311話
「それではいただきましょう」
アニーのぶんのイスも用意したシャルルは、やっとひと息ここでつける。なんだかすごい長い時間と体力を消費した気がする。落ち着いて楽しみたい。
三人ほぼ同時に紅茶に口をつける。最初に口を開いたのはレティシア。
「……味も香りも甘さが強調された感じだけれども、ほんの少しだけ、苦味が最後にくる。紅茶だけとはまた違う。美味しいわ」
コスモスの花はその言葉通り、味が最初と最後で変化する。まるで香水みたい。紅茶のみとはまたたしかに違う。
それに同調するアニー。抱いた感想はほぼ同じ。
「っスね。野生味のあるフローラルな感じというか、初めての味です。いやぁ、ボクの知らない世界がまだまだ……」
シッキムという茶葉。たしかにダージリンに近いが、ほんの少しだけ違いがあることを、シャルルも味わった。そして。
「あともうひとつ」
最後の答え合わせ。提示されていた問題の結末。
「まだあるの?」
もうすでに充分に楽しんでいるレティシアからすれば、当惑以外に反応が出てこない。さらにここに追加するのは過剰ではないかとすら。
もちろん、それはシャルルにもわかっている。付け足すもの。それは素材ではなく——。
「インド、という国に引っかかっていました。たしかに紅茶の収穫量でいえば最大の国ですし、シッキムも桃源郷と呼ばれています。幸せ、というテーマに合っているとも。ですが、まだなにかある気がして」
そして向けた視線の先のアニーは、一瞬キョトンとしつつも、本当は全てを察している。満足げに紅茶をひと口。
「さすがっス。だからコスモスを選んだわけですね。気づいてもらえて嬉しいっス」
花と紅茶。お互いに通暁しているからこそのタッグ。互いに支え合うことでより、深い一杯を作り出すことができた。そう捉えると、ますます味わいが増してくる。




