277話
とりあえず自分なりにサミーは答えを出してみる。
「なんでだろう、言われてみれば形が似てなくもないかもだけど」
たしかにサキナとしてももっと似ているものはあるんじゃないか、という気もしないでもないが、そうなっちゃったんだから仕方ない。深く考えても無駄。それよりも。
「まぁ、そんなとこですね。で、この花の面白いところは学名が蛾なのに、国によっては『蝶』という名前がついているとこなんです」
オーキッド。別名、胡蝶蘭。それについてはやはり納得がいかないサミー。昔からの捉え方とは違う思考。
「蛾と蝶? ほとんど同じものじゃないの?」
というのも、フランスでは、蛾と蝶はあまり明確に区別されていない。同じ鱗翅目に属しており、蛾はフランス語で『パピヨン・ドゥ・ニュイ』、つまり『夜の蝶』と呼ばれている。
それどころか、その模様と、夜になるとどこからともなく飛んでくる神秘さで蛾のほうが人気がある、という見方さえできるほど。不思議なことに、ドイツとフランスはこのように考える人が割と多い。
またもサキナは一歩後ろへ。
「はい、じゃあシャルルくん。説明のほうを」
それをじっとシャルルは睨みつける。姉よりもタチが悪いかもしれない。
「また僕。諸説ありますが、実は蛾というのは国によってはあまりいいイメージがない、というところからきているそうです。少しかわいそうな気もしますが」
もはやこの説明も花屋としての仕事から外れている気もするが、自身も以前気になって調べたことがあった。当然、フランス生まれフランス育ちの彼にもあまり馴染みのない感覚ではある。なにが違うのかもあまり。
しかし、花を扱う者としてサキナはこの名前は非常によくできている、と感心した。
「だけどこれ、すごく上手いこと名付けたなと思うんだよねぇ。ね?」
ポンポンと弟の両肩を優しく叩き、同意を求める。




