298話
数秒の間を置き、アニーにもその想いが届く。花を利用した紅茶。できなかったことができるかもしれない高揚。
「なるほど。面白そうっスね。どうでしょう、レティシアさんに飲んでいただく一杯、シャルルさんも手伝ってもらっていいっスか? コラボしてみたいっス」
そのためには、普通の花ではダメ。おそらくスーパーなどで手に入るだろうが、フローリストのアドバイスをもらえたら、もっと素敵なことに。そのために。
パンッ、と手を叩き了承するシャルル。あと問題があるとすれば。
「いいですね。レティシアさんがよろしければ——」
「ダメよ」
間髪入れずにレティシアが拒否。ツーンとした凍てつく空気が場を支配し、店内ではここだけ数度温度が下がったかのよう。
その気持ち。アニーにはわかる。彼女がどんな想いを抱いているのか。嗅覚で。わかるから。
「……っスよねぇ」
ガクッと肩を落とした。自身も同じ立場だったら。そう考えたら仕方のないこと。やっぱりお土産だけ見て——。
「——と言っても、シャルルはきっとそのことで頭がいっぱいになるんでしょう」
もう一度、諦めの息を深くレティシアは吐き切る。自分を思ってのこと。なら、それをありがたく頂戴してみるのも一興。
口元がムズムズと落ち着かないシャルル。嬉しい、のか、申し訳ない、のか。どう表現すればいいのか。自分にはまだわからない。
「……そう、かもしれません。正直、気になります。その人物に合った紅茶、というものが」
嘘偽りのない心。知りたい。もしかしたらフローリストとして成長するためのなにか。それに先端だけでも触れることができるかもしれない。ベルリンに行くことは中々難しい。できるならば、もう少し話してみたい。




