幕 間 ぼくらの運動会対策
お久しぶりのマヨヒガです。今回はちょっと幕間劇を。一話のみの投稿です。
~Side 優樹~
「これはちょっと……まずいような気がするわよねぇ……」
「多分じゃなくて、ほぼ確実にまずいよね」
繰越での件がとりあえず一段落付いた後の月曜日、ぼくと真凜は下校中に、本日新たに発生した問題について相談していた。それというのも……
「運動会……再来週なのよね……すっかり忘れてたわ……」
「運動会よりスリリングな日々が続いたもんね……」
ぼくはもともとスポーツとかあまり好きじゃないから、運動会はそこまで楽しみだったわけじゃないけど、スポーツ少女の真凜は楽しみにしてたはずなんだよね……本来は。
けど実際は、今日から運動会特別時間割が始まるって「朝の会」で聞かされるまでは、きれいさっぱり忘れてたし。
「参加するのは当然だけど……本気を出したら……やっぱり、まずいわよね?」
「多分じゃなくて、ほぼ確実にね」
――さっきから同じ事を繰り返してるのも、ぼくらのステータスが原因だった。
迷い家に出会ってスキルを貰ってからというもの、ぼくたちのステータスは日々向上している……小学生のレベルじゃ収まらないくらいに。
前衛向きじゃないぼくだってそうなんだから、前衛向きの真凜が本気を出したりしたら、まずいなんてもんじゃない。
「……実力を隠す必要があるのは当然だけど……手抜きしてるって思われてもまずいのよね?」
「ぼくならヒンシュクを買うだけですむとおもうけど……真凜ちゃんだと疑われると思う」
「普段の授業では抑えめにしてるんだけど……競争になると……ねぇ?」
球技とかの授業では、〝熱くなって格闘技の動きが出たら危ないから〟――という、何とも言えない理由でごまかしてたみたいだけど……競走とかだとその言いわけは通じなさそうだしね。
けど、真凜が全力で走ったりしたら……騒ぎになるのは確実だよね?
「仮病を使って当日休むというのは問題外だから……」
あ……問題外なんだ。ぼくは選択肢の一つに入れたけど。
「……どうにかして、疑惑を抱かれないように走るしかないわよね……」
「けど真凜ちゃん、そのためには練習するしかないわけだけど……肝心の練習場所がないっていうのが、当面の問題だよね?」
練習の前に、ぼくたちの今の体力を計っておく必要もあるけど……それを見られるのもまずいんだよね。
「あぁもぅ……色々と調べる事があるっていうのに……この上、手抜きの練習までしなくちゃならないなんて」
――真凜が言ってる〝調べる事〟っていうのは、繰越の廃村で見つけた異世界のあれこれの事だ。
あの時、繰越という場所に何かの言い伝えとか残ってないかという事と、説明文でワームを指し示していた「野槌」という妖怪の事について、それぞれ手分けして調べようって事になったんだけど……あの時は運動会の事なんて、すっかり忘れてたからなぁ……
「でも真凜ちゃん、優先度としては運動会対策の方が重要だよね。ぼくらのステータスがバレるかどうかの瀬戸際なんだから」
「それはわかってるけど……」
「真凜ちゃん、どうせ〝練習〟に時間をかける事はできないよ。できるだけ一日で終わらせないと。見られる危険性は最小限にしたいからね」
だから練習それ自体よりも、むしろ練習場所のブッショクに時間と労力をかけないといけない。そう提案したら、
「じゃあ、さっさと練習場所を決めちゃえば、後の時間は調査にまわせるのね?」
――ようやく真凜の機嫌が戻った。世話が焼けるなぁ。
そういうわけで場所の選定に入ったんだけど、
「人目がなくって、しかも思う存分走れるくらい広い場所って言ったら、ほぼ限られるよね」
「空港跡地くらいしかないわよねぇ」
結局、平日の放課後はそれぞれの調査に当てて、土曜日に空港跡地の下見。そこが使えそうになかったら他の場所を探して、日曜日に手抜きの練習……というように予定が決まった。調査結果の報告会をいつにするかは、調査の進みぐあいによって変わってくるから、今の時点では予定を立ててない。まぁ、報告会はそれほど時間は取らないだろうし、放課後にでもできなくはないだろうからね。
・・・・・・・・
それから後の事は……少なくとも運動会に関しては、取り立てて言うべき事はなかった。
力走のふりをする練習の時、ピッチを落とす代わりに地面を強く蹴るように試してみたら――地面が深くえぐれてしまって、この方法は没になったのと……色々苦労したにもかかわらず、運動会の本番で真凜が無双して目立った事ぐらいかな。一応はまだギリギリでノーマルの範囲だったから、不問に処したけど。
……散々手を抜いてこれなんだから、練習せずにやってたらどうなってたか……うん、考えただけでも不穏だよね。




