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Sonora 【ソノラ】  作者: じゅん
スピリトーゾ
151/320

151話

 かなりシンプルな構成に、レティシアは疑問の声。まぁ、サイズ的にそうなるのかしら、と同時に納得。


「あっさり決まったわね。しかも三輪だけ?」


 そしてピンクが二輪、ということはおそらく自分とシルヴィ。紫はベルか。なんとなく、贔屓されているような気もする。どういう意味だろう。


 もちろん理由がある。が、シャルルはあえて伝えない。


「この形だと少ない方が電車が映えますから。多く挿せばいいというものでもないんです。すぐに完成ですよ」


 アレンジメントを始める。基本はオアシスを見えないように葉物を展開する。逆に見えるように、というアレンジメントもあるので難しく、面白い。が、今回は一般的なように見えない方向で。窓や上からブルーアイスをできるだけ無造作に挿していく。


「そんなザクザクいっちゃっていいの? バランスとか……」


 あまりにも考えなしな印象を受けたベルは、戸惑いながらも全体を見る。アンバランスのような。だが、これでいいという。


「シクラメンの三輪挿し。可愛いわね。シクラメンといえば鉢植えなんかが多いけど、こういうのもいいわ。どういう花言葉なの?」


 そしてピンクと紫で分けた理由。場合によっては、レティシアはシャルルにイタズラを画策する。


 そんな都合を知ってか知らずか、作り手のシャルルは断りを入れる。


「それは秘密です。喜んでいただけたなら、それだけでいいんです」


 あっという間に完成。様々な箇所からブルーアイスが差し込み、まるで電車から生えてきたかのような初見。その他、シクラメンが彩りを担当し、ユーカリがそれをサポートする。


 手に取って、最初に所感を持ったのはシルヴィ。上から下から覗き込み、「ほー」と言葉をこぼしながら一度テーブルに置く。


「……なんか、最初は『あれ?』って思ったけど、完成すると案外いいな」


 わりかし、いや、かなり気に入った。サイズ感もいいのかもしれない。小さなアレンジメント。これもまた、面白い。


 続いてレティシア。花に触れつつ、自分なりの受け捉え方をする。


「たしかに。でもなんか裏がありそうね」


 ところで、これは誰がもらっていいんだろう。そっちに関心がいった。


 なにやら疑われていることを察したシャルルは、わざとらしくかぶりを振る。


「ないですないです。ただ、自由に作っていいって言われたので、趣味全開で。ベル先輩もどうぞ」


 と、手渡そうとするが、ベルは俯いたままで受け取らない。シャルルも「?」と首を傾げた。


 その様子をシルヴィがいち早く察知し、中継に入る。


「? なんかあったのか?」


 コーヒーはすっかり冷めている。まるで自身の心のように。二人、いやシャルルも含めて三人が支えてくれているというのに、ダメダメだな自分は、とベルは嫌気がさした。


「……いや、すごいなって思って」


 こんな小さな子までも自身の道に迷わず進んでいるのに。シャルルの髪をくしゃっと撫でた。


「うん、頑張る! 頑張るしか言えないけど、頑張るしかない」


 つまりは頑張るということ。よくわからない構文になってしまったが、ただ電車のように突き進むのみ。考えてもしょうがない。自分のことは信じられないけど、ベアトリスの言うことは信じる。


 はぁ、と名残惜しそうにレティシアはため息をついた。

 

「……そのアレンジメントはベルのものね。持っていきなさい。いいわね、シルヴィ?」


「え、あたし? うーん、まぁ、いいんじゃない? レティシアがそう言うなら」


 シルヴィも意見が一致し、アレンジメントはベルへ。いつかまた、弱気が芽生えたら、これを見て思い出そう。今日という日を。

 

「……ありがとう」


 空が少しずつ明るくなる。まるでベルの心を表すように。

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