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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
モレンド
264/320

264話

 陽の光を浴びながら、ベルは目だけそちらに向けてみる。


「モンテーニュ通り? 八区の? いや、ないけど、それがなにかあったの?」


 タイトルだけは聞いたことがある、かも。あまりそういうのを観ることもなく、ただただピアノに向き合ってきたから。今は余裕もできてきて、バイトなりなんなりと色々やるようになったけど。


 その中のワンシーン。回想しながらリディアは言葉を並べる。


「それで登場人物のピアニストが記者から『就きたくない職業はなんですか?』って聞かれたわけ。なんて答えたと思う?」


 ピアニスト。役柄であって、本物ではないんだろうけども。ベルは自分に当てはめてみるとどういうだろうか。そう意識して考えてみる。


「うーん……プロ、ってことだよね。なんかもう、そこまでになっちゃったら、あえて『ピアニスト』って答えちゃうんじゃないかな。辛い部分もいっぱい知ったわけだし、二度目は味わいたくない、みたいな」


 転職するなら人前に出るような仕事とは無縁の。もしくはスポーツ選手とか、違う形で目立つ、みたいな。そういうことを考えたことはある。なにせ一度諦めているから。リシッツァですらコンクールのプレッシャーで一度離れたというし。


 生半可で中途半端にはできない、それでいて答えがない、なんてもの。知らないほうがいいというプロのピアニストも実際にいる。子供には目指してほしくない、とも。経験したからこそ言える、親としての願い。


 しかしリディアの提示した答えは。


「惜しい」


「惜しい?」


 どういうこと? 正解か不正解かだと思っていたベルは、少しだけ興味が増す。

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