300話
「世界で一番飲まれている飲料ってなんだかわかる?」
質問を投げかけたのはリオネル・ブーケ。フランス国家最優秀職人章『M.O.F』を所持するフローリスト。手に取った花の香りを楽しみながら、そんなクイズを出してみる。
パリ十区。主要なターミナル駅であるパリ北駅を有し、ベルギーやオランダ、ドイツへと向かう国際特急『タリス』や、ロンドンへと向かう高速鉄道『ユーロスター』など、欧州各国への国際列車が多く発着する交通の要。
映画『北ホテル』『アメリ』にも登場して有名なサン・マルタン運河など、お洒落な観光地でありながらもゆったりとした時間が流れるのは、この地域に住むボボと呼ばれる、富裕層ではあるが忙しない生き方を拒否した人々の、生き様を反映しているのかも知れない。
その一角にある花屋〈クレ・ドゥ・パラディ〉。アレンジメントなどはなく、水揚げされた生花がそのままバケツなどで配置されている。まるで自宅の庭で自然に成長していく花々を見ているかのような、そんな穏やかな店内。
花の道を突き進んだ店の奥、開けたその場所はアレンジメント教室や撮影に使うテーブルがあり、そこに寄りかかりながらサキナ・ラクラルはボケーっとしながら答えてみる。
「んー、たぶんですけどコーヒーでしょうかねぇ。私も飲んでますし、朝はエスプレッソがないとウチの両親も始まらなさそうですから」
自分はドリップ派。一応家にエスプレッソマシンもある。というか、大体の家に機械はある気がする。〈ソノラ〉にもあった。
個人的には同じようにリオネルは答えたい。が、心を鬼にして否定。
「まぁ、フランスだけ見たらそうかもね。だけど一番は紅茶だ、と言われている。コーヒー、マテ茶を合わせて世界三大飲料とか。水は抜きにして考えて」
人口が多い国でよく飲まれているので、偏りはどうしてもでてくるわけで。ヨーロッパだけならたぶんコーヒーなのだろうが、世界で見ると二番手三番手となる。




