278話
それに渋々シャルルも応える。
「……まぁ、そうですね……」
蝶と夜の蝶。そして胡蝶蘭の特徴がピッタリと当てはまる。どこまで狙ったのか非常に気にはなる事案。いつ頃決まったのか、とかも。
「形、だけじゃないの?」
またも置いていかれるサミーはすかさず問う。なんだか二人だけ理解しているようで、好奇心がくすぐられる。
そしてサキナはいつもの対応。
「はい、シャルルくん」
「というのも、胡蝶蘭はその見た目からデリケートな花、と思われている方も多いかもしれませんが、水やりはかなり少なくていいんです。一週間から十日に少量程度です」
そうなるだろうなという気はしていたので、もうシャルルはいちいち余計な感情を挟まずに詳細な説明。本当になにをしにきたのだろうこの人。
『幸福が飛んでくる』という花言葉にもあるように、ここぞという時の代表格でもある胡蝶蘭は高級かつ、お祝い用というものが定着している。だがパリではインテリアなどにも重宝される一般的な花ではある。そして育てることが難しいと思われがちだが、実は手のかからない花の代表格でもある。
むしろ水のやりすぎは根腐れの原因にもなるため、風通しの良い場所に置いておくだけでもかなりの期間、元気に育っていく。
今までに数多く贈られたとはいえ、あまり胡蝶蘭について意識したことはなかったサミー。その情報は初耳だった。
「へぇ。それはたしかに意外。でも『上手いこと名付けた』というのは?」
胡蝶蘭を手に取り、シャルルは愛おしむように語りかける。
「この花はいわゆる『CAM型植物』、夜間に二酸化炭素を取り入れ、昼間に光合成を行うんです。砂漠などの水分が少なく、昼夜の温度差が大きい地域特有の適応とも言われています」
通常の植物であれば、昼のうちに気孔を開き、二酸化炭素を取り込む。しかし同時にそれは大量の水分を失ってしまうことにも繋がる。




