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逃走、盾役少女  作者: 善信
第七章 神を討つ者達
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12 決着

『ぐあっ……!』

ウェネニーヴを仕止めようとしていたレビルーンの口から苦痛の声が漏れ、閃光魔法は発動する前に掻き消えてしまった。

それと同時に、ウェネニーヴも女神の手から逃れる。

斬りかかったコーヘイさんの一撃によって、女神は手甲を切り裂かれ、ウェネニーヴを捉えていた右腕から血を流しながら、後方へ移動して距離をとった。

で、でも……どうして、レビルーンを傷付けられたのかしら?

しかも、あの神の鎧を切り裂くなんて、《神器》を持ってしても難しいだろうに……。


『何をしたのです、異世界人……』

「何って……剣で斬っただけさ」

『バカな!我の鎧を斬るなど、不可能です!』

「まぁ、並みの剣なら無理だろうな。しかし、《神器》だったらどうだ?」

『それはなおのこ不可能だと、先程証明して見せたはずです』

「あんたの作った《神器》ならな。だけど、この《神器》は違う」

『なんですって……』

怪訝そうな顔をする女神と同じように、私も首を傾げたけれど、コーヘイさんの持ってる剣を見て、ふと気がついた。


「あ!それって、ザラゲールの持ってた《闇の神器》じゃ!?」

「正解!」

そう、彼が今その手にしてるのは、邪神が召喚した闇の勇者ことザラゲールへと与えた、私達の物とは異なる《神器》!

『なるほど……我が作った《闇の神器》ならば、レビルーンにも通じるという事か』

いつの間にか後方で戦いを見物していたギレザビーンが、納得したように頷く。

『《闇の神器》……ギレザビーン、貴方はそんな物を作って我を倒そうとしていたのですか!そうまでして、我が憎いと!?』

レビルーンが言葉を荒げて、ギレザビーンに噛みついた。

でも……うん?

怒っているというより、なんだか悲しげな雰囲気があるような……?


『なんだと!? 我は……』

「おおっと、邪神はその辺で下がっててもらおうか。いま女神様の相手をしてるのは、俺達だぜ?」

突然、私達そっちのけで揉めそうになっていた神々の間に入り、コーヘイさんは挑発するような口調で声をかける。

「ザラゲール達の形見の剣だ。キッチリ仇は取らせてもらうぜ」

《闇の神器》を構え、レビルーンをコーヘイさんが見据える。

ただ、その後ろで「しんでねぇよ……」といった、ザラゲール達のか細い声が聞こえてきてるんだけどね。

まぁ、生きてて良かったわ。


『……そもそも、勇者とはいえ何故あなたが《闇の神器》などという代物を使えるのですか』

「おいおい、忘れたのかよ。俺の覚醒した鎧の《神器》は、『すべての《神器》を扱える能力』があるんだぜ」

『覚醒って……守護天使達は倒れ、《神器》は覚醒前に戻ったと説明したではありませんかっ!』

イラついた様子で、レビルーンは声を荒げる。

しかし、そんな女神に対して、コーヘイさんは冷静に返した。


「俺は、守護天使の干渉無く《神器》を覚醒させた。だから、天使がやられても影響はなかったって訳だ」

『そんなバカなっ!?』

予想外過ぎた答えだったのか、レビルーンの顔は驚愕に染まる。

『い、いったいどうやって……』

「そこは、勇者が起こした奇跡ってやつさ」

うん、味方の女性から心底軽蔑されて見捨てられ、その悲しみから覚醒したんだから、奇跡といえば奇跡よね。

かなり情けない経緯ではあるけど。


だけど、事情を知らない神々は、コーヘイさんに警戒心を抱いたようだった。

『この世界には、何度か異世界からの人間が、勇者として召喚された事はあります。ですが、あなたほど非常識な人間は初めてです』

「俺が元いた世界じゃ、『常識は破る物、限界は越える物』って言葉があるからな。誉め言葉として、受け取っておこう」

『そんな世界の人間が召喚される事を許したのは、我の不覚ですね……ですから、この手で始末をつけましょう!』

そう宣言するや否や、レビルーンの周囲から数発の閃光魔法が放たれる!


コーヘイさんはそれらを巧みに回避するけれど、高速移動で回り込んだレビルーンが、避けた方向で待ち構えていた!

『あなたの役目は終わったのです!さっさと退場なさいっ!』

コーヘイさんへ向けて、閃光を発射しようとするレビルーン!

「そうはさせないわっ!」

魔法が発動する、すんでの所で盾を構えて突撃した私は、女神の体を容易く撥ね飛ばした!

フハハ!百トンもの重量による、盾突進技(シールドチャージ)の威力はどうかしら!?

思った通り、盾による攻撃は通じなくても、単純な重量の激突によるダメージは通るみたいね!


『ぐっ……』

吹き飛ばされながらも、レビルーンはフワリと受け身を取る。

だけど、その一瞬の隙を突いて、モジャさんが壊れかけた女神の膝に飛び付いた!

「この膝はもらった!」

『うああっ!』

さすがの女神も、膝を破壊された痛みに悲鳴をあげる。しかし、驚いた事にそんな激痛の中にありながらも、彼女は即座に反撃に出た!


『この、人間があぁっ!』

レビルーンはモジャさんの顔面を鷲掴みにすると、ダメージ度外視で無理矢理に引き剥がしにかかる!

『あああぁぁっ!』

そうして捕獲したモジャさんを、思いきり地面に叩きつけると、至近距離から閃光魔法を撃ち込む!

爆発が巻き起こり、風圧でモジャさんが宙に舞った。

普通なら、絶対に絶命しているであろう手応えに、それを見たレビルーンの口元に笑みが浮ぶ。


そこへ、間髪入れずにウェネニーヴが女神へと迫った!

しかし、それを読んでいたのか、レビルーンは余裕を持って回避に移る。だけど……。

『ばぶっ!』

奇妙な悲鳴が、レビルーンの口から飛び出した!

まぁ、私の投げた盾が、彼女の顔面にヒットしたためだけど。

いや、たぶんウェネニーヴの攻撃が避けられるんじゃないかなと思って、援護のつもりで投げたんだけど、思った以上にクリーンヒットしてしまったわ。


『ぐっ……』

体勢を建て直そうとした女神に、再びウェネニーヴが膝殺しの蹴りをブチ込む!

う、ううん……こっちが有利と言えないから仕方がないんだけどさ、壊し技ばかりの戦法はエグすぎて、ちょっと心が痛むわ。


『うう……』

「もらったぁ!」

両膝と右腕に甚大なダメージを負った女神へ、コーヘイさんが斬りかかる!

それをレビルーンはギリギリで避けるけれど、剣先が彼女の胸部装甲を破壊し、彼女の豊満な胸元が顕になった。

その瞬間、男達から「むっ!」と感嘆の声があがる!

だけど、コーヘイさんやモジャさんはともかく、瀕死のザラゲール達やギレザビーンまで食い付くのはどういう事よ?そんなに巨乳が好きなの?

まったく、男っていうのは……。


しかし、そんな男達の視線を気にするほどの余裕も無くなったのか、レビルーンは呼吸も荒く地面にへたり込んでしまった。

『まさか……我が人間に……異世界の……こんな事なら……』

もはや顔をあげる事もできずに、項垂れたままレビルーンはブツブツと呟いている。

そんな女神に向けて、コーヘイさんは大上段に構えた。


「あんたらの時代は終わった。これからの世界は、大地に足をつけて生きる者達が決めていく」

それは神々との決別の宣言。

そして、神々に選ばれた私達《神器》使いが出した答えだ。

「あばよ、創造主!」

『そのくらいにしてやってくれ……』

振り下ろされる大剣!

しかし、その切っ先が女神の首に届く前に、間に立ちふさがったのは……レビルーンの大敵である邪神、ギレザビーンその(ひと)だった。

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