第十六章 ぼくらが廃屋に行った時の事 1.ぼくたちの廃屋探検
お久しぶりのマヨヒガです。今回は今日明日の二日更新になります。
~Side 優樹~
称明寺の墓地跡に行った翌日、ぼくと真凛は最近噂になってる廃屋を訪ねていた。〝腰を落ち着ける暇もない〟――って言うんだっけ、こういう時。
あそこの墓地跡に出るっていう「じゃんじゃん火」は本物みたいだったけど、実はぼくたちの仮説を確かめる役には立たなかった。ぼくたちが知りたいのは、〝最近になって怪異の活動が活発化しているのは事実なのか〟――という事だ。
墓地跡に出た火の玉は本物の怪異みたいだったけど、それは大雨による崖崩れでお墓が流されたのが原因だったからね。〝最近の傾向〟として扱うのはちょっと難しい。
そうすると、仮説が正しいかどうかは他の例で確かめるしかないんだけど……昔あったという怪異の中で、それが確認できそうなものがないんだよね。思案に困る――と言いたいとこだけど……実はタイミング好く、茂ちんが耳寄りな話を持ち込んできたんだよね。
「夜に怪しい光が瞬く廃屋ねぇ……」
「この手の話はネットにはありふれてるけどね、それが本物の〝怪異〟なのかどうかは、ぼくたちで判断するしかないじゃない。そういうのが多ければ、昔と較べてどうなのかはわからなくても、活発だとは言えるわけだし」
……まぁ、あわよくば廃屋かその一部を取り込んで――という下心も、ないとは言わないけどね。
「ま、せっかくここまで来たんだし、その廃屋とやらを拝んで帰らなきゃ無駄足よね」
昼間とは言え無人の廃屋に行くなんて、親に知れたら止められるに決まってるからね。親には自由研究の調査に行くとだけ言ってきた。……少し疑わしそうな目はされたけど……
そんな感じで、ぼくたちはその廃屋に足を踏み入れた。倒壊したりしたら嫌だから、事前に【立地鑑定】を使って、危険がない事を確かめた上でね。
「……ネットで噂になってるせいか、結構人が来ているみたいだね」
「ゴミとか散らかってるわよね。マナーがなってないわ。……優樹、取り込める?」
「無理だよ。プラスチックの弁当容器とかペットボトルとか、マヨヒガの素材にはなんないしね。割りばしと紙くらいなら取り込めるけど、それだけがなくなってたりしたら、不自然に思われるかもしれないよ?」
それが原因で新たな「怪異」が作られたりしたら、面倒だよね?
「そうね……気は進まないけど、このまま放って置くしかなさそうね」
「普通に持ち帰ってもいいけど、どこから持って来たのかって訊かれそうだしね」
〝廃屋の怪火〟の正体は、廃屋探検に来たオカルトマニアの懐中電灯の光じゃないかって話になった。それなりに物好き――ぼくらが言えた義理じゃないけど――がやって来てる以上、その廃屋がいきなり消えたりしたら、大騒ぎになるに決まっている。残念だけど、取り込むのは無理って事になった。法律にも触れそうだしね。
けど、せっかくここまで来たんだし、中を見て歩こうという事で、ぼくと真凛の意見が一致した。ひょっとしたら、何か取り込めるものが残ってるかもしれないしね。
「こういうのって、何だかちょっとワクワクするわよね♪」
……小五にして廃屋マニアかぁ……真凜ってば、喪女一直線……
「何か言った?」
「ううん、何も♪」
そんな感じで中を歩きまわってたんだけど、
「……ちょっと待って、真凛ちゃん。……あそこ、何かあるみたい」
「どこ? ……あれって神棚?」
「そうみたい」
【鑑定】が反応した以上、何かあるのは確かなんだけど……ぼくも真凛も神棚の高さまでは手が届かない。足場になりそうなものもないし……
「……仕方ない。ぼくが肩車するから、真凛ちゃん、神棚の上を探って」
「……大丈夫なの?」
「わかんないけど、やるしかないじゃない」
こんな場所にいかにもな感じで残ってる素材候補、放って置くなんてできないよね。そう言ったら、真凛もしぶしぶ同意した。
筋力値とかは真凛の方が高いんだろうけど、ぼくが真凛の上に乗るのは、構図的にちょっとアレな気もするしね。ぼくの筋力値は飛び抜けて高いわけじゃないけど、女の子一人支えるくらいなら、多分何とかなるはずだ。……真凛、体重まで平均値を上回ってたりしないよね?
……そう考えてたら、なぜか真凛に無言でにらまれたけど。
「……ど、どう?」
「揺らさないでよ。……あった。古い御札みたい」
《対象物の品質は以下の通りです。
【護符】 品質:上 貢献度:小
マヨヒガに取り込みますか? はい/いいえ》
……表示がいつもとはちょっと違ってるよね? お地蔵様の時と同じかな。
「え? 素材扱いじゃないの?」
「うん。『素材』とも『外構え』とも書いてない」
「……考えてみたら、確かにどちらのカテゴリーにも入らなさそうよね。……でも、優樹は取り込むつもりなのよね?」
「うん。カテゴリー的にはともかく、別に問題ないと思うし。念のために報告したけど」
「……そうね。お地蔵様の例もあるし、取り込んでも大丈夫だと思うわ。何より、マヨヒガが問題ないと言ってるんでしょうし」
「うん。じゃ、取り込むね」
こういう具合に、一応の収穫を得て廃屋を出たんだけど……
「――待って優樹、何者かが接近してる!」




