316話
「なにかいいことでもあったのかい、アニエルカ?」
モンフェルナ学園の学生寮。三五平米ほどの空間には二段ベッドと机のみ。その下のベッドで寝転がりながら、リディア・リュディガーは隣のキッチンから聞こえてくる陽気な歌声から、朗らかな予想を立てた。
顔だけひょっこりと出してアニーは肯定する。
「あ、わかるっスか? 今日はっスねぇ、いい出会いがあったんですよ。あと、いいお土産も」
いいこと尽くし。勉強にもなったし。面白い話も聞けた。
場所はリディアとシシーの部屋。現在、シシー・リーフェンシュタールは外出中でいないため、暇を持て余したリディアがアニーを部屋に連れ込んだ。アニーもアニーで紅茶が飲めるならどこでもよし。キッチンを借りて寝る前の一杯。
口ぶりからして、誰かに話したいのだろう。そうリディアは読み、せっかくなので乗ってみる。
「へぇ、当ててみようか。お土産のヒントは?」
流石にそのまま当てるのは無理があるので要求。食べ物か、それともインテリアのようなものなのか。フランスを象徴するもの? それとも全く関係ない? さてさて。
ちょうど今から淹れようとしていたため、茶葉の入った黒い袋をアニーは手に、振ってアピールしてみる。
「ふっふー、こちらインドはシッキムの茶葉。『幸せ』。はい、以上です。ヒント終了っス」
数時間前にも〈クレ・ドゥ・パラディ〉で飲んだが、やはりいい紅茶はどんな時でも、いかなる時でも体が欲する。言葉にしたら、早く飲みたくなってきた。
かたやリディアはパズルを埋めるように、断片的な情報で遊ぶ。
「インド……シッキム……土産……幸せ……ふむ」
ひとつの欠片から答えが枝分かれしていく。その先にある果実。見つけられるか。




