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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
ヴォランテ
243/320

243話

 パリの花屋が花を購入する、とするとランジス市場がまず思い浮かぶ。業者専用だけあって種類も豊富、その他花器や雑貨なども同時に購入できるため、基本的にはここ。


 だが、パリにはそれ以外にも、マルシェに小さな花市場が数ヶ所存在する。シテ島やテルヌ広場など、野菜などに混じって販売しており、交渉次第で安く買える。鮮度や種類などではランジスに敵わないが、ちょっと必要な時などに仕入れるのに便利なのだ。


 昼過ぎくらいまでしかマルシェはやっていないところも多いが、場所によっては夜の二〇時過ぎまでというところも存在し、仕事帰りのビジネスマンなどに重宝されている。


 そうしてディズヌフ近くのマルシェから帰宅したベル。ほんの少しの材料と共に。


「ごめん、融通きかせちゃって。でもぜひ試したもの、オードにも見てもらいたくて」


 走ってきたため息が少し上がっている。汗も。紅潮気味の頬。それでもやってみたい。


 言いたいことはいくつかある。だが、口元をムズムズとさせつつも、その鬱憤は全て一回のため息にオードは込めた。


「……ま、言っても聞かなそうだし? 自由にやっていいわ。楽しみにしとく」


 もう無理無茶無謀は慣れている。誰かさんのせいで。


 息を整えつつ、考えもベルはまとめる。お試し、ということも含めて小さなものを。いける? いけない? わからない。が、楽しい。


「……まずは。一八番のワイヤーをフローラルフォームに通して。それと……ラップみたいなものある? 食品用の」


 それも一緒に買ってくればよかった。反省。


「ラップ? あるけど……それを巻くの?」


 まさかの道具に一瞬「ラップってなんだっけ?」とオードは記憶から抜け落ちた。ラップ。二二〇度くらいまで大丈夫なフィルム。他の国だとオーブンでは使わないんだっけ? とりあえず取りに。


 三階の台所から持ってきてもらい、受け取ったベルは、切り取りつつ使い方を一応説明。


「うん。そうしないとたぶん、スギとかに水分持ってかれちゃうから。耐水紙とかだと挿さらないし」


 フローラルフォームに巻きつけ、ずり落ちないよう、個包装のショコラのようにくるくると端をまとめる。これでとりあえずは準備はできた。


「んで、どうやんの?」


 ここからはフローリストとして。晴れの舞台をオードはイスに座り眺めることにした。


 ひとつひとつ丁寧に。購入してきた赤い枝をベルは掴んだ。


「このサンゴミズキをガーランドの前後に適当に配置して、それらをワイヤーでまとめてひとつに」


 珊瑚礁のように見えることから名付けられた落葉低木。その中でもミッドウインターファイアーと呼ばれる品種。根本は黄色味がかっているが、先にいくにつれてコーラルオレンジに美しくグラデーションで染まる。

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