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「とにかく今はそんなことを議論している場合じゃないよ。今日はこの洞窟を徹底的に調べると決めたんだからね」
「でも調査隊が何回も入っているって上条から聞いたぜ。それなのにこれ以上、何か見つかるのか?」
「一つ。調査隊の調べる対象と僕らの調べる対象は、まるで違う。二つ。専門家でも見落とすことは、ある。三つ。発見したことを、全て公表しているとは限らない。以上だよ」
上条が言った。
「どちらにしても、封印されなきゃならないようなものがここにいて、それが犬田に何かしたということが前提になるわけだな」
「そうだよ。それについては、二人とも何の異論もないだろう」
「どうしてそう思う」
「だって二人とも、人並みはずれてオカルト好きだし、同時にそう言ったものの存在を、当たり前のように信じているんだからさ」
そう言うと、桜井は大口を開けてげらげら笑った。
上条は、普段感情をあまり表に出さない桜井が、こんなにも笑うところを初めて見た。
三人は探した。
普通探し物をするときは、探すものが何であるかがわかっているものだが、今回は違う。
何かを探すのだ。
それでも三人は懐中電灯を頼りに地を這い、登れるところはよじ登り、隅々まで探した。
――ほんと、何にもないところだな。
上条がそう思っていると、桜井の姿が目の隅に入った。
――何してるんだ、あいつ?
見てみると、桜井はスマホで岩の壁を撮影していた。上条が近づき、聞いた。




