307話
少し力を入れてシャルルは瓶の蓋をまわす。カシュ、という音と共にほのかな甘い香りが乗ってくる。
「はい、コスモスの花を使ったフラワージャムになります。砂糖とレモン果汁を混ぜて煮詰めた手作りです」
〈ソノラ〉にもあったのだが姉が全て食べてしまったので、わざわざこの店へ。姉と鉢合わせることもなくて、今にして思えば一石二鳥だったかもしれない。そんなことを考える。
目を輝かせてアニーは上から覗き込む。目を閉じてこちらの香りも楽しむ。
「なんでもやるっスねぇ。美味しそうです」
バラのジャムなどは試したことがあったが、コスモスは初めて。どんな味になるのか。待ち遠しい。
「色んなものに合いますからぜひ。作り方も簡単です」
材料も少ない。誰にでも作れるほどに。だが食べるくせに作らない姉に対して、この場にいないからこそシャルルは立腹。目の前で言ったら怒られる。
コスモスのジャム。だが、レティシアはシッキムとやらの紅茶も気になってきている。今まで飲んだことがあるものがダージリンなのかアッサムなのか、とかもわからないが。
「それじゃ、まずは紅茶からいただくわ」
なのでまずはストレートに。出されたものを最初から味付けを変える、というのも気が引けること。
当然、抜け目のないアニーは余分に紅茶は淹れてある。
「ボクも。シャルルさんもどうぞ」
「ありがとうございます。シッキムの茶葉、初めてです」
いつも自宅ではウバやキャンディなど、スリランカ系が多いシャルル。生産量世界最大のインド、その中でも〇・〇一パーセントほどの割合というまさに幻の茶葉。当然初めて。自然と姿勢を正す。




