第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 5.転移者の影(その2)
~Side 真凛~
そう上手くはいかない――というのが優樹の答えだった。
「今の状態とか品質はわかるけど、埋められた時代を判定するのは無理みたい。この先レベルが上がったらわかんないけど」
どうしたものかと悩んでたら、それまで考え込んでいた優樹が口を開いた。
「……今の状況で手がかりになりそうなのは、剣とワームの素材が埋められていたここ、つまり『繰越集落』という場所と、説明文に出てきた『野槌』という名前、それと『ミスリルのショートソード』だけみたいだね」
「……確かに現物がこの有様だと、鑑定文に頼るしかなさそうね」
「このうち『ミスリルのショートソード』については、今まで何の伝説にもうわさ話にも出てきてないわけだから、あまり手がかりになるとは思えないんだよね」
「そうね……少なくとも最初の段階では、考えなくていいかもね」
「うん。次に、ミスリルのショートソードとワームが同じ時に転移して来たのか、それとも別々に転移して来たのかだけど……」
「同じ時じゃないの? 異世界転移がそう何度も起きたんなら、何かうわさぐらいは残ってそうじゃない?」
「うん、『オッカムの剃刀』ってやつだよね。説明のための仮定はなるべく単純にすべし――っていう」
「へぇ……そういうのがあるのね」
「うん。でね、ミスリルのショートソードとワームが同じ時に転移して来たとして、その状況は三つほど考えられると思うんだ」
……三つ?
「うん。①剣とワームの素材を持った異世界人が転移して来た、②ショートソードの刺さった状態でワームが転移して来た、③異世界人とワームが同時に転移して来た」
……確かに……けど、よくそんな事まで考えたわね? 呆れるべきか感心すべきかあたしが悩んでる間にも、優樹は推理(?)を進めていった。
「でも、ワームの歯と魔石が回収された状態で埋められている事を考えると、②の可能性は低いと思うんだ。こっちの人間がワームの解体の仕方とか素材の価値とか、知ってたとは思えないし」
「あぁ……確かにラノベなんかなかっただろうし、魔石が回収されてるのはおかしいわよね。そうすると①か③……異世界人が転移して来たって事になるわよね」
「そこで次。異世界からのもの――ショートソードとワームの素材ね――が日本刀と一緒に埋められてた事から、ここ繰越集落の人間が何か関わってた事がわかるよね。異世界人と直接関わりを持ってたのか、それとも……異世界人がワームと相討ちになって、その遺品だけを入手したのかはわからないけど」
「そう……ね。……そういう事になりそうね」
「だったら一つの可能性として、何かの伝説が残ってないかどうか、それを調べる事はできないかな? 異世界人にしろワームの死体にしろ、人目に付かなかったとは思えないし」
「……そうね。大々的に話が広まった事はないみたいだけど、ここ繰越の近くでなら、伝説の一つぐらい残っていてもおかしくないわね」
「うん。もう一つの手がかりは、鑑定文でワームが『野槌』って表現されてた事なんだよね。ぼく、あまりくわしくないんだけど、ノヅチってツチノコの仲間みたいに言われてなかった?」
「……そんな気がするわね……」
けど……ツチノコの正体がワーム? ……無理がない?
「その辺りの事情と、他のツチノコ伝説も転移して来たワームと関係があるのか、それを調べるのも必要じゃないかなって」
「……そうね。優樹の言うとおり、『繰越集落』と『野槌』について、手分けして調べた方が良さそうね」
今後の方針が決まったところで、
「じゃ、折角だから村の中を見てまわろうよ。ひょっとして、他にも何か手がかりが埋まってるかもしれないし。真凛ちゃんの【魔力探知】にも期待してるからね」
あぁ……ナマケモノの時は使えなかったけど、魔石なら確かに【魔力探知】に反応するわよね。〝二匹目のドジョウはいない〟って言うけど、確認してみる必要はあるわよね。




