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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
マルカート
204/320

204話

 ショパンの『別れのワルツ』、ピカソの『ゲルニカ』、チャップリンの『パントマイム』、その他多くの芸術と呼ばれるもの。そうでないものも。秘められたものがあるから生まれたわけで。受け手が完璧には受け取ることができなくても、表現し続けること。


「なにか難しいことを考えているようだが、フローリストはそんな深く考えない。ま、私の持論だがな」


 心の中を読まれたようでビクッとしました。しかしそうなると、ではフローリストはどんなことを考えているのでしょうか。


「喜んでいる顔。受け取る側も。送り手も。ほんの少しの間でいいから、幸せになってほしい。それだけ考えている。そこのドアをくぐる時、フレデリックが来た時より幸せなら、それでいい。我々にできることはそれくらいだ」


 そう言ってベアトリスさんはイスに座って脱力し始めました。なんというか、少しこの人を誤解していたのかもしれません。なんとなくですが、予約なしに来た客からは、通常料金の三割増しくらいで取るような、そんな守銭奴であると。自分のバカ。


 心の美しさは花に出る、とでもいいましょうか、素人目で見ても小さなバスケットという世界で完結しつつも、無限に想像できるような。そんなアレンジメントなのではないでしょうか。彼女が花に興味を持った理由も、わかる気がします。


「ちなみにな。ヒマワリは本数によって花言葉が変わる。知っていたか?」


 なにかニヤニヤと悪いことを思いついたような笑みをベアトリスさんは浮かべていますが、当然そんなことは知りません。先ほど完成したアレンジメントは四本。どういった意味になるのでしょうか。


「四本の意味は『一生愛し続ける』だ。あまり話したことがない相手ならやめておけ。これは渡すなよ。やめておけ。いいか、絶対だぞ」


 渡せと言っているような気もしますが、さすがにその期待には応えられそうにはありません。挨拶しかしたことない男から、いきなり愛の告白だなんて、流石に自分でもヒキます。危ない危ない。


 ですが、花というものを通して受け取る言葉は、深く沁み渡るというのはわかる気がしました。そうなると、控えめで、それでいてゆっくりとお互いを知っていけるような。そんなアレンジメント。これが希望ですかね。自然と出てきました。


「必要な花が今、ここにはない。明後日にでもまた来てくれ」


 すでにベアトリスさんの脳内では、どんな風になるのか出来上がっているようです。花に疎い自分でも、バラなんかは愛の告白っぽいですから、できればまだ早い、という気がしますね。友達、仲間、そんなところから始まっていくのではないでしょうか。

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