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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
ブリランテ
154/320

154話

 だが、それもベアトリスにとっては柳に風。


「さっきも言ったが一任されている。口を挟むな」


「ピアノの講師とかをやっていたわけではないでしょう」


 まず、レティシアにとってそこが重要だ。実績があるなら、信頼できるだろう。だが、どう考えても同年代の相手。絶対にないこともないだろうが、そこは当然。


「ないな」


 と、さらりとベアトリスは肯定する。


 その無粋な物言いが、さらにレティシアには挑発と捉えられた。


「あの子は大事な友人なの。それは不安にもなるでしょう」


 別にベルから頼まれたわけではないが、個人的にベアトリス本人に言いたいこともあり、今回は来たわけで。溜め込んでいたものを全て、ここで吐き出しかねない勢いだ。


「じゃああいつがコンクールで優勝したら、その不安はなくなるのか?」


 ファンデンションワークはオッケー。続いてアウトライン。一番難しいのはここかもしれない。魅せる葉物というのは、カラフルなメインの花と違い、立体感などで訴える。バランスよく、それでいて大胆に。傍から見たら、ベアトリスは会話を適当にこなしているように見える。


 だが、『優勝』という単語を耳にし、レティシアは本題を見据えた。


「できるの?」


 しかし。


「無理だな。今後あいつがコンクールで優勝することはない」


 躊躇することなく、師であるベアトリスは否定する。慈悲もなく、断言した。


「な……あなた!」


 もちろんその判断を聞いたレティシアは声を荒げた。なら、なぜこんなことをやるのか。時間の無駄、だったらやりたいようにやらせてあげればいいのに。この一連のやり取りの本質が見えない。


 パキン、と鋭くメインとなる黄色い水仙の茎を、ベアトリスは切る。


「事実だ。あいつには無理だ。無理やり勝たせる風に仕上げるつもりはない」


 コンクールは、優勝候補と呼ばれる者であっても、自然に二次、三次審査で落ちていく世界。運も絡んでくる。そこだけに照準を絞るつもりはゼロ。長い目で見る。


 それだとしても、レティシアにとっては合点がいかない。目標を高く保つことは、モチベーションにもなるはずだ。


「だったらなんで教えるなんて真似事を……無理やり」


 このままだとこいつは一生帰ってくれなさそう、という諦めが先行し、ベアトリスはレティシアをひと睨みし、ため息をついた。


「……あいつには言うなよ」


 軽く舌打ち。


「……?」


 雰囲気がかわったことをレティシアは悟った。ベルに秘密にしなければいけないこと?

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