第二十四章 ぼくらが廃村に招かれた話 1.彼女からのお誘い
本章で話が大きく動きます。
~Side 優樹~
テレビの歴史番組を見てる時から、その予感はあった。
だから――自室に引き取ったのを見計らうようにその電話がかかってきた時も、それほど驚きはしなかった。
『優樹! もう一度蓑掛山へ行くわよ!』
――ほらね。
「今晩は、真凛ちゃん。察するに、さっきまでやってたテレビ番組の事だよね? 戦国時代の『隠物』の話」
『話が早くて助かるわ。さすが、あたしの相棒よね』
ぼく的には、「共犯者」とか「一味」っていう方がしっくりくるんだけどなぁ……
ま、それはおいといて――さっき言った「隠物」っていうのは、戦国時代の庶民が自分の財産を守るために、人目に付かない場所に金銭や証文などを埋めたりして隠した、そういうものをさす言葉だ。家財道具を抱えて逃げる、そんな余裕がいつもあったとは限らないからね。敵が攻めてきた時なんかは、身一つで最寄りの城や避難所に身を隠す――そういう事だってあったはずだ。
――で、
「蓑掛山にそういう隠物がある……って考えてるわけ? 何か根拠でもあるの?」
蓑掛城は小規模な山城で、どっちかというと抗戦の拠点だよね? 領民が避難する場所じゃないと思うし、そもそも蓑掛山に財産を埋めたりしたのかな? 真凛は何か心当たりがあるんだろうか?
『別にないわよ?』
「……ないの?」
だったら何で、〝蓑掛山に行く〟――なんて言い出したのさ?
『だって、他にありそうな場所ってないじゃない?』
「……待って、真凛ちゃん……つまり、蓑掛山に隠物があるかどうかはわからないけど、ありそうな場所が他に思い当たらないから、とりあえず蓑掛山に行ってみる――っていうの?」
『そうよ。〝虎穴に入らずんば虎児を得ず〟。若い頃の苦労を惜しむようじゃ、大きな事は成し遂げられないのよ!』
いくら探知魔法と鑑定スキルがあるって言っても、隠物を探すのにローラー作戦っていうのは……どうなのかなぁ……
それに、真凛は蓑掛城の周りを調べるつもりみたいだけど、領民が山頂まで財産を抱えて登ったりした――なんて思ってるんだろうか? そもそもあの城って、割と早い時期に破却されたんじゃなかったっけ?
『あら、破却されるまでの間、ひょっとしたら山賊とかのアジトに使われてたかもしれないし。だとしたら、山賊が獲物を隠した可能性だってあるじゃない』
あぁ……理屈とかじゃなくて、とにかく宝探しがしてみたいんだ……
だったら、理詰めで説得するのは無理だろうな。
すっかり「埋蔵金」っていうマジックワードに囚われて……
『やぁねぇ、あたしだってそこまで考えなしじゃないわよ』
「……何か考えがあるの? 真凛ちゃん」
『二つほど気になってる事があるのよ。第一は化石掘りの時にわかった事。人の思念の残ったものほど、素材や収蔵物としての価値が高い――って、わかったじゃない』
「うん……そうだけど、それで?」
『戦争なんて人の感情のぶつかり合いでしょう? だったら、戦場に残されたものが見つかれば、それは素材や収蔵物として有用じゃない?』
「……思念というより怨念が取り憑いてそうな気もするけど……まぁ、真凛ちゃんの言いたい事はわかるよ」
確かにぼくの【鑑定】と真凛の探知魔法があれば、何か見つけられるかもしれないけど……それって、文化財法か何かに引っかかるんじゃないかな?
『それは、それこそ見つけてみないとわからないじゃない?』
「まぁ……それはそうだよね」
『それに、万一何かが見つかっても、それをあたしたちが報告したり提出するのは、色々とまずいわよね?』
「あぁ……それもあったっけ……」
ナマケモノと化石だけで充分目立っちゃってるからなぁ……
「まぁ、それは後で考えるとして、もう一つは何なのさ?」
『二つめは、先週取り込んだ金霊のケースよ。あれって、財布が埋められて、それが付喪神みたいになったのよね?』
「うん……付喪神とかくわしい事まではわからないけど……多分ね」
『だったら、これこそまさに「隠物」じゃない』
「……旅人か近在の者かはわからないけど、蓑掛山の街道筋は、財産を隠すような場所だった――って事?」
『もしくは、財産を隠さざるを得ないような事態が発生する場所――ね』
「う~ん……」
根拠のない妄想と思ってたけど……そう捨てたもんでもないのかなぁ……




