第十三章 ぼくらがお寺の跡地に行った時の事~石神~ 2.自己主張する鳥居(破片)
~Side 優樹~
そのまましばらく墓場の跡を見てまわったんだけど、何もおかしなところは見当たらなかった。その後で、もう一度お寺の跡地も見てまわったんだけど、こっちでもおかしなところは見つからなかった。
ちょっと欲を出して、お寺の遺物みたいなものでも落ちてないかと思ったんだけど、それも何一つ見つからなかった。
まぁ、今日の目的は素材の回収とかじゃなくて、ここに何か異変が起きていないかどうかの確認だから、何も起きてない事がわかれば、それはそれで収穫があったという事なんだけど。
とりあえず、何もおかしなところはないようだと判断して、石段を下りてきたところで……
「……どうかしたの? 優樹」
「うん……あの石……」
「石?」
道の脇に、草に埋もれて放ってある鳥居の残骸の石。
……その一つに【鑑定】が反応したんだよね。鳥居のてっぺんの部分みたいだけど。
《対象物の品質は以下の通りです。
【石柱】 品質:上 貢献度:中
マヨヒガの外構えとして取り込みますか? はい/いいえ》
いつものぼくなら即行で「はい」を押すところだけど、この時はそうしなかった。
だって……
「え? 【素材鑑定】が反応したの?」
「うん。……さっき見た時は何も反応しなかったのに……おかしいよね?」
ラノベとかでは何かの罠を疑う展開なんだけど……
「でも、反応したのはマヨヒガのスキルなのよね?」
「そうなんだよね……マヨヒガがぼくたちに罠を仕掛ける理由が見当たらないし……それに、何となくだけど、取り込んだ方が良いような気もするんだよね……」
――ただ、少し気になるのは、
「……『外構え』ってなってるのよね? 『外部素材』じゃなくて?」
「うん」
初めて見るカテゴリーなんだよね。これまでは〝(外部)素材として〟取り込んでたし、お地蔵様の時は「素材」とも「外構え」とも書いてなかったし。
「……そもそも〝外構え〟って、何?」
「確か……建物の外にあるものを引っくるめて、そんな風に言うんじゃなかったかな。〝外構〟とも言うみたいだけど」
「……石材としてじゃなく、鳥居として取り込むって事?」
「……どうなんだろ。けど……そもそもマヨヒガは民家なんだし、鳥居があるのはおかしいよね?」
「そうね……」
お地蔵様があるのはおかしくないのか――って言われても困るけど。
「ううん。そういうのはあるのよ。『屋敷神』っていって、敷地の中に祠とかを設けてお祀りするの。大抵は荒神様とか金神様とかお稲荷様とかをお祀りするんだけど……お地蔵様は……どうだったかしら? 道の脇とか辻とかにお祀りする事が多いはずなんだけど……」
真凜はしばらく悩んでたけど、人間界の基準でマヨヒガを推し量ろうとするのはムダじゃないかな?
――そう思ってたけど、真凜が気にしてるのは別の事……いきなり「外構え」としての意味を主張しだした鳥居――正確には元・鳥居――を、すんなり受け入れていいのかという事みたいだった。まぁ、怪しいと言えば確かに怪しいもんね。だけど……
「……品質も貢献度も高いのよね……?」
「うん……」
怪異かどうかはともかく、お寺――兼・神社――といういわば聖域のなごりだから、石も上質なのかもしれない。そう考えると一応説明は付くし……何より、ここでスルーするのはもったいないような気がするんだよね。
「……腹をくくって、取り込んじゃう?」
「……そうしよっか?」
何かの罠でないとすると、神様か仏様のご意志って事になるし。だとしたら、断るのは畏れ多いよね。
という事で、問題の「石柱」――鳥居のてっぺんの部分だから、言われてみれば石柱に見えなくもない――はマヨヒガの「外構え」に収まった。マヨヒガがこれをどう使う気なのかはわからないけど……まぁ、それはマヨヒガに任せればいいか。
石があった痕跡は真凛の土魔法で消して、ついでに木魔法で草を茂らせてやったから、取り込みの痕跡は残っていない。証拠湮滅とか言われそうだけど……多分、神様か仏様のご意志だから、下界の法律とかに優先するんだよ。きっと。
そんなこんなで、ぼくらは粛々とその場を後にしたんだけど……
「……でも、この鳥居とか昔の称明寺とかって、どんなだったのかしらね?」
「だね。一遍見ておきたかったかも」
……そんな事を言い合ってたぼくたちが、その時に、どうして振り返ったのかはわからない。
けど……示し合わせたように振り向いたぼくたちが見たのは……
……堂々とそびえ立つ立派な鳥居ときれいに掃除された石段。そこを駆け上って行く子供たちと、その先に見える立派なお寺の姿だった。
……それが見えたのはほんの一瞬で、かき消すように見えなくなったけど。
ぼくと真凛は顔を見合わせると、黙ってその場を後にした。
けど――悪い感じはしなかった。
今回の更新はこれでお終いです。




