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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
ヴォランテ
224/320

224話

 モンフェルナ学園の音楽科、レッスン室。着脱可能な吸音板が装備され、残響時間を操作すことができる。床のフローリング、壁は白とライトグリーンを基調とした爽やかな色合い。グランドなら二台は置いても余裕はある程度の部屋の大きさ。


 ヤマハのグランドピアノのイスに座るのは、ピアノ専攻のブリジット・オドレイ。ショパンを愛し、ショパンに愛された、とは自分では言っていない。愛してはいるけど。


「まぁ……リサイタルもあるし、心配してくれてるんだろうから、その……ベアトリスさん? の気持ちも、私はわかる、かな」


 少しオドオドとした印象はあるが、ショパンについてとなると饒舌になる。が、今はそうではないので弱気。


 そして、講師などが座るイスに腰掛けているのはベル。うんうん、と大きく身振りで同調。


「いや、私もわかってはいるの。というよりも、向こうの言っていることのほうが正しいんじゃないか、とすら」


 悔しいけど。百人に聞いてもそうかもしれないけど。


「じゃあ、その通りにやるしか……」


 それ以外に言いようがないので、ブリジットとしても相談に乗ることはできない。自身もそちらのほうがいいと考えているから。本当にリサイタルはどうするつもりなのだろう。


 ガバッと立ち上がったベルは、天井に向かって声を荒げる。


「でもッ! そう思っちゃったんだからしょうがない! 私は欲張りだから。全部やりたい、頑張りたい」


「ベル……」


 いや、やめておいたほうが……と言いたくなるのを我慢し、ブリジットはとりあえず微笑んでみる。というかそれしかできない。たぶん聞かないし。


 立ち上がった勢いそのまま、レッスン室内を歩き回るベル。


「そうなると、ベアトリスさんから習うのは諦めるか……シャルルくん……も同じ家というか店だし。リオネルさん……は〈ソノラ〉とは比べ物にならないくらい忙しいみたいだし」


 しかしどんどんと可能性が狭まっていく。考えれば考えるほどに方法が枯渇。いっそ、知らない花屋に行ってみるか……? いや、そうなると働かせてくれることすら無理だろう。アレンジメント講座に行ってみるのが一番現実的か。


 自分にはない悩みを抱えているベルを見ていると、ブリジットは応援したい気持ちが少しだが湧いてくる。


「なんか……大変だね……私、なにか手伝えること、ある、かな? なんでも、言ってほしい」


 本当はしないほうがいいのだろうけれど。不思議とベルならなんでもできてしまう気がする。

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