290話
なんだかんだと理由をつけてレティシアとしては一緒にいたいわけだが、一応シャルルを選ぶにはそれなりの理由はある。それをひとつひとつ。
「ともかく。こういうのはあなたに任せるしかないわけね。ベアトリスさんは絶対に教えてくれないでしょうし、ベルはまだ新人。お父様は忙しい。となると一択」
全くの知らない花屋や人に頼るという方法は、彼女的にはない。選択肢としての最適解が今。この状況。なので、
「僕もまだ半人前です。こういうのは、リオネルさんがそういうことをやってますし、そちらにお願いしたほうが——」
「いやよ」
という後ろに重心を残したシャルルの提案など、やると決めたレティシアにはなにも響かない。むしろ調味料を足したようなもの。より食欲が増してくる。
こうなることはシャルルにも心の底ではわかってはいた。ある意味でサキナよりもどう接するか迷う人物。悪い人ではないのだけれど、まだ彼は振り回されるだけ。
「と、申されましても……」
悩む。どうすれば。いや、花に興味を持ってくれる人が増えるのは嬉しい。板挟みになり、モヤモヤしたものが胸に留まる。
そうこうしているうちに店舗まで到着。店構えこそ歴史のある建築物、という雰囲気を纏っているが、ポップな看板が入り口上部に取り付けられ、温かな灯りがよく磨かれたガラスのドアを通じて外からも覗ける。
一階はこまごまとした小物類、二階はソファーやテーブル、食器などの生活雑貨。所狭しと配置されているが、不思議とゴチャゴチャとした圧迫感を感じないのは、しっかりと動線を意識してあるから。芸術の都らしく、見やすく買いやすいような工夫が散りばめられている。
ほとんどが手の届く範囲にあり、高いところまで商品を置いていないところも広く見せる工夫。ゆったりと余裕を持ってショッピングができること、穏やかなBGMも合わせて、ついつい長居してしまうほどに。
「あ、これ。すごく素敵です」
二階の壁際。木製のラックに何種類も並べられた、とあるブランドのフラワーベース。その横には同じブランドの食器類も。それらを目にしたシャルルは目を輝かせる。




