所に行くためだ。




