305話
ちょいちょい、っとレティシアには見えないような位置に、アニーはシャルルを誘き寄せ、作戦の最終的な打ち合わせ。ここまできたのなら変えようはないが、ひと足先に確認しておきたい。そして、声もなく笑みを浮かべる。
「やっぱそうっスよねぇ。ボク達、気が合いそうっス」
共通点に歓喜しつつ、背後から少年の小さな体を抱きしめる。他意などない。が。
「……あんまりベタベタと近づかないでくれる? シャルルも嫌がっているでしょう」
レティシアは言の葉と目で射殺す。わなわなと唇を震わせつつ、歯を噛み締めた。その位置は。自分の。
ん? と、首を傾げつつアニーは所懐を伝える。
「そうっスか? あんまり気にしてなさそうっスけど」
それはそれでショックっスねぇ。心に影を落とす。ま、仕方ないみたいっスけど。
「……で、その『インド』『幸せ』ってのはどういうこと?」
全く話の読めないレティシアは先へと話を持っていく。今のところ、この二つは繋がりそうで繋がらない。ガンジス川で沐浴する人々、というのを写真や映像で観たことはあるが、そういうこと? たしかに幸せそうだったし、憧れるわけではないが、その生活もいいものなのかもしれない。
それについてはシャルルから。紅茶に関しては結構調べたりもしている。
「シッキム州なのですが、インドで唯一、政府が管理している茶園なんです。美しい山々の景色から、ついた異名が『インドの桃源郷』」
ほほっ、と聞いていたアニーのテンションも上がる。ドイツでは、まわりにこれだけ詳しい人がいない。さすがフランス。
「よく知ってるっスね。その通りっス。一九七五年にインドに併合されるまでは、ここにシッキム王国という国があったんスよ。名前の由来はそれです」




