246話
数日後。
「手伝えること。なんだろう」
制服の上からネイビーのロングコートに身を包み、自信のない足取りでパリ七区を歩くのは、ピアノ専攻のブリジット・オドレイ。喧騒。そういったものは苦手で、あまり都市部を歩くのも億劫なほうではあるが、ベルにしてあげられることはなんだろう? その思いから、街に繰り出してみた。
花……は働いているからいいとして、アクセサリー……は個人の好みがあるし、授業で使うもの……は手伝いになるのかな……? 優柔不断であることは自分でもわかっていた。
クリスマスマーケットの近づいたパリは、外国からの旅行客が激増してくる。あまりこういった、一ヶ月以上前から盛大に盛り上がる文化のない国の人達は、物珍しそうにウインドウショッピングを楽しむ。日は沈み、寒さが身に染みる。小雨の気配。
たくさん荷物を抱えた家族。「どういうものを貰ったら喜びますか?」ブリジットはそう問いかけたくなる。家族などとは違う、友人として。別段困っているわけでもない、そんなベルを助けてあげたいというのは、なんか変なのかも? 迷いながら雑貨やショコラなどを見てまわる。
「やっぱり……消えものとかのほうがいい、かな。ずっと残るものよりも、負担になりにくいし」
考えすぎとわかりつつも、家の中でスペースをとってしまうくらいなら、消耗品として使い切ったら捨てられるもののほうが。負担にならないし。うん、そうしよう。
「でも、だとするとショコラ……かな。ショコラ嫌いな女子、いないし」
ひとりごと。誰かに聞かれたら、少し恥ずかしいけど、みんな仲間内での会話に夢中で気づかないだろう。
「いや、ピュイ・ダムール。フレジエ。定番だけどマカロン。どれにしよう」
ショコラ、と決めたのだが、途中のお店で見かけたスイーツも。いっそ全部……? いやいや、そこまでしちゃうと、ベルが気を使っちゃう、かも。さりげなく。さりげなく。
「あぁ、シュプレーム・フレーズ。私、これ好きだ」
パティスリーのガラス窓から見える。プレゼントの基本てなんだろう。自分が貰って嬉しいもの? 相手の気持ちを考えたもの? 答え、出ない。どうしよう。
考える。
考える。
そうして時が過ぎる。
すると。
「フランボワーズのタルト」
「……?」
ふと、横から声をかけられ、ゆっくりと振り向くブリジット。声、漏れてたのかな、と少しずつ赤面。
そこには、黒い似たようなロングコートを着た少女……少年、かもしれない。少し中性的な。しかし、間違えたら申し訳ない。日の暮れたパリで、太陽のような笑顔の持ち主。店内から漏れる明かりに照らされている。
驚きに目を白黒させながら、ブリジットは声を絞り出して、ぶつ切りで会話。
「あの、なに、か?」
上手く伝わったかな。いや、いきなり声かけられて、なんだろ、同じくらいの年? 白く透き通るような肌。と髪。綺麗、という感想しか出てこない。よく見ると、コートの下はスカートのよう。少女、でいいんだよね?




