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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
ヴォランテ
234/320

234話

「……花言葉は『偽り』。ムーン・リバーは本当は原作には存在しない歌、だったはず。だからこそ、そう感じたんだと……思う」


 確証はないけど。ベアトリスさんだったらどう、表現していただろうか。


 理解はできる。だが、それよりもジェイドには気になった部分がある。そこを突き詰める。


「……見えた、って言ったね。どういうこと?」


 イスを引く。そして真剣に顔を寄せた。


 だがそれを黙って見過ごせない人もいる。オードだ。


「それよりも。あんた普通に座ってるけど。仕事はどうなってんのよ。どういうこと? はこっちのセリフよ」


 これって時給もらえるの? だとしたらここの店大丈夫? 心配になる。


「まぁまぁ。今はこっちが優先だ。それで、見えるっていうのは?」


 指摘もそこそこに受け流し、ワクワクするほうへ赴くジェイド。なんか言われたらあとで謝ろう。店長は許してくれるはず。


 まだ手に入れて日の浅い感覚であるため、中々カッチリと枠にハマった説明が難しいベル。とりあえず、思ったこと、感じていることをそのまま。


「……たぶん信じられないと思うけど、私は音や曲を『花』に見立てる、っていうのかな、そういう風に捉えるようにしてるの。イメージでしかないから、あんまり口で説明するのも難しいんだけど」


 友人の中には『香り』を音に変化する共感覚の持ち主もいる。それ、に近いのかな? なんだろう、少し嬉しいような、不安なような。その友人、ブランシュもこういう感じなのだろうか。


 嘘をついているようには見えないし、つく必要性もない。適当に花を当てはめておけばいいだけのところを、顔を真っ赤にして伝えてくれている。ならばジェイドのすることは。


「信じるよ。なるほど、それでムーン・リバーを演奏したら、ゼラニウムが見えたってことか」


 簡単にまとめ。いいね。


 だが、それとは逆にオードは懐疑的。それでいて注目。


「オカルトね。でも、興味深いと言えば興味深い。で? あたしにも頼みたいことってなんだったの?」


 その視線のターゲットを変更。隣に勝手に座っているヤツへ。


 そうだそうだ、と半分は忘れていたジェイド。なんてったって面白そうな人間を知ってしまった。


「あぁ、それなんだが、ゼラニウムをカルトナージュで作れる?」


 ベルが想像した花を。今度は相棒の番。そういうこと。


 オードの頬杖をついていた肘が滑る。


「は? あたし? あたしが作るの?」


 そして当然のように反発。こいつはいつも唐突。やる側の状況なんて一切考えない。

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