313話
そのことについてはアニーから。全ての仕掛け人ゆえ。
「……『調和』っスね。赤いコスモスは『調和』を意味してるんスよ。いやはや、さすがにフローリストの方にはバレてたっスね」
余すことなく読まれていた。まだ小さな少年だというのに。ゾクゾクっと喜びの緊張感。
当然、それで話の根幹がレティシアに見えてくるはずもなく。
「調和? 待って、余計わかんなくなってきたわ……」
間をとって思考してみるが、やはりなにも繋がらない。調和。平和っぽい感じ。幸せ。そういうこと?
だがそうではなく、シャルルがカップを置いて対話に移る。
「つまりはインドの偉人の名言です。幸せについて、マハトマ・ガンジーは『考えること、言うこと、行うことが調和していること』と言ったそうです。高すぎない、自分に合った目標に向かって行動できている状態、というのが当てはまるかもしれません」
独立運動の父であるマハトマ・ガンジー。『非暴力・非服従』という言葉と共に、世界中に平和主義の影響力を与えた人物。彼の格言のひとつにある、幸せの定義こそが『調和』。
充実感こそが幸せに繋がる、とこの言葉を読み解く研究者もいる。その人にはその人だけの幸福論がある。他人との比較ではなく、自分にとっての幸せを目指すこと。こう、彼は遺した。
とはいえ、ガンジーがなにもかも聖人君子だったか、というとそうでもなく、ヒンドゥー教の戒律を破って肉食をしたり、タバコ代のために窃盗なども行っていたとあるため、解釈は各々に任せられるわけだが。
顎に右手人差し指を当て、アニーは天井を見つめながら自分の幸福論を吐露。
「ボクの場合はそうですねー、ドイツでコーヒーより紅茶が飲まれる時代を作るって目標です!」
世界では一番飲まれていても、自国では圧倒的に負けを認めざるを得ない状況。それをひっくり返す。クーデター。あ、ガンジーっぽい。クーデターをしたのかは知らないけど。




