317話
数秒間、静まり返る室内。出題した側のアニーは調子に乗る。
「もっとヒント欲しいっスか? 欲しいっスか? 仕方ないっスねぇ、今日は機嫌がいいので特別に——」
「アニエルカのことだから、紅茶に混ぜると美味しいものでももらったのだろう。そしてインドで『幸せ』といえばガンジーの言葉だね。となると、なにか『調和』を表現するものかな。紅茶に合う、といえば花とかかもね。『調和』を意味する花の……ジャム。コスモス、ってところかな」
ただただ。適当にリディアの脳が推理した。当たってるかどうかなんて知らない。遊びなのだから。違ったら違ったで次。
プルプルと小刻みに震えながらアニーは呼吸を止める。全身に力を入れ、やり場のないモヤモヤとしたものを溜め込み、そして一気に吐き出す。
「……当たりっス……」
頬を膨らませ、不満を表示。せっかくチクチクと攻撃したかったのに。きっとユリアーネさんなら、戯れ甲斐もあっただろう。たぶん。
当たるとは思っていなかったリディア。可能性が一番高そうなものを挙げてみただけ。
「そう? よかった。今日は勘が冴えてる」
もうその今日は終わるけど。今更だけど、星占いでも確認しておこうかな。きっと最高のものだったのだろう。
そっぽを向いて、しばらくは機嫌が直らなそうなアニーは、つらつらと愚痴を吐き出す。
「……全然つまんないっス。まるでシシーさんみたいっスね。なんていうかこう、鋭いというか、見透かされているというか」
自身の勘の鋭さとは違う、確信を持った推理。難しいことをやられているようで。置いてけぼりにされている感じで。
しかしリディアからすれば、これくらいではシシーには並べないと悟っている。
「彼女だったら、インドというヒントだけでここまでたどり着くだろうね。あー怖」
いや、確実に導き出すだろう。まるで蝶のような見た目で、蜂の毒針を持つ彼女なら。だって。彼女は——。




