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吸鬼  作者: ツヨシ
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これまでにもう十回は聞いている。


その度に桜井は「まだだ」と答えていた。


しかし今回は違った。


「もうすぐだよ」


そして五分と経たないうちに、車が停まった。


そこは小さなお寺の敷地内だった。


「ここは」


「言っただろう。お札があるところだよ」


車を降りると桜井はすたすたと歩き出した。


上条が無言でついて行く。


「すみません」


本堂の横にある建物の前で、桜井がいつになく大きな声で言うと、しばらくして中から人が出てきた。


袈裟を着た中年の男。


どうみても僧侶だ。


「なんでしょうか?」


桜井がスマホを取り出して、僧侶に見せた。


「これは……」


「わかりにくいですが、邪封の印ですよ。扱っているところは日本でもそうそうないですけど、こちらでは扱っていますね」


「ええ、確かに」


「少し分けてもらえませんか」

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