297話
物語。紅茶に。さっぱり連想できないレティシア。
「……そんなこと考えたことなかったけど……」
自分が変なの? と疑ってみる。が、目を向けた先のシャルルも似たようなリアクションをしているため、少しだけ救われた。
それが至極真っ当な感想だ、ということをアニーもわかっている。だから自分の考え方を押し付けることはない。
「それでいいんスよ。人には人の楽しみ方があるんですから。大事だって言ったさっきの言葉と反するかもっス。ただ、伝わるかどうかもわからないですけど、ただボクが出せる最高の一杯を提供してるんス」
きっと心に届くと信じて。紅茶にはそれだけの力があると思っている。本場イギリスでは『傭兵はティーカップを持って死ぬ』という笑い話まであるほどなのだから。
「……」
無言でその話をシャルルは噛み締める。わかる、気がする。店内の混み合う音。声。より鮮明に聞こえてきた。
チラッとその少年を見ただけで、諦めにも近いため息をレティシアは吐いた。
「なんだか花と一緒ね。あなたの店と似ているものがある」
こうなってしまうと。たぶんなにを言っても無理なんでしょうね。でも、そこがいいところなのだけれど。貸しイチね。勝手にそんなことを想像。
ポカン、とアニーは口を半開きにする。
「花……っスか? たしかに花と紅茶の組み合わせは最高っスけど」
ボクの紅茶。シャルルさんの花。花屋さん、って欲しい花を買う場所のはず。どういうことっスか? 今度は自身が逆に戸惑う。
今度はお返しにシャルルが〈ソノラ〉について解説。
「僕の店では、アニーさんの考え方に近いのかもしれないのですが、その方に合った花をアレンジメントでお渡しするんです。なので本質的には同じかもしれません」
受け取る側が選ぶのではなく、作り手が直感で作る。そういった意味では理論では重なる。だからこそ、紅茶でそれを行うということに興味があるわけで。




